山猫団、ジュンマキ堂 と一緒に 岡上のあぜ道をパレード&サーカス!『山猫団とつくる 岡の上のサーカス』

(2015.08.10)
山猫団 © Tomoyuki Kobayashi
山猫団 © Tomoyuki Kobayashi

この秋、川崎市麻生区岡上(おかがみ)で『山猫団とつくる 岡の上のサーカス』を上演します。このサーカスは、普通のサーカスとはひと味違います。私、ダンサー 長井江里奈が主宰する舞台芸術集団『山猫団』と、ネオ・チンドンの『ジュンマキ堂」のほか、出演者は公募で集まった皆さんです。ともに、岡上の田んぼのあぜ道をチンドンパレードした後、岡上小学校の体育館で約1時間の公演を行います。ダンス・音楽・美術などそれぞれが得意とする分野でエントリー、11回のワークショップを経て公演に望みます。

 
川崎市麻生区岡上あたり
あぜ道をパレード&サーカス、しよう!

岡上は町田市と横浜市に囲まれた、川崎市麻生区の「飛び地」です。小田急線鶴川駅から歩くこと数分で、岡というより山と呼んだ方がいいような起伏の激しい道となり、広々とした農地や野性的な自然が現れます。住民同士の結びつきが強く、町内会が活発に機能していますが決して排他的ではなく、よそ者の私たちを歓迎して面白がってくれています。そんなところも、都会育ちで公演ごとに各地を飛び回り、近所付き合いや地元意識とはほぼ無縁なところで生きてきた私にはとても新鮮に感じます。

『岡の上のサーカス』のアイディアは、色んな偶然が重なってスタートしました。まず、この3月に私が麻生区に引っ越してきたことで、山猫団のパフォーマー3人と、以前からお互いの活動に注目し合っていた『ジュンマキ堂』のゴロス(大太鼓)奏者 マキちゃん(黒田牧子)の4人が麻生区に集まりました。これはもう一緒にここで何かをやるしかない! と思っていたところにマキちゃんが「麻生区地域コミュニティ活動支援事業」という助成金システムを見つけて来たのです。「岡上の田んぼの中をチンドンしながらパレードしたら最高だと思う!」と目を輝かせるマキちゃんにつられて、私も「やろう!」と即答しました。以前に『山猫団』が小学生と一緒に学芸会を作ったことがあり、それがいかに楽しかったかを熱く語った後だったので、今回も一般市民から参加者を募って公演をするという事もすぐに決まりました。

 
ジュンまき堂 © Yusuke Komiyama (mobille,inc.)
ジュンマキ堂 © Yusuke Komiyama (mobille,inc.)

果たして私たちのアイディアは、麻生区が求める「地域コミュニティ活動」というものに当てはまるのか? よくわからないまま申請をし、公開プレゼンテーションに臨みました。与えらたのは10分間。言葉では伝わらないであろうと衣装をつけて登場、クレズマーの名曲『ハバナギラ』を踊り歌い演奏し、残った時間でありったけの思いを伝えました。このプレゼンテーションから私たちに賛同したり協力してくれる人が次々と現れ、引っ越してきてたったの数ヶ月で、気がついたら私たちは「麻生の人」になっていたのでした。

*麻生区・新百合ヶ丘エリアの地域情報紙『マイタウン 8月号』のコーナー「麻生の人」でフィーチャーされたのです。http://e-mytown.com/series/17912.html

 
 
そもそも『山猫団』って何? と
問われれば。

『山猫団』には、パフォーマー、クリエイター、技術者などの多彩なメンバーが揃っており、公演ごとに集まってクリエーションをします。その中身は演出家の私が全て決めるわけではなく、それぞれのメンバー間でアイデアが交わされて、最終的には誰がどこを作ったとはっきり線引きができないものになります。

同じように公演の中身もサーカス、見世物小屋、ダンス公演、演劇、ライブ、パフォーマンス、インスタレーション等の要素が入り混じった先でそのどれでもないものになります。普段の持ち場を超えて働く団員達の肩書きは境界線を失って溶けていき、単にその人の専門分野を表すものになります。

「山猫団」とは、思い切って言ってしまえば「人を見せる場」です。人間の想像力、技術、アイデア、そして何よりも、その人そのものの魅力。

私も団員たちも皆それぞれの道のプロフェッショナルですが、芸事に限らず、どんな事でも突き詰めていけば結局それはその人の生き方とイコールになって行き、起きてから寝るまでの生活の全てがその人のあり方を支えるのだと、憧れを込めて思います。そう考えてみたら、周りには色んなプロ、専門家がいます。子供のプロ、おじさんのプロ、偏屈のプロ、怠惰のプロ、潔癖のプロ、ダジャレのプロ、酒飲みのプロ、空気読みのプロ、あるいは空気を読まないプロ、などなど…。

「岡の上のサーカス」では、一般参加の皆さんに芸事のアマチュアとしてではなく、「自分のプロ」としてステージに立って頂きたいと思っています。

山猫団って「宮沢賢治のお話を専門に上演する人形劇団?」と聞いてきた人もいます。違います。© lille
山猫団って「宮沢賢治のお話を専門に上演する人形劇団?」と聞いてきた人もいます。違います。© Tomoyuki Kobayashi
 

私はかれこれ20年以上踊って来たダンスのプロですが、いまだになぜダンスを自分の中心に据えたのか? 音楽や美術などではなく? がわかりません。そのような、人の中にあるどうにも動かしがたいもの、その人をその人たらしめているものに興味があり、またそこに表れる人間の可笑しさ、愛おしさ、不可解さをお客さんに味わって頂きたいのです。

ですから、ワークショップもこちらから与えるものをこなしてもらうようなものにはならないはずです。音楽やダンスや美術を通して、いかに一人一人の味わいを引き出すか。これは私にとって大きなチャレンジですが、どう転がるかは参加者の方々に出会ってみないとわかりません。現在、『山猫団』と『ジュンマキ堂』を軸に想像している公演の形も丸っきり変わってしまう可能性もありますし、そういう出会いに期待もしています。(今現在、最年少の参加希望者は3歳です)

パフォーマー、クリエイター、技術者など多彩なメンバーが揃ってつくり上げる公演の模様。『岡の上のサーカス』参加のみなさんも芸事のアマチュアとしてではなく、「自分のプロ」としてステージに立ってほしい!© lille
パフォーマー、クリエイター、技術者など多彩なメンバーが揃ってつくり上げる公演の模様。『岡の上のサーカス』参加のみなさんも芸事のアマチュアとしてではなく、「自分のプロ」としてステージに立ってほしい! © Tomoyuki Kobayashie
 
 
本気で、全力で。だからこそ行けるところ
行ってみませんか。

そして、もう一つのチャレンジが、地元で公演をするということです。

わかってくれる人のいるところに赴くのではなく、周りにいる人たちに働きかけ、巻き込むのは手間のかかる事ではありますが、舞台芸術の価値を伝え、自らの立場を社会の中で確立するために必要な事であると感じています。

舞台というものは儚いもので、どんなに時間をかけてリハーサルをしたものも、舞台や客席に漂う熱も、終演後2時間もすれば跡形もなく消え去ります。その儚さが舞台の良さでもあり、寂しさでもありますが、今ここで起こっている事は、むしろ舞台が終わった後のそれぞれの生活に続いていくものなのだと思います。

幸いな事にこれまで出会った麻生区の方々は、口を揃えて「これは成功させるべきだ」「この町に必要だ」と言います。立場や年齢を超えて皆さんそれぞれすぐに何かをキャッチしているのだと感じます。この動きは、単に一つの公演を打つ事にとどまらないだろうと思っています。

説明会は2015年8月23日(日)14:00〜、24日(月)18:30〜です。© lille
説明会は2015年8月23日(日)14:00〜、24日(月)18:30〜です。© Tomoyuki Kobayashi
 

地元の皆さんが大きな期待を寄せてくれている『岡の上のサーカス』ですが、「一般向け」にわかりやすくするつもりはありません。最大公約数的なものが見たいならテレビをつければいいのです。皆さんの期待が大きいからこそ、これまでやってきた事を信じてより強く打ち出していきたいと思います。

参加者の皆さんには技術も経験も求めません。求めるのは、ただひたすらに本気で全力である事だけです。そうでなければ見えないもの、届かない場所があると思うのです。『岡の上のサーカス』を通じて、そこに、一人でも多くの人を、連れていきたいと思っています。


山猫団 
ジュンマキ堂 

 
『岡の上のサーカス』

公演日:2015年11月3日(火祝)
主催:山猫団
助成:麻生区地域コミュニティ活動支援事業

参加条件
・ダンス・音楽・演劇・美術に興味のある 老若男女
・年齢・経験不問(未就学児は保護者の付き添い要)
・定員20名
・11/1, 2のリハーサルに参加可能なことと11/3の本番に参加可能なこと
・参加費 1,500円(ワークショップ費用含む)

無料説明会
1. 2015年8月23日(日)14:00~
2. 2015年8月24日(月)18:30~
*両日とも内容は同じです

説明会&ワークショップ会場
岡上分館 学習室
川崎市麻生区岡上286-1
小田急線鶴川駅より徒歩7分

全10回 ワークショップ日程
1 / 2015年9月13日(日)
2 / 2015年9月23日(水祝)
3 / 2015年 9月27日(日)
4 / 2015年10月3日(土)
5 / 2015年10月17日(土)
6 / 2015年10月18日(日)
7 / 2015年10月24日(土)
8 / 2015年10月25日(日)
9 / 2015年10月31日(土)
10 / 2015年11月1日(日)☆通しリハーサル
11 / 2015年11月2日(月)☆通しリハーサル