『Age(アージュ)』漫画「セクシースパイMINAKO」スペシャル作者が語るMINAKO誕生秘話! セクシーなスパイのOLって……?

(2009.06.29)

その日は法事で田舎に帰省する前の晩だった。久しぶりの編集長からの電話。いきなり「こんなのどう?」と切り出してきた。軽く「面白そうじゃない」と答えたら、「来週中に下描き入れて」と来た。

「え、ボクが描くの?」「アタリ前でしょ!」電話の向こうで、その後担当をやって貰うことになるブラックバニー嬢の笑い声が聞こえた。

編集長とは同郷で長い付き合いだったけれど、それまで漫画の依頼なんて滅多になかったし、ましてやマガジンハウスの雑誌で漫画なんて、それもセクシーでスパイをやってるキャリアOL?……一瞬、マガジンハウスの本でよく見たしりあがり寿氏の漫画を連想し、「4コマであんな感じ?」と尋ねると、強気の編集長は「漫画ですよ。漫画誌でよく見かけるストーリー漫画です」ってご説明。

一体どんな雑誌が始まろうとしているのか、コンセプトを聞いてはみたが全然想像もつかない。しかしこの訳のわからなさは久々のドキドキ感だし、面白そうなので引き受けてしまった。

帰省当日、担当のブラックバニー嬢から大まかなキャラとあらすじのメールを貰い、ノートPCにダウンロードして羽田へ。帰省中、実家でネームを作って準備した。いつも、この手の新しいキャラは、自分の中でまだ馴染めていないせいで、なかなかエンジンがかからないものだが、書き始めるとイッキに書けた。音楽だったら無駄の無い名曲がスラリと誕生ってとこだ。

だが、漫画の場合、そういう風にイッキに書けるものは要注意で、一旦思い込んで進めてしまって判り辛くなってるような箇所も発生しやすい。自分なりのチェックを入れた。強引過ぎるコマはないか? 意味が判り辛いコマはないか? 左右ページのバランス、フキダシの位置関係。台詞の間違いや誤字脱字は担当嬢に任せて、漫画家は常に絵と効果に集中する。

本当に珍しい仕事だった。東京に帰って細かいチェックを受けたが、最初のネームとさほど大きな訂正もない。これはやはり、すんなり出て来た作品の持つパワーだ。MINAKOは生まれたがってる!

次に下描き。まだラフタッチのMINAKOはその構図の中から運慶快慶のごとく「ココを彫れ」と言わんばかりドンドン浮き出て来た。出来るキャリアな女性上司が、部下や社内のトラブルを解決する…女セクシースパイ…。トラブル解決がスパイなのか、それがセクシーなのか全然判らないが、下描きはドンドンMINAKOに命を吹き込み、ペン入れはMINAKOを紙の上から抜け出させようとしていた。

 いつの間にやらMINAKOは誰がなんと言おうとセクシーでスパイでトラブル解決の出来る女としてそこに誕生した。そうそう、漫画ってこういう強引さが魅力なんだ! 理屈なんて関係ない。キャラが全てだ。漫画家のくせにそういう事すら忘れていた。

進行が進むにつれデザイナーさんのタイトルも出来上がり、俄然テンションも上がる。いつの間にやら、既に入稿済みなのに、その完成ぶりが気になる仕事となっていた。漫画家は一旦入稿が終わると、即次の作品に思考をシフトし、終わった仕事の事はあまり考えない。少なくとも僕はそんな風な時間を何年も続けていた。反省したり悔やむことは作品に失礼だと思っているからだ。

そんな僕が、完成してゆく作品が気になる。これはこの仕事が楽しかったからに他ならない。こんな仕事は実に久しぶりだった。こんな楽しい作品を多くの人に見て欲しい。

セクシースパイMINAKO。何がセクシーで何がスパイなのか…僕も知りたい。

そんな夜、また編集長様より電話。
「次はもっとセクシーにお願い」

次があるのか? セクシーにって?MINOKOは何処まで進化する?