女性のための、元気になれる俳句48 選・如月美樹 百合剪つてくれし少年尼僧めく 中村苑子

(2009.05.11)
 

 暦の上ではもう夏。百合は夏の季語だ。
 萩尾望都や竹宮恵子の漫画に出てくる少年たちに胸をときめかせた少女時代。あの頃、私にとって、少年はいつも聖なる存在だった。
 掲句、百合を切ってくれた少年が、まるで尼僧のようだという。確かに、その清らかさで彼らは似ているかもしれない。淡く聖なるものだけを描きながら、なんとエロティックな光景なのだろう。
 薔薇でもなくアマリリスでもなく、百合という花でしか起こり得なかった出合い。その偶然に、私達は胸をときめかせる。掲句初出『吟遊』(1993年)。