リブロ・トリニティ – 1 - 『作ること暮らすこと』井山三希子 著
(2008.07.15)〜著者、編集者、書店スタッフ 三位一体 書籍紹介〜井山三希子 著 『作ること暮らすこと』『作ること暮らすこと』 井山三希子 著(産業編集センター) 協力/藤栩典子、写真/根岸佐千子、 ■著者よりやきものやとなってまだ16年目……ついぞ。
最後のあとがきにも書いていますが、数年前に家の取材で知り合った、フリーの編集者の藤羽典子さんから「一冊、本を作りませんか」とお話を頂いたとき、「私の本なんてありえない……」とすぐにお断りをしました。 カメラマンは藤羽さんと一緒に取材をしていただいた、根岸佐千子さんと迷わずに決まり、デザインは古くからの友人の沼澤順子さんに、出版社はやはり数年前に取材を受けた、産業編集センターの福永恵子さんをたずねる事に、産業編集センターは友人でもあるRARI YOSHIOさんの本などライフスタイル本を数年前から出版していましたが皆さんメジャーリーガー、ただのやきものやの私にはきっと厳しい返事だろうと期待せずに待っていた返事は「やりましょう」と、いざスタートです。 でも何より苦労したのが初めての原稿書き、器の制作に、展示会をし、仕事場と家の引っ越しも、新しい家に移った頃には頭も身体もクタクタでしたが、残りの原稿や写真のキャプション入れを残し、自分へのご褒美にと楽しみにしていたデンマーク旅行へ行くときは、皆さんの視線が怖かった気がします(気のせいでしょうか……)。 ■編集者より
原稿の持つ、しなやかで力強い迫力『作ること暮らすこと』は、白と黒の器の作り手、井山三希子さんの初めての書籍です。ここでは、本を作ることになった経緯を振り返りながら、個人的とも言える感想を書かせていただきたいと思います。 井山さんとの出会いは4年ほど前に遡ります。その当時の井山さんからは、本を執筆される可能性はゼロに等しいだろうな、という印象を受けました。ご自分の名前が前に出ることに大きな抵抗を持っていらっしゃる方(井山さんはご自身の器にもお名前を入れません)が、本を執筆されることは、よほどのことがない限りないだろう、と残念に思ったことを覚えています。 単行本として一冊をまとめあげるには、著者としての腹のすわりと熱意が何と言っても必要になります。最初に井山さんから提示された本の構成は、井山さんの器を紹介するに留まったものでしたが、私は一つの器がカタチになるまでを知りたいと思いました。どんなきっかけで、どんな経緯があって、どんな試行錯誤がなされて、あの器が出来上がっているのか、それこそを見てみたいと。そのためには、どうしても「井山三希子」という一人の人物に正面から向き合った構成が必要になります。何度か再検討のお願いをし、最終的に今の目次立てとなりました。井山さんの暮らしを限界まで著したものになっていると思います。ただ、いくら「本を作りたい」という気持ちがあったとしても、井山さんの中でご自分のプライベートを見せることへの抵抗は、計り知れないものがあったはずです。そして、そのような思いをしながらも一冊作りあげることが、長い目で見て果たして井山さんにとってどんな意味を持つことになるのか、本を出したことを後悔されてしまうのではないか、というためらいが私の中にはありました。「覚悟が必要になりますが大丈夫ですか?」などと偉そうに言っておきながら、私自身が迷っていたのです。 こちらの希望にどのぐらいまで応えてもらえるのか、予想がつかないままに切ってしまったスタートでしたが、届いた原稿には、藤野での暮らし、日々のこと、これまでの交友関係、仕事のこと、制作のことが、真摯に誠実に丁寧に綴られていました。原稿を読み、井山さんの作り手としての器への思い、「暮らし」の愉しみ方、「もの」への眼差しを知り、私は我が身と自分の生活を振り返ることしばしばでした。それまで食器棚の奥に大事にしまい込んでいた井山さんの器を手前に出した時には、私の迷いも消えていました。この原稿の持つ、しなやかで力強い迫力を一人でも多くの人に知ってもらいたい、と心から思ったのです。 ライフスタイル系の書籍が山と出版される中、本書の個性がどこまで読者に受け入れられるのか、未知数の中での制作でしたが、発売一ヵ月で増刷がかかったことは、一先ずの結果と言って良いと思います。この本に表れている井山さんの生活者としての潔さ強さの気配が、読者に伝わったのであろうことを願ってやみません。 最後に。初めての書籍刊行という出来事を、井山さんはご自分の中でまだ消化できずにいらっしゃるようです。でも、何年後であっても、この本の執筆が何かの契機、何かのきっかけにつながったと井山さんに思っていただけたなら、本作りに携わった者の一人としてこんなに嬉しいことはありません。 ■書店員より
一大決心して買ったのに使わずに眠っているもの、間に合わせに買って結局捨てられる運命にあるもの。もの選びの失敗は数えきれません。 下記は終了しております。 ■■■井山さん出展のイベント「ガスリーズ・マーケット」開催■■■ 作者の井山三希子に会ってみたい人はぜひ! 井山さんはじめやきものの上泉秀人さん、中心に金工の坂野友紀さんなど、物作りを生業とする人たちの顔を見ながらの、作品販売展です。会場のガスリーズ・ハウスは、築80年になる織物工場だった木造の建物で、懐かしの佇まいがそのまま。
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