女性のための、元気になれる俳句15 選・如月美樹 〜秋の夜の触れねば音を持たぬ鈴 野見山ひふみ〜

(2008.09.01)
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 秋の夜は、にぎやかな夏の夜と比べて、静けさと長さが際立つ。ゆえに、それまで目にもとまらなかったことがふと気になったりするものだ。
 掲句に登場する鈴もそうなのだろう。ひっそりと置かれている鈴は、いつからここにあったのか。ちょっと振ってみると、澄んだ音がした。音を聞きながら、その鈴にまつわる、これまで忘れていた物語を思い出したりもしただろうか。
 音がなければわからぬほどの小さなもの。秋の夜は、そんな存在に気がつく季節だ。掲句初出『花文鏡』(1976)。