土屋孝元のお洒落奇譚。ミュージアムショップにて。
オススメおみやげとカフェ。

(2012.04.27)

ミュージアムショップのお目当て。

桜も咲き、やっと春らしくなりました。この雨で花も終わりでしょうか。

大きなランドセルを背負った新一年生や大学入学デビューの学生さん達、新社会人と街は色々な人達でいっぱいです。

今年の春は東京で様々な展覧会が開催されています。ほんとうに素晴らしいものばかりなので、時間をつくりぜひとも見に行くべきだと思います。実際に行ってみて、「ホンモノ」を見て自分の感性、感覚で自分が好きかどうかを決めれば良いのでは、私は誰々は好きではないからとか、難しそうだからとか、暗そうだからとか、混んでいそうだとか、「ホンモノ」にはそれしか持たない力があります、混んでいそうなら、朝一番で出かければ良いのではないですか。午前中の美術館や博物館は人の少なさと凛とした空気感で気持ちの良いものです。

美術館や博物館へ出かける楽しみのひとつにミュージアムショップがありますが、ミュージアムショップには普通に街で買うより安いというか、価格設定が違うのではと思う商品がいくつかあります。時々、面白いモノがあり、それを目当てに出かけるのも また良いものかと。

東京国立博物館のミュージアムショップに和綴じ本を数冊まとめて保存するための箱(帙・ちつ)がありますが、布張りの外観といい爪のある仕上げでしっかりした作りといい、価格以上の商品で僕はポストカードや紙焼きした写真を保存するために使っています。その箱に入る和綴じ本にも綴じの違いが様々あり、四つ目綴じ、康熙綴じ、亀甲綴じ、麻の葉綴じ、三つ目綴じ、と綴じの模様違いでデザインされて仕上げの良さにも感心させられます。その本を極細の筆ペン(顔料インク 乾いてから防水になります)でのスケッチ用にも使っています。他にも正倉院御物の写しの袱紗(ふくさ)などは濃茶席での茶碗に添える古袱紗としても使えそうですね、美術の教科書で見たことのある正倉院のガラス器写しは夏には冷水仕立ての薄茶を入れて飲んでも美味しいことでしょう。

ご興味のない方には関係ないかも知れませんが、端渓硯(たんけいすずり)と呼ばれる硯も破格の価格です、銀座の鳩居堂で見ると硯にこの値段と思う金額がついていてとても手が出ませんが、こちらのミュージアムショップでは比較的良心的だったりします。

美術館や博物館へ行ったときにミュージアムショップは見ておくべき場所だと思いますがいかがでしょうか。

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山種美術館のミュージアムショップには速水御舟の絵を使った和の小物類や足袋袋などが多くあります。三井記念美術館にはお茶のお道具や特にオススメのオリジナル茶箱セットなどがあります。そのほか印刷美術館の製本の見本や装丁展のカタログ、活字文字の判子セット、サントリー美術館の展示品のレプリカ商品、(これはかなり値段も高いのですが、)薩摩切子、鍋島皿、鍋島唐人燭台、漆製干支の香合、ぽち袋、数奇屋袋。日本民藝館のガラス製品、大判風呂敷。千葉県立美術館の展覧会図録、李朝陶器の資料……。

そのほか、出光美術館、大倉集古館、国立近代美術館、国立西洋美術館、三菱美術館、世田谷区立美術館、目黒区立美術館、ブリジストン美術館、Bunkamura ザ・ミュージアム、東京藝術大学大学美術館、改装が終わった東京都美術館、(まだ出かけていないので内容はわかりませんが だいぶ良くなったようです。)などなどが僕が出かけて行く面白いミュージアムショップのある美術館です。

最近では美術館や博物館にカフェやレストランも併設されていて、オススメするのはツツジが咲く頃の根津美術館の和風庭園を散策してから池を巡り 石段を上って入る『ネヅカフェ(NEZUCAFE)』にてホットアップルパイをいただく、コーヒーか紅茶はお好みで。雨の日の国立新美術館の『ブラッスリー ポール・ボキューズ ミュゼ』のランチ、ここはガラス張りのため晴れている日は少し眩しいので雨の日が狙い目です、席を取るためにはランチタイムより少し早めが良いでしょう。

東京国立博物館ミュージアムショップで一押しの和綴じ本を保存するための箱(帙ちつ)です、このイメージは一番厚みのあるタイプです。
上野、アート巡りコース。

桜も終わり静かになった上野公園を抜け 栗の花が咲く前に芸大美術館へ出かけて上野桜木にある『桃林堂』にて生菓子、お抹茶を一服。栗の花の香りが嫌いではないのですが梅雨時には濃密な香りが充満し過ぎていて 僕は上野は避けることにしています。

Bunkamuraでの展覧会を見てからのカフェ 『ドゥマーゴ パリ 』テラス席にてタルトタタンとカフェオレのセット、ここではやはりカフェオレが似合います。連休明けぐらいの季節 晴れた天気の良い時期、サントリー美術館を見る前にミッドタウンのピザ屋さん『ナプレ』のオープンテラス席にての緑を見ながらのランチタイムなどなど、美術館や博物館の愉しみとカフェやレストランは連動していてここでは何々を食べようとか、あそこにはあれがあるとか、そういう楽しみ方もありですね。

終わりに 先日の稽古風景より、薄茶の平点前。茶碗は唐津。西岡良弘さんの唐津焼、枇杷色とも言うのでしょうか釉薬の色が綺麗です、お茶の緑が映え茶碗との対比がなんとも言えず 、水差しは明朝景徳鎮窯の染付本歌取り、薄茶器は「甲赤(こうあか)」と呼ばれる蓋部分が大きくモダンな形をしたものでした。軸は田能村竹田作、西行法師を描き、自ら歌を詠んだもの、この軸には竹屋町刺繍の金糸で桜咲く吉野の山々の一文字が付き、紙表装も薄桃色の地紋のあるお洒落なものでした。

師匠曰く 江戸末期よりの表装だとか、洒落のわかる持主だったのでしょうか。

お道具から持主を想像して妄想をふくらませるのも、また、一興かと。

薄茶手前図。唐津井戸茶碗、景徳鎮窯本歌取り染付水差、甲赤薄茶器。

東京国立博物館