女性のための、元気になれる俳句84 選・如月美樹 水中花にも花了りたきこころ 後藤比奈夫

(2010.05.18)
 

季語は「水中花」。今では見たことがある人も少ないだろうか。色とりどりの紙の花が、水中でゆっくりと開いていく様は美しく、いかにも涼しげだ。しかし、一度開いてしまえばいつまでたっても変わらないその姿は、やがてそこにあることすら飽きられ、忘れられていく運命にある。
言い古された言葉だが、終わりがあるからこそ美しい。散るときが来るから花は美しく咲きついで、次の世代への種をはぐくむのだ。水の中という限られた場所にしか存在できない水中花が「終わり」、つまり「死」への憧れを持っているのだという。それは終わりがあればこそ生命が輝くからだ。掲句初出『金泥』(1973年)。