デザイン・トランスヨーロッパ – 2 - 再利用デザインの申し子、ジュリア・ローマン。

(2008.11.14)

ロイヤル・カレッジでデザインを専攻し、卒業後もロンドンを拠点として活躍するドイツ人デザイナー、ジュリア・ローマン。羊の胃袋を使ったランプや牛そのままの形をしたレザーソファーなど動物の廃棄物を作品の主な材料とし、人間の生活がいかに他の動物の犠牲によって成り立っているかということを彼女はデザインを通してアピールする。現在、ベルリンの「モノのミュージアム(Museum der Dinge)」でのグループ展開催やリサーチなどのため、ドイツに里帰り中、話を聞いた。

『Flock』 ©Julia Lohmann 2008

Yumiko Urae(以下、Y) あなたの作品はデザインというより、アートの域にあるのではないですか?

Julia Lohmann(以下、J) アートというのは特別な場所で限られた人のため、そして何よりも日常生活から離れすぎていると思うのです。『Cowbench(カウ・ベンチ)』のようにソファーであれば、それはあらゆる人の理解に近いものとなります。

Y ユニークな作品が多いですが、例えば胃袋を使ったランプはグロテスクとのギリギリの境界線にあるように思うのですが。

J プロダクト・デザイン全般は今、見た目にとらわれすぎて、コンセプトが弱い気がします。私は、自分は研究者のように思うのです。興味のある文献を読んだり、素材を研究すること。それを日常と融合させるということがデザインの課題になっています。過小評価されているもの、自然そのものの美しさと実用性ですね。

Y ドイツ人ジャーナリストからあなたが日本に滞在して、海藻を使ったランプを製作したということを伺いました。その後『The Catch(キャッチ)』という魚用の木箱で作られた波のインスタレーションを知りました。海をテーマにすることは事前に決めていたのでしょうか?

J 2005年にデザインウィークで初めて日本に行って、築地の魚市場に行きまして、魚や海と人というテーマに興味を持って色々と調べたのです。イギリスでは昔、タラが少なくなり、タラ戦争というがありましたが、今、その数が減っている世界中のまぐろが築地に集められているという事実も知りました。それから昨年、S-Airというレジデンスで北海道に3ヶ月滞在して、キャッチと海藻のランプを製作したのです。ただ、こうしたテーマ選びは自分の環境、自分の行動範囲での責任があることに、限定しています。特定の文化背景から発生する問題を掘り出したりはしません。

Y 1977年に環境先進国であるドイツで生まれたということで、すでにかなりご自身、リサイクリングや環境問題にも感心がありましたか?

J 自然とは常に近い距離にいたと思います。7歳のときには自然保護のため、毎週、ゴミ拾いのボランティアもしていました。父は今年、80歳ですが、まだ自転車に乗っていますし、家族の影響もあったかと思いますね。

Y デザインでの機能性についてはどう思われますか?

J バウハウスの「フォーム・フォロー・ザ・ファンクション(形態は機能に従う)」という考え方は生きているとは思いますが、ここ20年の間でデザインはより感情的にオブジェクト的な要因が増し、そのものも1つの機能では無くなってきています。特にものが多くなりすぎたこの世の中で、例えば海藻をどうやったら上手く使えるかと考えることもひとつの機能ではないでしょうか。

『Flock』 ©Julia Lohmann 2008

『Cowbench』とジュリア ©Julia Lohmann 2008

『The Catch』 ©Julia Lohmann 2008

 

▼ジュリア・ローマンHP
http://www.julialohmann.co.uk/

▼ノートで知られるMoleskineの「Detour展」に作品出品中。
http://www.museumderdinge.de/