女性のための、元気になれる俳句91 選・如月美樹 戯曲よむ冬夜の食器浸けしまま 杉田久女

(2010.11.15)
 

夕食の後片づけも半ばに、読みさしの戯曲の続きを読み始めてしまった。台所の片隅。ほの暗い明かり、ひたひたと歩み寄る寒さ。今は、空想の世界に遊ぶことのほうが、彼女には必要なことなのだ。人は、現実だけでは決して生きてはいけない。天才俳人、狂女……とかく伝説的に語られがちな作者だが、それを抜きにしても、句の背景に厳しい孤独感が感じられるのはなぜだろう。掲句初出『杉田久女』(1951)。(如月美樹)。