アートニュース Fromミュージアムカフェ – 2 - モネの名画を“見立て”!? 『さて、大山崎~山口晃展~』、京都で絶賛開催中。

(2009.02.05)

豊臣秀吉と明智光秀が天下を賭けて争った“天下分け目の天王山”の舞台、京都・大山崎。そんな土地で大好評な展覧会がアサヒビール大山崎山荘美術館で開催中の『さて、大山崎~山口晃展~』です。

山口晃『大山崎交通乃圖』 2008年 紙にペン、水彩

別名・平成の大和絵師なんて呼ばれることもある画家・山口晃さん(1969~)。その作品世界は軽快かつユニーク、そしてちょっとシニカル。日本画(主に大和絵)の技法を駆使して描き出されるのは江戸時代を彷彿させる城下町……と思いきや、目を凝らして細かい登場人物や町並みを見てみると、自動車に高速道路、スーツ姿のサラリーマンが! そんな時空を飛び越え生み出される緻密でユーモア溢れる独特の世界観が特徴。「江戸しぐさ」をテーマにしたアニメーションのCM『公共広告機構』などで馴染みがあると思います。

今展は、ほぼ新作ばかりの初公開作品が並ぶ貴重な機会。大山崎の交通網を描いた『大山崎交通乃圖』、ゆかりの歴史人・千利休からヒントを得て“茶”をテーマにした『野点馬圖』……土地と歴史と山口晃の競演は、どれも繊細な中にもクスッと笑える要素を忘れない、真骨頂といえる逸品ばかりです。

さらにはあっと驚く手法で楽しませてくれます。 “見立て”という言葉がありますが、茶の湯の世界では趣を表現する「センスのみせどころ」として使われます。でも実は「思いつき」という意味もある単語だそう。この「見立て」で展開される展示作品も必見! 建築家・安藤忠雄氏設計の空間や、同館が所蔵するクロード・モネの傑作『睡蓮』との奇跡の連携……コラボレーションで、山口流の「見立て」が展開されています。

関西初の個展となる今回、山口さん自ら付けた展覧会名は『さて、大山崎』という、なんとも不思議なフレーズでした。「さて」という接続詞は、逆説よりも柔らかく、肩肘の張らないゆるさがあります。だけども示す意味は“転換”。展覧会を観た人の心や頭や感性に、ちょっとした転換があれば……という想いが込められているのかもしれません。どんな風にも解釈できる変幻自在な山口流「さて」の世界を堪能してください。

 

『さて、大山崎~山口晃展~』

期日:2008年12月11日(金)~2009年3月8日(日)
会場:京都・アサヒビール大山崎山荘美術館
料金:700円(一般)ほか
Tel. アサヒビール大山崎山荘美術館(総合案内) 075-957-3123

http://www.asahibeer-oyamazaki.com/

山口晃『野点馬圖』2008年 紙に水彩
山口晃『邸内見立 洛中洛外圖』2007年 カンヴァスに油彩、水彩、墨