女性のための、元気になれる俳句65 選・如月美樹 銀漢や原子力発電所無音 奥坂まや

(2009.11.02)
 

巨大で、昼間は騒がしい工場ほど、夜の底知れない静けさが恐ろしく感じる。子供の頃住んでいた工業地帯の夜の景色の記憶は、今でも鮮やかな静けさの記憶だ。

現代科学の粋を集めた原子力発電所。無音であるがゆえ、かえってそれは圧倒的な存在感をもって迫ってくる。空の巨大な川である「銀漢」、すなわち天の川も同じ。音のない風景に、存在だけが事実として提示される。ここから現代批判など読みとろうとするのは無駄だ。掲句初出『列柱』(1994)。