女性のための、元気になれる俳句52 選・如月美樹 青い薔薇あげましょ絶望はご自由に 池田澄子

(2009.07.10)
 

 季語は薔薇。中世のヨーロッパでは、薔薇の品種改良をおこなっていた職人が、秘密を漏らさないよう処刑されることもあったという。その昔から、誰も見たことのない薔薇の色をつくりたいと人々は願いつづけてきた。現在、青い薔薇といわれている品種はあるが、厳密な「青」は存在しないという。だから、掲句の「薔薇」は、観念だととらえることもできる。
 女性は、現実肯定の強い生き物。常に自己の肉体を意識しながら生きていかなくてはならないからだ。それゆえ、あっけらかんと現実に立ち戻り、絶望はご自由に、などといえる。「私達には絶望している暇などないの。明日もまた立ち上がって歩いていかなくてはならないから」。
 現実にはない幻の花を目前に突きつけて、こういう言葉をさらりといわれたら、男性はどう立ち向かうのか。本当に、女は強い。掲句初出『空の庭』(1988)。