池田美樹, 池田美樹のLOVE♥ CITY WALKできあがった誌面が唯一の証明。黒子に徹する撮影現場。

(2008.09.01)
 雑誌の編集者に知り合いのある方なら「撮影」という言葉をよく聞くことだろう。
「明日、撮影で早いんだよね」
「あ、ここ、撮影で来たことがある」
「ここ、撮影に使えそうだなー、と思って」
「その日、撮影だから……」 

 撮影ってなんだ!? と思う方もいるだろう。
 我がマガジンハウスで出版している雑誌はほとんどがビジュアル雑誌、つまり写真が主体か、それに近い雑誌。『anan』もビジュアル雑誌といっていいだろう。
 つまり、誌面を作る作業のかなりの部分は「撮影」であるということ。私の感覚だと、雑誌づくりは、大まかに言って、企画1/3、撮影・取材1/3、原稿書き1/3という割合である。

 この「撮影」。取材する人の顔写真から物の写真、ファッション写真、インテリア写真、報道写真、芸能人のグラビア写真などまで様々な種類があるが、これまで私を育ててくれたのは、主にファッション写真の現場だった。

 ページのテーマを決め、カメラマンやスタイリスト、ヘア&メイク、モデルを選び、与えられたページをどう作っていくかを考える。真っ白い数ページが、まずは自分のイメージの中だけで埋められていく。

 できあがってくる写真はすべてのスタッフの共同作業のたまものなのだけれど、ページを作る趣旨によってはカメラマンの意向が強かったり、スタイリストの腕の見せ場だったり、様々だ。

 そんな中で一貫して変わらないのが、私達編集者は“縁の下の力持ち”だということ。スタッフのスケジュールを調整して撮影を組み立て、どこで撮影するかの手配をし、当日は誰よりも早く現場に着いてスタッフのためのドリンクや軽食を準備する。
 それだけではない。現場で、写真に最終的な「OK」を出すのは編集者。つまり、写真の仕上がりに最終的な責任を持つという重要な役目を担っているのだ。

 友人によく言われる。『anan』をよく探してみたけれど、あなたの名前がどこにもないと。そうなのである、『anan』には編集者名が記される習慣がない。ページにカメラマン、スタイリスト、ヘア&メイク、モデルの名前が記されていても、それを自分たちが編集したという痕跡はどこにも残らない。そのページが世の中に送り出されたという事実、それだけが編集者としての自分の証明であり、喜びなのだ。

 来週発売の『anan』は秋のファッション特集号。名前は書いてないけれど、多くの編集者がそのページ作りに関わった。私もそのうちの一人である。秋物のウールニットやファーを身につけたモデルもよくがまんしてくれたし、熱帯のような暑さの中、汗を流しながらスタッフもよくがんばった。

 たまには、華やかなページの裏に、こういう数多くのスタッフがいることを想像してみるのも面白いかもしれない。もちろん、満載のトレンドアイテムを純粋に楽しんでもらうのが一番だけど!

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何もないがらんとしたスタジオ。ここからページが生まれる。

スタジオのどの位置で撮影するかを検討するカメラマンとアシスタント。今回のファッション特集の撮影現場から。

モデルのヘアを直すヘア&メイク。今回のファッション特集の現場から。

撮影現場へ持っていく軽食でこのところ最も人気は、表参道の「ブラウンライスデリ おもて」のオーガニック折り詰め「肴揃」。卵、乳製品などの動物性食品や砂糖は一切不使用で、有名人のファンも多い。

(2008年9月1日 anan編集部 池田美樹)