Shibuya Tourbillon 〜6〜『フクシマでつなぐ』、『好きで描いてるわけじゃないけん』都会モンにはできないこと。
耕し、作り、生きること。

(2013.06.22)

川内村、人生は続く。


「長年住んだ村が放射能に汚染される。」なんという不幸だろうか。

陶芸家・画家の志賀敏広の娘、風夏は災害の時高校1年の春休みだった。父は村を捨てる時に爛漫と咲いている庭の花をあはれに思い、草花の写生をした、のちに村に荷物を取りに帰るたび、草木を描き続けた。また避難先で、動かぬもの、富士山をパターン化した絵画を200枚描いた。そうやって怒り、悲しみを膨大な作品群に変えていった。

高校2年になって芸術の道に進むことを選んだ娘は、みずみずしい作品で公募展の賞を軒並みかっさらった。今回の展示は彼女の初展覧会である。16歳から18歳の間に作られた作品には将来大きく開花する才能の芽がすべて内包されていると思う。


志賀敏広『富士』


風夏『無題』

イギリス人陶芸家で日本に長く住む Steve Tootell は8年来、福島に通い、志賀の窯で陶芸を焼いていた。災害の後は率先して志賀の作品の即売会を開いてきた。3人は福島で出会い、フクシマによって絆を強くした。

この展覧会『フクシマでつなぐ』志賀敏広・風夏&Steve tootell 絵画と陶器 展 には2年半の間の彼らの葛藤、勇気、決意が込められている。そう、福島だって東京だって人生は続く、生き続けることは作り続けること。


Steve tootell “Raku Vase”

『フクシマでつなぐ』志賀敏広・風夏&Steve tootell 絵画と陶器 展
2013年6月18日(火)〜23日(日)、11:00~20:00
志賀敏広・風夏 & Steve Tootell 絵画と陶器展
Life goes on Together in Fukushima Together through Fukushima
ワンドリンク制 500円

渋谷では、いよいよ『アツコバルー arts drinks talk』
グランドオープン。

グランドオープン、とはいっても、4月から素晴らしいアーチストたちがすでに多くの発表の場をつくってくれているのだが、私が2003年に彼の絵に出会ってから、いつか多くの人と感動を分かち合いたいと思っていた作家、田上允克(たがみまさかつ)の個展をアツコバルーのグランドオープンとする。

絵にも映画にも興味のなかった TAGAMI は30歳で偶然デッサンをはじめた時、線一本で、紙が立体に見えてくる不思議に取り憑かれ、以来、一日3枚から7枚の作品を作り続けている。下書きも、塗り直しも、悩みもない。描き終わった時に自然に筆が止まるという驚異の画家だ。TAGAMI の絵を見ているときに湧き上がってくる爽快感はなんだろう。これほどとらわれない絵画に出会ったことがあったろうか?

デュシャンが「泉」を発表して以来、アートはおちょくり、おちょくられ、だんだん袋小路に入っていく、と感じているのは私だけか?

今ここで原点に戻ろう。彼の絵にはコンセプトも、テーマも、タイトルもない。ただの絵があるだけ。解説ヌキ、純粋な絵画言語であなたの目から頭を通らずハートに訴える。


TAGAMI、油彩、1970年頃

山口県の隅っこで。

Tagami こと田上允克は小野田市の農家に生まれた。大学の哲学科までは出たが、何に対しても興味がなかったという。ただ仙人になりたくて、日本の方々の神社や深山を訪ねたり、「仙道」(仙人になる学問)を独学したという。ある時など「仙人は痛みを感じない」と信じて庭の木に毎日頭を打ちつけていたという。すると自分の頭からではなく、木から赤い汁が、まるで血のように出てきたので、可哀そうになってやめた。と言う。

そんな「変人?」で仕事もしない30歳の息子を父親は「世間体が悪い」と追い出した。仕方なく出てきた東京の目黒で新聞配達をはじめた2日目に「裸のお姉さんが見られるかも」という理由でふらりと入った絵画塾でモデルをクロッキーしてみたら面白くて止まらなくなった。次の日父親に電話して「やっと自分がしたいことが見つかりました。でもそれでメシは食えるとは思わないので一生養ってくれますか?」と頼む。父親は驚いて、でも俺が死んだらどうする?というので彼は「私も死にます」と答えたという。その言葉に打たれ、父親は以後、一生彼に仕送りをすることになった。現在父親は他界したが、なんとかなるもので彼は絵を描き続けている。

『好きで描いてるわけじゃないけん』
天才おじさん、TAGAMI 展 第一弾

2013年6月28日(金)〜 7月21日(日)会期中無休

日月火水 11:00~18:00
、木金土 15:00~22:00

ワンドリンク制 500円

*関連イベント
6/28(金)終日 Entrance Free!
19:00~21:00 レセプション・パーティ

7/4(木)都築響一のギャラリートーク
20:00 1,000円(ドリンク付)

会期中、ダンスなど、パフォーマンスなども予定しています。
facebook でお知らせしていきます。

 

田舎と都会のフェアトレードをしましょう。

今、おもしろい活動をしているのは地方の人ばっかじゃないですか? 先日出会った「女子の暮らしの研究所」 なんて、20代から30代前半の女性たちは福島に世界の注目が集まっているのを利用して発信している。だってどんな有名人も学者もアーチストもフクシマだからタダで来てくれる。だったらそれを利用させてもいましょう、というわけでラジオ番組やらアートやら活発に発信している。とはいってもお金が集まるのは東京。

本来の意味の豊かさを作るのは地方、それをマネタライズするのが東京。で、儲けは東京に行く。食料も資源も全部地方にある。素晴らしい文化資源、方言だって民謡だってある。彼らのように大地に近いところで生きている人たちには根っこがあるみたいだ。だから葉っぱも花も咲く。もうとっくに都会のものをありがたがる田舎、という図式は破綻した。しかし産業も教育の機会も医療施設も地方は少ない。今一つハンディキャップがある、だから都会と田舎のフェアトレードをはじめないといけないと思う。勇気ある彼らを息切れさせてしまうと都会は万事休すになってしまうのだから。これが日本の政治の大事な仕事だと思うのですが。どうでしょう?

『アツコバルー arts drinks talk』

TEL:03-6427-8048
所在地:東京都渋谷区松濤1-29-1 渋谷クロスロードビル 5F
入場料:ワンドリンク (500円)