女性のための、元気になれる俳句3 選・如月美樹 〜日本語の優しすぎたるゆすらうめ 後藤比奈夫〜

(2008.06.14)

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 日本語はあいまいな言語だといわれる。主語がなくても成り立つ文章、口ではイエスといいながら、実はノーを表す独特の婉曲語法。だからこそ、俳句という詩が成り立つのだともいえる。諸外国の詩は「わたしが〜」という表現になりやすい。それに比べ、俳句はいかに自我を殺して表現するかを求める詩形だからだ。

 日本語が優しすぎる、というのは、作者の哀しみのあらわれのように思える。あいまいなこの言語を愛する気持ちと、やわらかな表現を使いながら、そうではない事実を告げなくてはならなかった数々の出来事。

 ゆすらうめは、熟すと紅くてたわわになる、甘くておいしい実。この、やわらかな響きと存在感を持つ季語と日本語の優しさとを重ね合わせたとき、私たちに、ある感情が生まれる。掲句初出『花びら柚子』(1987)。