深瀬鋭一郎のあーとdeロハスサイクル・アート!『茄子 アンダルシアの夏』『弱虫ペダル』に続け!

(2015.10.28)
『Bike Tokyo 2015』のスタート。筆者は画面中央。出走1000名中28番でフィニッシュ。筆者母校の自転車部は、日本学生自転車競技連盟で現在チームロードランキング5位、主将の浦がロード選手権ランキング1位。
『Bike Tokyo 2015』のスタート。筆者は画面中央。出走1000名中28番でフィニッシュ。筆者母校の自転車部は、日本学生自転車競技連盟で現在チームロードランキング5位、主将の浦がロード選手権ランキング1位。
「自転車」をテーマ
としたアート作品をご紹介。

東京都の舛添知事は、9月24日に、都内にある美術館の館長と意見を交わし、5年後の東京オリンピック・パラリンピックを契機に日本文化を世界に発信する取り組みに協力を求めたとのことです。これに対し、美術館側からは、夜間開館を行うとか、スポーツをテーマにした企画展を検討するといった意見が出され、具体化に向け連携していくことになった旨が報道されていました。筆者の大学恩師である舛添知事はアートに造詣が深く、その奥様も元美術館学芸員でいらっしゃるので、オリンピックを契機とした「スポーツ・アート」などとして、良い方向に向かっていくのではないかと期待しています。

この報道に接して、筆者のアート・プログラム制作・運営者としての活動が、総務省自治財政局でお台場やMM21、幕張メッセといった見本市関連施設や、野沢温泉、木島平、しらかば2in1など公営スポーツ施設の整備に係る起債(観光その他事業債)許可業務を行ったり、その後、『サムタイムカップ湘南ヨットフェスティバル』で競技委員長を務めた経験から始まっていることを思い出しました。こうした経歴から、自分の中ではスポーツのフェスティバルも、アートのフェスティバルも違和感なく共存してきたのですが、一般的には、スポーツとアートのシナジーを効かせた企画というものは、それほど多くはない様に思います。例えば、自転車でロードバイクやマウンテンバイクを掛け合わせてクロスバイクやシクロクロス(オフロードで行われる自転車競技)ができたように、垣根を超えてクロスすると、新たに面白いものが生まれてくるかもしれません。

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『シャカリキ!』、『茄子 アンダルシアの夏/スーツケースの渡り鳥』、『Over Drive』、『弱虫ペダル』、『かもめ☆チャンス』、『じこまん』、『のりりん』、『ろんぐらいだぁす!』といった自転車マンガやアニメーション作品に、筆者も随分と影響を受けましたが、これらの影響もあってか、最近は週末に真新しいロードバイクに乗っている人を見かけることも多くなりました。

筆者も展覧会・イベント会場へロードバイクで移動することも多いですし、アート活動の合間を見て、ロングライドしたり、レースやファンライドなどにも出走しています。

ということで、本稿では、幅広いスポーツ・アートの中でも「自転車」をテーマとしたアート作品を紹介することとしたいと思います。

筆者机上の自転車マンガ(古い作品は手元に置いていないので写っていません)。筆者はその影響もあり、箱根学園自転車競技部主将 福富寿一と同じ『GIANT』のロードバイクに乗っています。
筆者机上の自転車マンガ(古い作品は手元に置いていないので写っていません)。筆者はその影響もあり、箱根学園自転車競技部主将 福富寿一と同じ『GIANT』のロードバイクに乗っています。

ロードレースの最高峰(3大グランツール)と言えば、『ツール・ド・フランス Tour de France 』、『ジロ・デ・イタリア Giro d’Italia』、『ブエルタ・ア・エスパーニャ Vuelta a España』ですが、現代日本を代表する美術作家のひとり、曽根裕(1965-)は、1993年に、ムカデから想起された連結一輪車の作品『19番目の彼女の足(Her 19th Foot)』(本体は水戸芸術館が、関連作品の多くは深瀬記念視覚芸術保存基金が収蔵)を制作し、『ツール・ド・フランス 』に挑戦するプロジェクトを展開しました。360度の回転、上下左右の動きの可能なフル・フレキシブル型のボールジョイントで前後に連結可能で、19台を連結すると全長は20メートルにもなります。公募で集まったスタッフとともに、世界各地で公開パフォーマンスを行いました。

曽根裕『アルペン・アタック』展(草月会館)パンフレット。19台連結一輪車『19番目の彼女の足(Her 19th Foot)』で『ツール・ド・フランス』に参戦するプロジェクト。深瀬記念視覚芸術保存基金からも収蔵作品を貸し出しました。
曽根裕『アルペン・アタック』展(草月会館)パンフレット。19台連結一輪車『19番目の彼女の足(Her 19th Foot)』で『ツール・ド・フランス』に参戦するプロジェクト。深瀬記念視覚芸術保存基金からも収蔵作品を貸し出しました。

また取手競輪場では、20006年から毎年、自転車とアートがコラボレーションしたイベント『サイクルアートフェスティバル』を開催しています。東京藝術大学取手キャンパスがある特色を活かしたイベントで、昨年は1万人が入場したとのことです。来訪者による競輪バンクの試走や現役競輪選手による模擬レースといった自転車イベントに加え、場内各所にトリックアートが設置され、アート&クラフトマーケット、ワークショップなど沢山のアートイベントが行われます。「取手蛍輪」という名で、様々な趣向を凝らした電飾自転車を展示・出走し、その美しさ、楽しさを競うイベントも開催されています。

『サイクルアートフェスティバル 2015』
会期:2015年11月8日(日)9:45~16:00
会場:取手競輪場
入場無料・雨天決行(荒天中止)
駐車場無料     約1700台
サイクルラック有り 約50台
公式ウェブサイト  http://toridecafe.jimdo.com/

この「取手蛍輪」の出走経験がある美術家の鈴木勲(1969-)は、実はガチのロングライダーです。旅とエコロジーをそれぞれ美術作品として可視化しており、2001年以降、ソーラー・リクシャー(サイクル)による北インド8大聖地巡礼、太陽光・風力発電電動アシスト自転車によるモンゴル横断、電動アシスト自転車によるヒマラヤ越え、田中泯(舞踏家)氏の耕運機を借りて廃油を燃料とした山梨県白州から琵琶湖周遊、廃プラスチック油化燃料によるモペットバイクでの日本縦断、水の落差がある場所で小型水力発電機により電動カートを充電しながら巡った新潟─水の旅などなど、走行総延長が地球7分の1周を越えるとんでもない規模でエコロジカルな旅を実現しています。

モペットバイクによる日本縦断の旅程図。鈴木勲は皆から貰ったプラスチックをガソリンに変えながら燃やして完走!
モペットバイクによる日本縦断の旅程図。鈴木勲は皆から貰ったプラスチックをガソリンに変えながら燃やして完走!
中国現代美術の黎明期1980年代から美術家として活動してきた、艾未未(アイ・ウェイウェイ、1957-、中国)は、中国を代表する自転車ブランド「フォーエバー(永久)」の自転車1200台によるインスタレーション『永久自行車』
(Forever Bicycles)を2011年に台北市立美術館で発表しています。日本でも、森美術館『アイ・ウェイウェイ展-何に因って?』(2009)で、フォーエバー自転車42台を繋げて円筒状に組み立てた作品『Forever(永久)』が展示されていたことに、ご記憶がある人も多いでしょう。中国で過去普遍的に見られた自転車の群れが経済発展に伴い現代では車の渋滞に変貌している一方、自転車の思い出は人々の記憶の中で「永久」に廻り続けることを建築的に表現した作品でした。
艾未未『何に因って』展(森美術館)カタログ。フォーエバー自転車42台を繋げて円筒状に組み立てた作品『Forever(永久)』(2003)は展示ハイライトのひとつでした。.JPG
艾未未『何に因って』展(森美術館)カタログ。フォーエバー自転車42台を繋げて円筒状に組み立てた作品『Forever(永久)』(2003)は展示ハイライトのひとつでした。

『art-Link 上野−谷中2008』 アートコンペティション「龍門」の最優秀賞(モンブラン・パトロネージ深瀬記念視覚芸術保存基金賞)に輝いた、入江早耶の作品『ヒカリに向かって』(2008)は、女児用の自転車の後輪に発電機をつけ、スタンドを立て後輪を浮かして、鑑賞者にペダルを漕いでもらう、観客参加型のキネティック立体作品でした。一生懸命にペダルを漕ぐと、ヘッドライトが光り、自転車の行く手(前方壁)が照らされる仕組みです。夜道では目的地の明かりが輝いて見えるものですが、目的地であるそのヒカリに向かって、子供は勢い良く一直線に、大人は困難の中よろよろと進むイメージが可視化された作品です。

『art-Link 上野-谷中2008』 コンペティション「龍門」のグランプリに輝いた入江早耶『ヒカリに向かって』。後輪に発電機が仕掛けてあり漕ぐとヘッドライトが光って前面の壁を照らします。
『art-Link 上野-谷中2008』 コンペティション「龍門」のグランプリに輝いた入江早耶『ヒカリに向かって』。後輪に発電機が仕掛けてあり漕ぐとヘッドライトが光って前面の壁を照らします。

このように筆者もいくつかの自転車アート作品の制作協力や展示を手掛けてきたのですが(艾未未作品を除く)、これらはあくまで「ハイアート」であリ、いま一番手掛けたい(というか自分で乗りたい)と思うサイクル・アートは、実は卑近にも「痛チャリ」(いたちゃり/漫画やアニメのキャラ、ロゴでデコレーションした自転車)だったりします。筆者の家の近所の駐車場には痛車が停めてあり、秋葉原UDXの地下駐車場に行かなくても随時鑑賞できる環境にあるのですが、痛チャリは家の近所で見たことがないので、日本最大の自転車フェスティバル『Cycle Mode(サイクルモード)』などのイベントの一部として展覧会をやって欲しいですね。

今度の『ろんぐらいだぁす!』のTVアニメ化に併せて、痛チャリのホイールカバー用ステッカーを発売してくれたら、思わず買ってしまいそうな予感がしますよ。

近所の痛車。『ラブライブ! スクールアイドルフェスティバル』の国立音ノ木坂学院2年生部員 南ことりさんのどデカいステッカーが貼ってあります。
近所の痛車。『ラブライブ! スクールアイドルフェスティバル』の国立音ノ木坂学院2年生部員 南ことりさんのどデカいステッカーが貼ってあります。