土屋孝元のお洒落奇譚。『ボストン美術館展』を見て
上野桜木へ、お抹茶で一休み。

(2012.06.08)

『特別展 ボストン美術館 日本美術の至宝』展へ。

上野へ出かけてきました。

『特別展 ボストン美術館 日本美術の至宝』展は、ボストン美術館より日本美術の名品が数多く里帰りしているとの前評判です。

東京国立博物館(通称東博)の平成館は大きな展覧会の会場で過去に何度も大展覧会が開かれている場所で やはり入り口では並びましたが、今日は待ち時間が10分から30分以内とのことで、人気のある展覧会は1時間2時間待ちもありますから、まだましな方かな、と、東博の本館の隙間からもスカイツリーが望めて、ここも撮影ポイントかな?待ち時間にはちょうど良いでしょうか。

さて本題に、ボストン美術館よりの名品は第一章から第六章までと大まかに分けられていて見やすく展示されていました。

ここからが大混雑です。第一章平安期から鎌倉期の仏教美術には日本に残っていれば国宝という物も多く、フェノロサと岡倉天心の見識の高さには感嘆しました。

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このボストン美術館コレクションは明治初期に来日したフェノロサと岡倉天心先生(東京美術学校、後の芸大の校長)の尽力によるものだとか、後にフェノロサはボストン美術館東洋部長にもなりました。と資料にあり、僕は芸大時代よりフェノロサは狩野芳崖を認め狩野派に心酔したと認識していたので勉強になりました。

第二章、吉備大臣入唐絵巻、これはなかなか表現が難しいのですが、唐へ渡った吉備大臣がなかなか皇帝との謁見ができず、碁に勝てば謁見させるとの事で碁の名人と試合をする、碁石を飲み込み辛勝したが、碁石を飲み込んだと疑われ下剤を飲まされて調べられるが見つからず皇帝への謁見ができたとかできないという話。ユーモラスな表現で話も面白いし絵も良いです。

平治物語絵巻三条殿夜討巻、大河ドラマの影響か? この絵巻物は人気で2重、3重の人垣でほとんど見えない状態でした。

第三章、中世水墨画と初期狩野派、狩野元信の韃靼人狩猟図、何故か韃靼人が登場するのですが、鎌倉時代に元朝が攻めてきたことにも由来するのか、とも考えましたが定かではありません。

雪舟(拙宗等揚)が若年に描いたとされる三聖、蓮図も見応えがあり、構図と墨の濃淡の使い方など墨絵とは思えない現代感覚です。

第四章は日本美術史上の四番バッターのオールスターキャストで俵屋宗達、尾形光琳、長谷川等伯、狩野探幽、土佐光起、伊藤若冲とそうそうたる名前が並びます。俵屋宗達の墨絵、水禽、竹雀図などは墨の濃淡、ぼかしのテクニック、やはり素晴らしい。等伯の龍虎図、何度見ても良いですね。この絵柄の記念切手はここぞという時に使います。

尾形光琳の松島図屏風も構図の大胆さ、彩色の素晴らしさと色が退色していないことにも驚きでした。若冲のオオム、間違いない、流石です。土佐光起のテクニック、描かない部分の上手さ、抜きのテクニックに脱帽です。

第五章、今回の展示でも最も注目は曾我蕭白の墨絵の数々でしょう、あらゆるテクニックで描かれた龍の襖絵、山水図、鷹図、風仙図屏風など現代絵画と比較しても負けない大迫力です。本当に日本美術のいいところが凝縮されていてわかりやすい、日本に残らなかったから綺麗に保存されていたのかもしれません。

第六章、着物と小袖、能装束、刀剣類の展示、刀剣にはあまり人気がなく、こちらから見るのもありだなと思いました。


土屋孝元による新解釈、竹雀図写。

土屋孝元による新解釈、龍図写。
上野桜木『風土菓 桃林堂』、
護国院大黒天様。

見学後は一休みしたいところを我慢して東博を出て上野桜木方向へ向かい『風土菓 桃林堂』でお抹茶をいただきます。葛桜が品切れで生水羊羹を頂きました、冷たいほうじ茶も美味しく、東博での疲れを癒します。

ここではお土産に「小鯛焼き」や「五智果」がお勧めで「五智果」とは野菜の砂糖漬けですが、中身の違いで箱に三タイプあります。蕗の青、蓮根の白、人参の赤、金柑の黄色、無花果の黒、この五色から五つの知恵を象徴する五智如来様(不動信仰にも共通か、目黒不動、目赤不動、目白不動、目青不動、目黄不動)に因んでの命名だそう、僕は昔から金柑の入ったものが好みですね。

ここへ来たらついでに、いつものコースで近所の護国院大黒天様へお参りです、ここは昔芸大受験の頃からのお付き合いでおみくじを引くと大吉の当たる確率が高いのです。

不思議ですがここでは大吉率が90%ぐらいでしょうか。他の寺社ではこうはいかないと思います。

もしも、お昼過ぎに東博を出て、さてお昼はどうしようと困ったら、お勧めは芸大の食堂です。音楽学部の通称キャッスル、美術学部の大浦食堂、こちらでお昼なんてのも たまには良いのでは。洋食ならキャッスルへ、和食なら大浦へ、

たまに僕も出かけるのですが、自分の時代と比べて 今の学生さん達を見るのもいいものです。


桃林堂にて。

 

『特別展 ボストン美術館 日本美術の至宝』

会期:開催中~6月10日(日)

時間:9:30~17:00
※ 金曜日は20:00、土日祝休日は18:00まで開館
※ 入館は閉館の30分前まで
問合せ:03-5777-8600(ハローダイヤル)
会場:東京国立博物館 平成館
住所:東京都台東区上野公園13-9
休館日:月