リブロ・トリニティ – 13 - 『35歳の教科書 今から始める戦略的人生計画』藤原 和博著

(2009.10.21)
~著者+編集者+書店スタッフ、著者+書店販売員+読者……3人が一体となり、力を合わせて完成した本を紹介するコーナーが「リブロ・トリニティ」です~

藤原和博 著

『35歳の教科書 今から始める戦略的人生計画』

今回は、上記「トリニティ」に加えて読者である『Age(アージュ)』編集長のコメントも!

■ 著者より

藤原 和博(ふじはら・かずひろ)

前杉並区立和田中学校校長
大阪府府知事特別顧問/東京学芸大学客員教授

1955年生まれ。78年東京大学経済学部卒業後リクルート入社。東京営業統括部長、新規事業担当部長などを歴任。93年からヨーロッパ駐在、96年から同社フェロー。リクルート成長の秘密については『リクルートという奇跡』(文春文庫)に詳しい。
2003年4月から杉並区立和田中学校校長に、都内では義務教育初の民間人校長として就任。キャリア教育の本質を問う[よのなか]科が『ベネッセ賞』、新しい地域活性化手段として「地域本部」が『博報賞』、給食や農業体験を核とした和田中の「食育」と「読書活動」が『文部科学大臣賞』をダブル受賞し一挙に四冠に。「私立を超えた公立校」を標榜して「45分週32コマ授業」を実践。「地域本部」という保護者と地域ボランティアによる学校支援組織を学内に立ち上げ、英検協会と提携した「英語アドベンチャーコース」や進学塾と連携した夜間塾「夜スペ」に取り組み話題に。
全著作並びに活動の紹介は「よのなかnet」に。3児の父で3人の出産に立ち会い、うち末娘を自分でとり上げた貴重な経験を持つ。『「ビミョーな未来」をどう生きるか』『新しい道徳』(ちくまプリマー新書)、民間校長への応募を呼びかける『校長先生になろう!』(日経BP社)、『人生の教科書[よのなかのルール]』『公立校の逆襲』『誰が学校を変えるのか』(ちくま文庫)、『つなげる力』(文芸春秋)など著書多数。

「人生」というゲームのルールが変わる!
だったら、武器や戦い方を変えないとマズいでしょ。

民主党が大勝して政権交替が実現した。
民主党が自民党より政治力があったから勝ったのだろうか?
民主党の政治家のほうが、自民党の政治家より実力が上だと国民が判断したのだろうか? あるいは、民主党の政治家のほうが「学力」が高い(笑)?

そんなことではないだろう。
もっと大きな変化、しかも社会の根底で起こっている地殻変動のような変化がなしたこと。
日本はいま、「成長社会」から「成熟社会」に移行しようとしている。
発展途上国から、成熟した大人の国へ、といってもいい。

「みんな一緒」という感覚の社会から「それぞれ一人一人」という感覚の社会へ。

だから、ルールが変わる。
成長社会のルールから、成熟社会のルールに変わるのだ。
どんなふうに変わり、どんな準備をしなければならないか。
それが、この本に書いてある。

たとえば、ゴルフを例に考えよう。
前の時代には、ホールに霧がかかったら晴れるまで待ってクラブを選び、どんなに時間をかけても「より少ない数で(パー3とかパー4が正解で)」あがるのがルールだった。
ところが、霧が晴れることのない時代に入ってしまった。だから、 待っていてもしょうがない。まず第一打を前に打ち出す勇気が必要だろう。あとは何度でもボールを打って、経験値を上げながら試行錯誤で切り抜けるしかない。何打打ってもいいから、「より少ない時間で」あがるルールに変わったのだ。
前者のように「正解主義」で生きるとドンドン辛くなり、後者のように「修正主義」で生きると決めれば、やわらかく、しなやかに生きられる。

35歳からは、ただ頑張っても報われない。
ポジティブシンキングだけでは乗り切れない。

そんな今だからこそ、あなたが主人公の人生を歩み始めるチャンス。
この本は、そんな人生へのガイドブックなのです。

 

巻末の、35歳の「学力マップ」

クリックするとPDFで表示します。
成熟社会で幸せをつかむ鍵が図解されています(詳しくは本で)

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■書店スタッフより

丸善丸の内本店 和書グループ 一般書売場田中 大輔(たなか・だいすけ)

1980年生まれ。千葉県出身。2004年に丸善・丸の内本店に入社。スキル、自己啓発書を担当後、現在は経営、会計書を中心にビジネス書全般を統括している。プライベートで読む本は、小説ばかりで、好きな作家は伊坂幸太郎、森見登見彦、本谷有希子など。森見作品への偏愛振りはすさまじく、作品の舞台を体験するために、毎年京都へ行くほど。ファッション、音楽、カメラなど、趣味に生きる自称自由人。「おもしろき こともなき世を おもしろく」をモットーに最近は「高等遊民になりてぇ」と現実逃避(妄想?)に耽る日々を送っている。

「この本は絶対に売れる」。書店員の「勘」が的中。

『35歳の教科書』は発売当初、10冊程度しかお店に入ってきていなかったのですが、私の上司がカバーと目次を見た瞬間に「この本は絶対に売れるから大量に注文しよう」ということで、すぐに出版社に連絡し、いっきに100冊仕入れたんです。

「売れるはずだからいいところに置こう」「たくさん注文しよう」といった意思決定の根拠は、経験則や、書店員の「勘」だったりするんですが(笑)、今回はまさにその勘が的中し、注文した100冊が1週間程度で売り切れました。現在も追加注文した重版分が、好調な売れ行きです。

当店のメインのお客様は、30代から40代の男性ビジネスパーソン――なかでも自己啓発やスキルアップに熱心な方々――が多いので、本書のタイトルや内容が、彼らのニーズにぴったりマッチしたのでしょう。もちろん、著者の藤原和博先生の知名度が売り上げに寄与していることは間違いありませんが、テーマを「教育」ではなく「自己啓発」に設定したことで、お子さんがいない層にも読者層が広がっていったと考えられます。また、「35歳」と世代を限定しているにもかかわらず、35歳以上の方も買っているのが特徴的ですね。

「世代モノ」という切り口で見ると、2003年に発売され、その後も売れ続けている『28歳からのリアル』(WAVE出版)というベストセラーがあります。これは僕の仮説ですが、6年前に28歳だった人たちが歳を重ね、今年(2009年)34歳になって本書を手に取った可能性は高いと思います。

私自身、ターゲット世代に年齢が近いと思うのですが、この世代って、「こうなりたい」というロールモデルがいないんです。親と同じ未来はなさそうだし、じゃあどうすればいいのかが分からない。正直もういい歳だし、周りに不安を打ち明けるのも恥ずかしい。そういう不安な気持ちに対して、回答を示してくれている一冊だと思います。

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■編集者より

幻冬舎メディアコンサルティング 編集局田中 怜子(たなか・れいこ)

1981年生まれ、埼玉県出身。編集プロダクションを経て、2007年幻冬舎メディアコンサルティングに入社。主にビジネス書の編集を手がける。趣味は、海外、国内問わず路地裏を訪ねる一人旅。

「最強のプータロー」藤原和博に学べ!

藤原和博先生に初めてお会いしたとき、驚いたことが2つあります。

ひとつは、名刺交換をする前に「田中さんの人生ストーリー語ってみてよ。長くていいから」と突然振られたこと。今まで仕事をしていて、自分の人生について聞かれたのは初めてでした(私は焦って仕事のことばかり語ってしまいましたが、それがいかに虚しいことだったか、本書の原稿を読んで分かりました)。
2つめは、藤原先生が本当に名刺を持っていない(!)ことでした。こちらが緊張して名刺を差し上げると「どうも、藤原です!」とおっしゃるだけ。肩書きもなし。

そう、藤原先生は本書の内容を常に実践されている、まさに「最強のプータロー」だったのです。

立派な肩書きを持った人に、「人生」とか「戦略」なんて壮大なことを、偉そうなことを語られてもピンと来ないけど、常に肩書きなしで勝負していらっしゃる藤原先生の言うことなら信じられる。

先の見えない時代、団塊ジュニア世代の方々に一歩を踏み出してもらえる、そんな新しい人生マニュアルができるはず。先生にいお会いしてその確信が強くなり、今出来上がった本を見て、その確信は間違いではなかったことを、改めて実感しています。

また、新しい人生マニュアルを多くの人に届けるためには、装丁も新しいものでなければならないと思い、デザインはタイプフェイス渡邊民人さんにお願いしました。「30代向けビジネス書」には珍しいイラストの装丁を、多くの人が「今までの本とは違うけど、いいかも」と思っていただいたからこそ、発売日当日に重版という嬉しい結果が付いてきたのではないかと思います。

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■読者より

池田 美樹(いけだ・みき)

転職3度目でマガジンハウスに入社以来、『olive』『Hanako』『croissant』『an・an』と、あらゆる年代の女性誌の編集者を経験した後、編集長として新しい女性誌『Age(アージュ)』を発行。都会ではたらく元気あふれる女性達に、パワフルなライフスタイルを提案している。現在不定期刊行中。「お金はあるだけ使い尽くす」「やりたいことは何でも試してみる」のが主義。「Age(アージュ)編集長ブログ」も日々更新中。

35歳を過ぎていても“効く”人生の教科書。

発売日にこの本を買ってすぐに読み終えたという人が「この本、いい!」とTwitterでつぶやいていた。『35歳の教科書〜今から始める戦略的人生計画』。著者の藤原和博さんは、“型破りな教育者”のイメージだった。タイトルと著者のイメージの軽いギャップへの興味もあって、すぐに書店に走った。既に品切れで、何軒かを回った後、ようやく手に入れた。

読んでみたかったのにはもう一つ、理由がある。6月に私自身が編集し、発行した『Age(アージュ)』という雑誌のサブタイトルが「35歳からの女の人生戦略BOOK」だったからだ。35歳からの女の人生戦略とは? という問いを立てながら、誌面でその解を表現することは難しかった。叶わなかった、と言ってもいい。なぜなら、そこに“解”はない、というのが、私の中での結論だったからだ。

藤原さんの答えは明快だった。「“正解”ではなく、“納得解”を導きだそう」。納得解とは、自分が納得でき、かつ関わる他人を納得させられる解のこと。「みんな一緒の時代からそれぞれ一人一人の時代へ」。今という時代に閉塞感を感じていたけれど、藤原さんが“成熟社会”と呼ぶこれからの社会は、自分次第でどんな風にでも生きられる、と感じた。

ちなみに、私は35歳をとうに過ぎている。けれど、資料としてではなく、自分のこととして、むさぼるようにこの本を読んだ。なぜなら、35歳を過ぎているからこそ、この価値観の変化の意味がよくわかったからだ。何かを感じるのに、早すぎるということも遅すぎるということもない。すべての年代の人に、この変化を共有してもらえたら、と思う。

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