女性のための、元気になれる俳句55 選・如月美樹 いつの間にがらりと涼しチョコレート 星野立子

(2009.08.03)
 

「涼し」が夏の季語だときいて、意外に思う人もいるかもしれない。暑い夏の日、不意に風が通り抜けていくときなどに感じる、ほんのひとときの涼しさ、また、玄関先の打ち水などに感じる心理的な涼。いろんな折に涼しさを見いだそうとする、実に日本的(アジア的?)な季語だ。

掲句は一日の時間の流れを詠んだもの、という気がする。家事をしている日か、あるいは仕事に追われていたのか。暑い中、わき目もふらずにひとつのことをなし終え、ふと気づくと夕暮れ時の涼しい風がさっと頬をなでていった。もうこんな時間なのか、と、頂き物のチョコレートをほんのひとかけら食べてみる。一息ついたあとも、またきっと、女には忙しくやらねばならぬことがあったのだろう。掲句初出『立子句集』(1937)。