女性のための、元気になれる俳句70 選・如月美樹 凍蝶のふと翅つかふ白昼夢 野澤節子

(2009.12.08)
 

女学校時代に脊椎カリエスを病み、中退して長い間病にふせっていた作者は、それゆえ自己の内面を見つめる冷徹な視点を持ち続けることができたと後に述懐している。「凍蝶(いてちょう)」は、冬の蝶のこと。寒さゆえ、じっとどこかにとまっている蝶のことを、まるで凍っているようだというのでこう表現する。凍っているかに見えた蝶が、ふと羽を動かした。そう思えたのは、あるいは夢だったのか。この句を作った頃は完治していたようだが、今の自分も結局は白昼夢のようなものなのだと作者は敏感に感じていたのかもしれない。生の一瞬一瞬は、いかなる人にも平等だ。掲句初出『飛泉』(1976)。