土屋孝元のお洒落奇譚。象に乗った帝釈天様は
阿修羅様とならぶかっこよさ?

(2011.09.17)

東京国立博物館 平成館
『空海と密教美術展』へ。

上野へ『空海と密教美術展』を見に行く。
弘法大師空海、誰もが知る密教のお坊さん、正確には伝法阿闍梨位の灌頂を受け「遍照金剛」の名前を与えられた平安時代初期の僧です。簡単に説明すると、遣唐使として唐へ渡り、その当時の最新の仏教、密教を恵果(唐長安青龍寺の僧、密教第七祖)より会得し日本へ帰国後、高野山、東寺、などの真言密教の開祖として知られています。

その当時、今でも?  仏教法典は梵字で書かれていて、空海さんは、それで唐へ渡って一時期、インドの僧(般若三蔵)に師事して梵語、梵字を習得したのでしょう。
二十年の留学期間をわずか二年で日本へ戻ったため、罪を問われて、入京がなかなかできなかった期間がありました。最澄(天台宗、比叡山の開祖、ある時期は空海の弟子でした)などの尽力により入京できたようです。

高野山奥の院に霊廟があり、今でも一日に二度、維那(ゆいな)と呼ばれる仕侍僧により食事と衣が届けられています。この入定には諸説あり、衣を変える時に裾に泥が付いていることから、今でも諸国を巡っているのだとか、髪も髭も伸びているとか、定かではありません。維那は奥の院の内部の事一切他言無用で、誰にもわからないのです。

阿修羅像と比べても遜色ない美形
東寺・帝釈天騎象像

この展覧会では、弘法大師空海の所縁の東寺、醍醐寺、浄瑠璃寺、などそうそうたるお寺より国宝仏、重要文化財が展示され見るものを圧倒します。

中でも東寺の仏像曼荼羅は素晴らしく、帝釈天騎象像などお顔も涼しげで なかなかのハンサム、今風に言えば、イケメンですか。最近人気の阿修羅像と比べても遜色ない美形です。

信じられない方はご自身でご確認を。騎象像の象も今の象ではなく、小型の象でシャープな面構え。横から見るシルエットも隙がなく 帝釈天との一体感も申し分ありません。

 

個人的な感想ですが、この帝釈天騎象像の象は昔、見た、生物学の教科書の進化図を遡った象にも見えなくはないのです。想像をたくましくすると、現代の象に進化する前の古い種族と言うか、生き残った種族の象かもしれません。雪男伝説やネス湖のネッシーなどいろいろと事例がありますから、あくまでも私感ですが。

この東寺仏像曼荼羅には降三世明王立像、大威徳明王騎牛像(この騎牛の牛は水牛です)、仏師により微妙に表現が違い耳を立てた像、耳が寝た像といろいろなタイプがあります。共通するのは水牛の顔が可愛らしく、最近流行りの木像現代彫刻の様でもありました。梵天座像、持国天立像、増長天立像、金剛法菩薩坐像、金剛業菩薩坐像、これだけの仏様がここに居るという事は東寺は大丈夫なのかな、と、思います。

まあ、お寺も考えて中心の仏さまではなく、一体づつわかりにくい所から展示用に貸し出していることでしょうか?制作年代を見ると平安時代にさかのぼり、これだけの木像彫刻を制作した仏師達にも驚きます。ルネサンス期のミケランジェロより600年前になり、改めて日本の仏教美術の完成度の高さに感心しました。

次に驚かされたのは、空海の筆法の素晴らしさ、力強い墨の黒が迷いなく写経され、現代人から見ると活字の特太楷書かと思わせる正確さです。
最晩年の書に少し、乱れがありましたがそれまでの筆法の多様さ素晴らしさに比べれば気になる事ではありません。

弘法筆を選ばず。とはこのことか、と一人納得。

 

空海と密教美術展