女性のための、元気になれる俳句81 選・如月美樹 カーテンの透けて紅来る朝寝かな 山口青邨

(2010.04.06)
 

春は眠い。ついつい、一度目がさめたのにまた寝てしまう。この二度寝のことを「朝寝」という。歳時記にも載っている立派な季語である。俗なことばであるだけに、詩的にとらえるのは難しそうだ。
歳時記の例句を見ると、旅先で朝寝をした、という句が多い。高浜虚子も「旅にあることも忘れて朝寝かな」と詠んでいる。ほかにもみちのく、長崎など、旅先は様々だが、鑑賞しているとだんだん飽きてくる。朝寝と旅との配合はもういい、と、思って句集を眺めていたら、掲句が登場した。二度寝をしているうちに陽がのぼってきた、というのである。怠惰な印象になりがちな朝寝を、美しく詩的な瞬間として切り取った。
大正から昭和の時代に生きた、鉱山学者という肩書きの作者。なるほど、理系らしい表現だ。(如月美樹)