女性のための、元気になれる俳句74 選・如月美樹 凍蝶も記憶の蝶も翅を欠き 橋本多佳子

(2010.01.18)
 

冬の季語「凍蝶」を使った俳句には素敵なものが多いと思うのだけど、この句はぱらぱらと句集をめくっていて今日初めて発見した。句集というものはなかなかおもしろい。それをひもとくときの季節、時間、天気、さらには心のありようによって、目に飛び込んでくる句が違う。それは、まるで自分を映す鏡のようだ。
掲句、目の前の凍蝶も、記憶の中にある蝶も、同じく羽を欠いているという。それが本当のことか否かはどうでもいい。ふと呼び覚まされるかすかな記憶。輪郭ははっきりしないけれど、そのときのある感情が一瞬よみがえっては消えていく。人生って、きっと、そんなようなことの連続だ。『紅絲』(1951)。