ファッション・アイコンとなったBB。 もっと良く知るためのブリジット・バルドー言葉集とDVDが登場。

(2014.10.01)
DVD『セシルの歓び』より© 1967 STUDIOCANAL 
DVD『セシルの歓び』より© 1967 STUDIOCANAL 

60年代、彗星のごとくフランス映画界に躍り出た、ブリジット・バルドーこと、愛称BB(ベベ)。

18歳という若さでデビュー、あっという間に世界的スターとして知られるようになり、惜しまれ引退する40歳前まで50本近い映画に関わります。歌手としても才能を発揮しました。最近、テレビCFに使われたBBの曲が、とても斬新に感じられたのが印象的でした。

当時、彼女は常にセンセーショナルで、アナーキーで、元祖小悪魔の名を欲しいままに、同じくセックス・シンボルと呼ばれたマリリン・モンローとは、一線を画したファッション・リーダーとしても憧れの的でした。

『素直な悪女』を皮切りに、それまでにない自由で奔放な女性像を世の中に見せつけ、時代の中でのトレンドリーダーとしての存在を確立して行きます。役柄と私生活の彼女が同一視もされ、今に語られる伝説的女優として名を残しています。

 
 
今年生誕80周年を迎えたBBは、伝説の女優。

この9月28日で80歳を迎えるブリジット・バルドー。スターダムに登りつめて、その重圧に押しつぶされ自滅していった女優が少なくない中、引退後の40年余は動物愛護活動に精力的でますますお元気です。ジャンヌ・モローやカトリーヌ・ドヌーブといった同時代の女優たちは、未だフランス映画界で活躍中ですが、BBは徹底した自分らしい行き方を貫き凛としています。

去る8月21日号『パリ・マッチ』では80歳を迎えるBB特集が組まれ、表紙とグラビア10ページで、30代前半当時を思い起こす写真やインタビュー記事が注目を集めました。想像を絶する数のパパラッチとファンたちに取り囲まれる姿や、“脱いで良し、着て良し”のファッショナブルでフォトジェニックなビジュアルは、今の時代でも新鮮で、彼女を知る人はもちろん、知らなかった人をも釘づけにします。

DVD『セシルの歓び』より© 1967 STUDIOCANAL 
DVD『セシルの歓び』より© 1967 STUDIOCANAL 
 
 
なぜ、今の時代にファッション・アイコンなのか?

日本ではここ数年の間に、過去の映画に登場するBBスタイルに憧れるという、ミューズ・フリークの女子が増殖、お気に入りの伝説的スターとしてはダントツの座を確保しているというのですから驚きです。ファッション・アイコンとしてのBBがなぜ、そんなに今の時代の女子の気持ちを惹きつけるのか?

もちろん、スーパーモデルも顔負けのみごとな美ボディの持ち主で、今の時代にも色褪せない輝くようないでたちですから、カッコいいの一言。が、それは彼女自身も言うように、服を着こなすにしても、女として輝けるのも、肝心なことは中身であるということに秘密がありそうです。それまでの大スターたちとは違って、有名になっても、宝石や装飾、豪華絢爛なことを嫌ったBBは、ナチュラル・ビューティーが自分らしいと、いつもシンプルなことをめざしました。

「自分にとっての宝石は髪の毛や肉体であり、お金で変えるものに価値などない」という言葉を残しているくらいですから、精神もカッコいい。

このあたりが、今の時代にも通じる斬新なセンスの持ち主だから、風化しない存在なのでしょう。
愛される、その理由をそんな風に模索するうち、私は彼女が赤裸々に語った女優時代の生き方や考え方を、言葉集として1冊にまとめてみたくなりました。それが、『ブリジット・バルドー女を極める60の言葉』です。彼女の生き方のスタイルブックと言っても良いと思います。

『ブリジット・バルドー女を極める60の言葉』髙野てるみ著(PHP文庫) 女優・恋愛・結婚・スタイルの4章だてで、BBの魅力とウイットに溢れた名言が満載。「ミューズというより小悪魔として」女優人生を自由奔放かつ男前に極めた新しい生き方は、今の時代の「女極め」のヒントにもなります。』
『ブリジット・バルドー女を極める60の言葉』髙野てるみ著(PHP文庫 680円(税込み)
女優・恋愛・結婚・スタイルの4章だてで、BBの魅力とウイットに溢れた名言が満載。「ミューズというより小悪魔として」女優人生を自由奔放かつ男前に極めた新しい生き方は、今の時代の「女極め」のヒントにもなります。』
 
映画界に迷い込み、小悪魔的恋多き女優に。

BBの自伝を読むにつけ、一人の女性としての努力と苦悩、女優という職業のために、いかに自分を犠牲にして職務を全うしたか、もっと、言うなら、スターという職業に忠実であろうとしたかにも、心打たれました。

思えば、彼女は裕福な家に生まれ育ち、バレリーナとしての才能を嘱望され、すくすくと育っていた少女でした。それをロジェ・ヴァディムという若い映画監督と恋に落ちたことから、映画界に迷い込むことになったお嬢様。

夫となったバディム監督のデビュー作『素直な悪女』(’56)で、それまでにない女性の生き方を演じ、みごとな裸体を見せつけて、一躍その名前をハリウッドにまで轟かせました。インモラルとも思える自由奔放な主人公の生き方は、男性社会からみると不道徳でも、新しい女性が自由に生きる時代の息吹を予感させるものでした。

そのうえ、役づくりを越え、私生活でも3度の結婚と、俳優のジャン=ルイ・トランティニャンや作曲家セルジュ・ゲンズブールなどなどとの、数え切れないほどのラブ・アフェア華やかなスターでもあったのです。

「全女性の天敵」とまで言われるほどの「小悪魔」女優として名を馳せます。

何しろ、彼女を有名にした『素直な悪女』の撮影中に、共演した俳優のジャン=ルィ・トランティニャンと恋に落ち、結婚は破綻。あれほどに恋焦がれた夫ヴァディムを捨てるのですから大胆不敵。しかし、彼女は「演技に本気になるということは、相手役とも本当に恋をしなくては、良い映画になるわけがない」と、きっぱり!

BBの魅力を詰め込んだ、伝説的映画が『セシルの歓び』

しかも、別れた夫とはその後も映画作りでは仲が良いし、愛するトランティニャンと暮らすうちにも新たな恋に熱中するという奔放な生き様でした。

曰く、「恋をしていないとき、私は醜くなる」。BB最大の純愛は伝説的音楽家のセルジュ・ゲンズブールとの大恋愛。3度目の結婚の夫がいたために、ゲンズブールが彼女に作曲した伝説的名曲『ジュテーム・モア・ノン・プリュ』は、いったんお蔵になってしまいます。その後ゲンズブールの伴侶となった女優で歌手のジェーン・バーキンが世に広めたことは、知る人ぞ知る逸話です。

DVD『セシルの歓び』より© 1967 STUDIOCANAL 
DVD『セシルの歓び』より© 1967 STUDIOCANAL 

さて、そんなBB自身を一番良く描いているかのような恋愛映画が、9月に新しくDVD化された『セシルの歓び』(66)なのです。

シンプルでナチュラルな生き方に幸せ感を求めた素直な彼女が描かれ、おしゃれで秀逸。『ブリジット・バルドー女を極める60の言葉』の最終章でも、BB女優人生の締めくくりを象徴するべき作品として紹介しました。

この作品はバルドーの代表作として知られる『裸でご免なさい』(’56)、『殿方ご免あそばせ』(’57)や『気分を変えてもう一度』(’59)という、小悪魔的お色気たっぷりの、スター、BBのための映画作品とは一線を画しています。

このDVD解説にメッセージを寄せているミュージシャンの高橋幸宏氏も言うように、バルドーの魅力を盛り立てる、彼女のファッション、パリやロンドンの持つ雰囲気、そして流れる音楽が醸し出す60年代中盤の独特の世界を作り上げていてみごとです。

『セシルの歓び』(アイ・ヴィー・シー)4,104円(税込み)
『セシルの歓び』(アイ・ヴィー・シー)4,104円(税込み) クロワッサンWEBにてDVDプレゼントがあります。くわしくはこちら。
 
60年代ファッションや音楽が魅力の映像。

あっけらかんと明るい”お色気もの”とは真逆な、そのアンニュイな空気感がたまらない。今の恋に戸惑い、新しい恋に出会い、二人の男の愛に揺れる危なげな女の心。それを楽しむかのような「女という美しき獣」をBBが演じるからサマになるのです。
原題の意味は、「楽しむ心」、「心ゆくまで楽しむ」というもの。この題名にしてね、と改題させたのもBBご本人だそうです。

モデルのセシルのロンドンでのファッション撮影風景も楽しく、一世を風靡したピエール・カルダンのウエデイングドレスも、裸にまとう純白の毛皮のドレス姿も一見の価値あり。ブーツにミニドレスの着こなしも抜群のBB。

私生活でも、素足で街中や有名レストランへ闊歩することは有名で、この映画でもバイカラーの靴を片手にロンドンを素足で歩くそのカッコいい姿を披露。シンプルの極みは、クルーネックのアンゴラのセーターにヒップハンガーのコーデュロイパンツ姿で、今の時代のスーパーモデルも形無し。肉体の素晴らしさあっての着こなしです。

ディスコのシーンにかかる音楽は前出の高橋氏もカバー曲としてリリースするほどに魅力的で、当時英国ヒットチャート上位に登り詰めた『Do you want to marry me?』(それでも、)僕と結婚したいかい?というアンニュイでニヒルなサウンド。

当時、高校生でしかなかった私には大いに刺激になったものです。

 
今に輝くBBを、もっと知るために。

さらには、お色気路線のBBは、男たちが思い描く小悪魔に過ぎないが、女たちが夢見る自由な生き方や恋の歓びが本音で描かれたBBのための作品が『セシルの歓び』である、そう言っても過言ではないのです。というわけで、BBにまつわる逸話は枚挙に暇がなく、今回はこのへんにて終了とさせていただきますが、ぜひ、著書をご高覧いただくか、もっとお聞きになりたいという方にはトーク・イベントもあります。
なんと、この『セシルの歓び』の一晩限りの上映つきのトークイベントもあり、ぜひ、お越しいただき、BBの魅力に目いっぱい悩殺(今や死語!?)されてみてください。女も惚れるいい女です、BB!

 
 
ブリジット・バルドー  生誕80周年記念トーク・イベント
「セックス・シンボルからファッションアイコンとなった、女優BB」
髙野てるみ(映画プロデユーサー/シネマ・エッセイスト)×中原昌也(作家・ミュージシャン)
 

日時:2014年10月24日(金) 19:30~21:00
会場:代官山 蔦屋書店
東京都渋谷区猿楽町17-15 代官山T-SITE
*代官山蔦屋書店にて下記の対象商品をご購入のお客様 1号館2階 映像フロアにて整理券を配布いたします。(定員 50名)
・『ブリジット・バルドー 女を極める60の言葉』(PHP文庫 680円 税抜み)
・中原昌也さんの著作本
・『セシルの歓び』(IVC 4,140円 税抜み))
主催:代官山 蔦谷書店 
協力:PHP研究所、IVC、巴里映画 
お問い合わせ:代官山蔦谷書店03-3770-2525

ブリジット・バルドー主演『セシルの歓び』上映 +トーク・イベント
髙野てるみ(映画プロデユーサー/シネマ・エッセイスト)×中原昌也(作家・ミュージシャン)

日時:2014年10月30日(木) 19:00~21:00(18:30 開場)
会場:アンスティチュ・フランセ東京 エスパス・イマージュ
東京都新宿区市谷船河原町 15
*入場無料
上映後トークとなります。
主催:IVC、巴里映画 
協力:アンステイチユ・フランセ東京、PHP研究所 
お問い合わせ:IVC 03-3403-5691