土屋孝元のお洒落奇譚。茶室にて。炉開茶会に出席しました。亭主と正客の問答、これが醍醐味。

(2014.11.29)
炉開茶会お道具図。左から茶碗 李朝御本茶碗、茶杓、茶入れ。濃茶の場合茶入れと呼びます。そして棗。薄茶器とくに棗型を棗と呼び、その他は薄茶器と呼びます。© Takayoshi Tsuchiya
炉開茶会お道具図。左から茶碗 李朝御本茶碗、茶杓、茶入れ。濃茶の場合茶入れと呼びます。そして棗。薄茶器とくに棗型を棗と呼び、その他は薄茶器と呼びます。© Takayoshi Tsuchiya
お茶席でたいへんなのは
正客と末客です。

先日、炉開茶会に出席しました。

いつものように、師匠の茶室にて。2時からということでしたので、少し早めに着くように用意して向かいます。この日は少し人数も多く、6人参加ということです。

お茶席では4人が一般的なことが多いですね、正客(しょうきゃく)、次客、三客、おつめ、または末客。いちばん大変なのは、正客と末客です。正客は主賓で、一番上座に座ります。茶席では本来、正客しか話すことができないので深い知識と会話力が求められます。末客は主に片付けをする役です。

お客が茶室へ入ったら、引戸を少し音を立てて閉めます。これは末客の仕事で、亭主にお客が全員茶室に入りましたという合図なのです。

正客から順に、まずは床の拝見。今日のお軸は高浜虚子の「桐の葉 日にあたりながら落ちにけり」。待合に見立てたギャラリーには、棟方志功の肉筆扇面画 お茶道具の絵。

お茶碗は、濱田庄司か河井寛次郎か、茶入れは黒田辰秋、蓋置きは富本憲吉かと想いをめぐらせます。

小出楢重の墨による裸婦デッサン、松田小平さんの扇面に書いた風の文字、同じく松田小平さんのヌードデッサンの水彩画。

扇面は師匠の好みで軸装されています。色といい、サイズといい、いつ見てもセンスのよい いい仕事です。

この日の軸。棟方志功作原画扇面を軸に仕立てたもの。お道具は民芸運動の作家のものかと思いを巡らせます。 © Takayoshi Tsuchiya
この日の軸。棟方志功作原画扇面を軸に仕立てたもの。お道具は民芸運動の作家のものかと思いを巡らせます。 © Takayoshi Tsuchiya
 

この後、食事が用意され、梨の入った白和えサラダ風、鴨葱の焼き物、帆立、中華風の餡掛け団子、中には栗の渋皮煮が入っていました。……などなど、お酒は金沢の冷酒を南部鉄瓶の銚子でいただきます。

茶室に戻り、正客以下全員が席に着くと亭主が水屋からにじり出て、一礼、濃茶の場合は、これは客も全員総礼をする決まりです。

茶会の時の御膳とお皿。このお皿で出された料理を各自盛り分け汚さずに食べます。© Takayoshi Tsuchiya
茶会の時の御膳とお皿。このお皿で出された料理を各自盛り分け汚さずに食べます。© Takayoshi Tsuchiya
お濃茶、そして薄茶。

次に生菓子(おもがし)お菓子が出てきます。濃茶の場合は客全員でお菓子を食べる決まりです。全員に行き渡るまで待ち、正客が声をかけ、「それではいただきましょう。」の一声で客全員が食べはじめます。

その間にも亭主は濃茶の作法に従い、袱紗の四方さばき、茶入れの手入れ、茶入れから濃茶を回し出し、濃茶を人数分練ります。人数が多いと この練りは以外と難しく、固まり過ぎても、薄過ぎてもいけないので緊張する場面です。

濃茶が練り終わると正客から順に自分の分だけを飲み、お茶碗を清めて次の客へ手渡しで回します。濃茶の場合は熱いうちに全員に回したいので急ぎます。自分の飲み口を濡れ茶巾で清め次へ手渡しで送ります。この時にお茶碗を送った客は送り礼で送り、これを末客まで回し、末客がのみ終わるのを見て正客は「お茶碗の拝見を。」と声をかけます。

それを聞いた末客の様子を見て亭主が「清めましょうか。」と言ってお茶碗を清めてから末客に渡し、それを末客が正客へ回します。正客は清めて綺麗になったお茶碗を拝見し、客は順に拝見をしていき、末客まで回ると亭主に返します。亭主は濃茶のおしまいの所作に入り、正客が「どうぞおしまいください」と声をかけ、続き薄の準備に入ります。亭主は水屋に戻り茶碗、薄茶器(棗)、を持って茶室に戻ります。

亭主と正客の問答。
これが茶会の醍醐味でしょうか?

続いて薄の所作に入り、棗を清めます。茶碗に茶杓にて薄茶を入れ茶筅にて薄茶を点て正客に出します。正客は亭主と問答をしたりします、これは正客だけの特権ですね。次々に客が薄茶を飲み薄茶の点前が終わります。正客は亭主にお道具の拝見を請い、亭主は拝見の準備をして正客に出します。順に拝見をして末客がお道具を亭主に戻して自席に戻ります。

正客は亭主とお道具の問答をして今日のしつらえの狙いや意味を探ります。これが茶会の醍醐味でしょうか? 亭主が何を目的に茶会を開いたのか? などお道具との関係性などを探るのが楽しみです。

お茶会では、正客が亭主に招待され その場にふさわしい人を選び当日参加します。事前に手紙を出して返事を返したり正客には正客の事前の準備があります。

大人の遊びですね。

たまにはこういう茶会や茶事なども面白いと思うのですが、いかがでしょう。