女性のための、元気になれる俳句42 選・如月美樹 恋猫の恋する猫で押し通す 永田耕衣

(2009.03.16)
 

 初めて猫を飼ったときは、発情というものを知らずに、ふだんと違うあの騒々しい声にただただ驚き、気が狂ってしまったとしか思えなかった。動物病院に連れていったら、獣医に大笑いされた。
 春は猫たちの恋の季節。発情ではなく「猫の恋」と言ったら、同じことでも急に風情があるように感じられてくる。この句の場合、季語は「恋猫」。ロマンティックにとらえられがちだが、じつはとても野性味のある季語だ。
 何が何でも今は恋をするのよ、と、本能に従い、押し通す春の動物に、理屈抜きに圧倒される。私達も、本能の声に耳を傾けてみようか。掲句初出『驢鳴集』(1952)。