アートニュース Fromミュージアムカフェ – 28 - 国立新美術館『光 松本陽子/野口里佳』では、二人の女性作家が表現する「光」の世界が堪能できます。

(2009.10.01)

「光」というタイトルのもとに、ふたりのアーティスト、松本陽子さんと野口里佳さんによる展覧会。松本さんは絵画、野口さんは写真と異なる表現方法ですが、どちらも光がその作品の重要なテーマのひとつであるという共通点があります。今回はそれぞれの個展を楽しむ構成で、絵画と写真という両面から「光」というキーワードに迫ります。

野口里佳『太陽』展示風景、「第55回カーネギーインターナショナル」(カーネギー美術館 、ピッツバーグ、2008-2009年)

写真家の野口里佳さんは『フジヤマ』などの完成度の高い連作で、早くから注目を集めていた現代作家のひとり。独自のフラットな光と色彩から生まれる作品は、一貫したテーマに実直に向き合う作家の姿勢が伝わってくるものばかり。国際的にも高い評価を受けていて、現在はベルリンを拠点に活動されています。

大規模な個展は2004年の原美術館での展覧会『飛ぶ夢を見た』以来5年ぶり。ここ10年ほどの主だった連作を網羅した約100点を展示しています。なかでも「太陽」シリーズなど、光というキーワードがダイレクトに表現されているものが多いのも特徴的です。また、めずらしい映像作品も展示。この作品はアーティスト・島袋道浩さんとの共同制作。光と時間というシンプルな表現が不思議な映像となって映し出されています。野口さんの近年の作品を一気に楽しめ、また白と黒の印象的な空間でその世界観が一層輝いている構成になっています。
抽象画を制作する松本陽子さんは1936年生まれ。1980年代から1990年代にかけて、ピンクを主調色とした独自の抽象絵画のスタイルを完成させました。本展でも、その淡く透明感のあるピンクの作品が並んでいます。しかし、作品のサイズは大きいものばかりで、繊細な中にもダイナミックさがある作風。それぞれに付いているタイトルに注目しながら観賞するのもおもしろいですよ。

そしてもうひとつのシリーズは、2005年から始められた緑の絵画。瑞々しい空間性があり、神秘的な色の魔術に虜になるような作品です。1960年代末に滞在したアメリカ合衆国でアクリリック(アクリル絵具)に出会い、新しい絵画の可能性を認識したという松本さんのシンプルだけれど強いメッセージ性のある約50点が展示されています。

今回、松本さんと野口さんはこの展覧会で初めて顔を合わせたといいます。これまで同じ展覧会に出品することはなく、活躍する分野も世代も異なります。こういったはじめての出会いを体感できるというのも、とても貴重な機会といえるでしょう。

写真はクリックで拡大します 松本陽子 『光は荒野のなかに拡散しているⅡ』 1993年、アクリリック/カンヴァス、188 x 273cm、愛知県美術館蔵、写真:御澤徹、ヒノギャラリー協力
松本陽子『光は地平に輝いている』2008年、油彩/カンヴァス、193 x 259cm、写真:山本糾、ヒノギャラリー協力
野口里佳『飛ぶ夢を見た2 #1』2009年、Cプリント、125×187.5cm、ギャラリー小柳協力

 

『光 松本陽子/野口里佳』

期日:2009年8月19日(木)~10月19日(月)
会場:東京・国立新美術館
料金:1,000円(一般)ほか
問い合わせ:ハローダイヤル 03-5777-8600
http://www.nact.jp/