籾山由美の東京-島根 小さな暮らしただいま島根。
遺跡で花摘み、手軽に気分転換。

(2013.04.11)

探し出す。
松江はおもしろい。

今、松江は桜吹雪とひわ色の葉桜でとても美しい景色です。歩けば桜の花びらが顔をかすめ、エナメルの黒の靴に乗る。ほ~と深いため息がでる。思いのほか島根に長逗留の私は桜を見て菅原道真の「東風吹かば 匂ひおこせよ梅の花 あるじなしとて春な忘れそ」な心境。歌は桜でなく梅ですが。不肖籾山、少し島根の生活に飽きて来たのであります。東京みたいに簡単にウインドウショッピングもできない。あ~あ。刺激が少ないとは言うものの松江は松江、東京ではない。くさっていても仕方がない、少し考える。そうだ、古墳! 実家ならではの立地。歩いて10分くらいで到着する古墳が何箇所かあるのを思い出した。近くにあり過ぎてちゃんと観ていない。ならば今から古墳巡りだ、いいね。いきなり気分が盛り上がる。今日は突き抜けそうな青空。何気に日焼けも気になるお年頃。で、近い所ながら紫外線予防のクリームをタップリ塗る。古墳を目指して散歩だ。

しかし最初の遺跡の古墳に着いた途端、足下に楚々と咲く野の花が目についてしまった。今では珍しくなった七星てんとう虫もいる。気がついたら行く先々で野の草を夢中で摘んでいる。古墳で散歩じゃなかったのか? すぐに水に浸けないと野の草は特に水が下がりやすく萎れるのが早い。後も先も考えていないな。遺跡2カ所目でもう両手から溢れるほど野の草を持ち、遺跡の脇に立っている私でありました。ヘッドラインの写真は田和山遺跡公園(たわやまいせきこうえん)の一部。 (BGM  ムソルグスキー『展覧会の絵 カタコーム』)

罰当たりな気もする
ワラビ採り。

最初に辿り着いた乃木二子塚古墳(にぎふたごづかこふん)で摘んだツクシ、スギナ、ワラビです。ツクシもワラビも山菜として子供の頃食べていました。ツクシは頭とハカマを取り、湯がいてから醤油で味をつけます。ワラビも写真のようにコゴミの時に摘み、湯がいてアクをとってから醤油で佃煮にします。2種類とも春の食卓を賑やかにする貴重なおかずでした。ツクシは古墳の裾側の日当りの良い所で、ワラビは一番盛り上がったてっぺんに群生することがわかりました。今、摘み時です。誰が摘むのでしょうね。(笑)

気がつかない間にツクシはほぼスギナに変わっていました。摘み時を外して大失敗。

歴史を勉強しながらの散歩のはずが。

ワラビを摘んだ古墳、乃木二子塚古墳。昭和57年6月18日に県史跡として指定されています。全長36mで出雲地方では比較的大きな前方後方墳だそうです。実家より徒歩約4分。立ち入り禁止の札を探しても見つからないのでまず周りを一周。北側のくびれ部分からは6世紀ぐらいの物も出土したらしい。説明の看板にそのように書いてある。ふむふむ。しかし山になっているトップ部分に上がったところでワラビを発見。この時点で歴史の勉強はどこへやら。ワラビ探しが目的となってしまいました。


見た目にはただの小さな丘にしか見えない場所ですが、考古学の方にはわかる何かがあるのでしょうね。

  

遺跡を辿りながら花を見つける。

2カ所目の遺跡で見つけた春の野花です。遺跡巡りの低い階段を一段上がるたびに脇の草が気になります。目立つのが黄色がウマノアシガタ。キツネノボタンに似ていますがキツネノボタンより葉と花の間の茎が長く茎が細いので見分けがつきます。紫色がホトケノザ。この野草も家の石垣の角や道路の路肩などにも咲くタフな花です。白い花はミミナグサ。本当に目立たず地味な花。でもかたまって白い花が咲くと足下に雲がかかったようにも思え、雲を踏む大入道になった気分(笑)。見つける事が楽しみな野の花のひとつですね。


遺跡で摘んだからといって特別な意味を持つ花ではありません。どこにでも咲く花です。できたら気がついて欲しいですね。
田和山遺跡は国指定だった。

行ってびっくり。なんと実測面積16173.33平方メートルの田和山遺跡は国指定史跡。古墳と思い込んでいたけれどそうではなくて弥生時代の環濠集落跡だった。環濠集落とは堀で囲った境界線、集落の防御と拠点を意味を意味するらしい。もともとこの場所は新しい松江市立病院の移転先として決まっていました。でも遺跡がやっぱり出て来ちゃった……。そこで病院建設は隣接地に急遽変更。文字で書くとたいした事はありませんが実際は松江市中が蜂の巣をつついたような大騒ぎ。ちょっとこの騒ぎ、見聞きするだけでも面白かったですね。関係者さんごめんなさい、へそ曲がり者で。

田和山遺跡 


写真向かって右は復元の竪穴住居。他にも違う形式で2棟あります。山あり谷ありのこの場所からつぶて石など遺物多数出土。
遺跡の住居跡とおままごと。

草を摘もうとしたら根付きで抜けた野の草をよせ鉢風にまとめてみました。2カ所の遺跡で採取。竪穴住居跡は、おままごとで遊ぶためにカマドや火鉢に見立てて草の生えない固い土を掘った様子と良く似ています。子供時代のおままごとでは地味な野の草は食卓のご飯やおかずになります。中でもスミレなど花実が派手な草花を特別扱い。花火のように散るカヤツリグサの仲間は当然ふりかけ。細長い穂のシバはネギやタクワン、スミレはお寿司の豪華な具。カマドを作った後、これらの野の草の奪い合いが常。お互い譲らず特別な草花がボロボロに。それでもワーワー泣き止まない子供時代の世界でありました。


何も無い古代に、周りにある物での工夫や技術がすごいなと思います。そんな工夫を子供はすんなり思いつき遊ぶのでしょうね。