「北京の秋」そう呼ばれるほどに、北京は秋が最も美しい季節とされています。しかしながら1年で最も美しく気持ち良くも、最も短い季節でもあり、皆、つかの間の心地よさを思い思いに楽しむ季節です。日本と同じく、北京でも秋はデザインウィーク等、カルチャー的な盛り上がりも見せる季節となっており、そんなとき、心躍る嬉しいお誘いを頂きました。昨年ご紹介した北京の家具・雑貨店『Lost & Found』のオーナーが、松本の木工作家・井藤昌志さんと吉祥寺の人気雑貨店『Roundabout／OUTBOUND』の店主・小林和人さんを北京にお招きし、展示会とトークイベントをされるというのです。

きっとご存知の方も多いかと思いますので、詳しいご紹介は割愛させて頂きますが、お二人とも私にとっては憧れのお二人。井藤さんのシェーカーボックスは青山のArts & Scienceで拝見してから、ずっと買いたいと思っていた作品ですし、小林さんのお店には、中国に赴任する前、吉祥寺に住んでいたころ（特にカフェのFloor! に。）何度か伺ったことがあります。

今回は、「Lost & Found」での作品展と、今日美術館での講演会での訪中とのことでしたが、私は数日前に北京入りされたお二人と、北京の街巡りをご一緒させていただくことになりました。憧れの作家さんと店主さんを前に、緊張しながら旅ははじまりを迎えます。今回、まずはそのレポートから。

北京観光と聞いて、真っ先に思いつくのは、天安門に故宮、万里の長城といったところでしょうか。けれどお二人ともそんなお決まりの観光地には目もくれず。向かったのは、骨董市場の「報国寺」、庶民の台所「三源里市場」に日用品市場の「金五星」、そして昔ながらの街並みの胡同（フートン）をぶらぶら。おふたりの希望は、北京の暮らしの温度を感じるところへ、というものでした。

ご一緒していて興味深かったのは、おふたりのモノへの眼差しです。生活道具に文具、器、そして瑪瑙の石。私なら何気なく通り過ぎてしまいそうもの、それにを心を寄せ、感触を確かめるように手にとり、しっくり馴染むものを選ばれていたのでしょうか。モノと対峙するような姿が印象的でした。

井藤さんが手に取られたものは、瑪瑙や燭台、ハンガーなど。瑪瑙は、内モンゴルからやってきたもの、手にしっくりくる形や色のものを選ばれていました。小林さんは、骨董ナイフや、昔の定規、ハンガー、手作りの紙など。この紙は、本来は書道の練習用のものとのこと。小林さんは、お店のラッピング等にできるかも、と発想が豊かです。同じものでも、光のあて方によって、ものへ新たな息が吹きかけられる。同行させていただいた私も、とても新鮮で楽しいひとときでした。

またその他にも、食料品市場「三源里市場」にお連れした時には、井藤さんの目が一層輝いていたように思いました（笑）お料理好きの井藤さんは、花椒（ファージャオ）や貝柱の乾物、乾燥棗（なつめ）にドライイチジク、腐乳や豆豉の調味料など、たくさんお買い上げ。食材や調味料にもとても詳しく、いつか井藤さんの食卓を覗いてみたくなるほどでした。

次回は引き続き、お二人が行った展示会と講演会の模様をお伝えしたいと思います。