籾山由美の東京-島根 小さな暮らし散歩で花草摘み。東京にて
手の中に収まる紙ひも篭に活ける。

(2012.05.21)

春と夏の短い間、
季節を感じて。

春も終わりに近づき、夏がやって来る気配です。この時期の植物は夏草へと大きく変化を見せます。路傍の花草も勢いを増し、木々の若葉はつやつやで眩しいほどです。その中でも今の時期でなければ見られない草を摘んで活けてみました。

都会ではその気で探すと季節の草が路端にたくさん見つけられます。若葉が勢いづく中、花が終り不思議な形状となりながら静かに深い緑になる草もあります。都会なのにその気になれば簡単に見つかるのが不思議。中には園芸種が勝手にアスファルトの隙間を狙ってしたたかに生き伸びてもいます。昨年の夏には甲州街道の街路樹の間に里芋を見つけてびっくり。こんなことがあるから季節の節目は見逃せません。これから来る盛夏も楽しみです。目を凝らして探して欲しいですね。楽しいですよ。

今回の花草は2~3週間の春と夏の短い間だけです。流れる季節を感じてもらいたくてアップしました。これも東京の素敵な風景なのです。

活ける器は紙ひもで作った篭です。どれも手のひらに乗る大きさ。この篭の中にはナイロン袋に水を貯めて入れてあります(この手法を落し(おとし)といいます)。これで水の心配はありません。紙ひもは篭をつくるのに手が疲れるほど固くもなく、ほどほどに腰があるので編み上げていくのに苦労がありません。材料としてお勧め。

ただし紙ひもは水に弱いので水替えの時に注意が必要です。ところで今回は花草の紹介を優先しましたので篭の作り方は載せていません。作り方は別の機会にお知らせしますね。

戦か? 植物界の大河ドラマ。

一輪根づくと紫のハナダイコンは群れをなして咲くようになります。紫で被われるとホォと声を出るほど見事。夏が来るーって感じです。中央の白いヒメジョンも今が盛り。ヒメジョンは明治に渡来したらしい花です。似ている花で少し桃色がかった花は同じ仲間ですが実はハルジオンといい区別します。こちらは大正時代に観賞用に日本に入った物が自力で野に咲く花となったとも聞きます。最近は後から渡来したハルジオンが優勢ですね。一緒の場所に咲き並ぶ確率が高くなりました。植物の生き残るしたたかな戦。まるでNHK大河ドラマシリーズのように劇的で印象的なうねりです。

使っているお花 左から紫のハナダイコン、クローバーの葉、フウロソウの仲間、中央のヒメジョン

NHK大河ドラマシリーズ

一番奥の本当に小さな花がフウロソウのグループ。生薬のゲンノショウコも仲間です。
ドレッドヘアかテルテル坊主!

タンポポはまさに残。(残(ざん)とは、その花の時期の終わりを指します)綿毛も大好きです。綿毛のついた丸いタンポポだけを集めて器に水をはり浮かせて楽しむと言う活け込みをされる方もいらっしゃいます。風雅ですね。花のように見えるのはタンポポンのガク。綿毛も好きですがガクだけでも好きなのです。でも、切ったガクは小一時間で縮れて下がってしまいます。私にはテルテル坊主に見えていたのですが、その形状を見てベレーを被ったドレッドへアの人みたいとおっしゃった方がおり大爆笑。今は何度見てもそう見える。笑)ぜひ路端を探して下さい。

使っているお花 左からタンポポの蕾、綿毛とガク、赤の芥子、リュウノヒゲの仲間

タンポポの楽しみ方は数多あり。終わりの終わりまで楽しんで。
緑の重なりが奥深い。

カタバミは今が花の盛り。これから種になりますが、この種が面白い。弾ける直前にさわるとパチパチ音を立てて種が飛びます。それが面白くて群生を見つけては表面をなでて種を弾かせて遊んでいました。昔は茶色の葉のカタバミがほとんどでしたが今は緑色のタイプばかり。植物の大いなる源平合戦の結果でしょうか?ぺんぺん草はナズナの同義語です。でも年々大形化していて、固そうでちょっと食べたくないかも。花より団子。

使っているお花 左から、大きめの葉はタデ、黄色のカタバミ、芥子の葉と蕾、ぺんぺん草

花が無くても華のある緑が素敵。種類の違う葉が重なる事で緑色の深みが増します。
夏のお知らせ、シランの花

赤紫のシランは空き地の群生から一輪失敬。葉は幅広で長さ40㎝ははあり葉脈がまっすぐです。それに沿って裂くと細長く切れます。活け込むのに幅が広過ぎると裂いて活けます。鋏いらずで便利です。ひょいと伸びているのは芥子の花が終わった実。芥子は蕾のときは頭を垂れているのに花が咲き始めるとシャキンと上を向きます。花が終わってもそのまま。まっすぐのまま風に揺れているのがまた優雅。隣り合った実同士がよく絡まないなと感心します。

左から赤紫のシラン、芥子の実、一番奥は名前知らず

夏が来る目安になる花の一つがシラン。渓流遊びができる前触れです。田舎ではワクワクのイベント。