籾山由美の東京-島根 小さな暮らし花摘みで道草、島根から。
秋の彩りを活けてみましょう。

(2012.10.22)

気ぜわしくなる秋。それでも楽しむ。

つい昨日まで夏だったのにもうずっと前に終わった感じ。ずんずん秋がやってきます。夏には見なかった彩を見つけるようになって来ました。今年は秋が短い気配です。この短い時間を十分に楽しまなくてはね。まずは夏の名残りの片付けです。咲き残っている朝顔を横目で見ながら来年のために種を探して採取。いつ朝顔の垣根を片づけようかと思案するのですがまだ蕾みが残っていて抜く気になれません。そうそう、ひまわりも種を干さねば。さっさと干さないと次から次に場所がいる。炬燵も出さなきゃいけないし、それなら炬燵布団も今のうちに干さないと。あ、湯たんぽも出していつでも使えるように手前の納戸に入れとかなきゃ。私の田舎は急にグンと冷え込みが始まるのです。これで冷えると大抵風邪ひきさんになります。ああ~あ、あれやこれやでやっぱり秋のカレンダーは早々に埋まっちゃうな。

ところで実家では栗の実のナリドシ。風に吹かれて大きな蒼い毬栗が落ちる。柿の実は落ちるとドンと音を立てるのですが、毬栗はカサッとしなやかに落ちる。忍者のようです。その蒼い毬の栗の実を食べる輩を見つけた。最初はお試しなのか茶色の毬をきれいに開き栗の実を持ち去っていました。子供のいたずらかなと思っていましたがどうも食べている。子供ではない。何者か。美味しかったのか、日増しに毬の口を開く数が増します。茶色の毬栗の栗よりも蒼いのがいいらしい。落ちたばかりの蒼い毬を選んでいる。結構美食家?それにしてもよくもまあ、痛いはずの毬をきれいに剝けるものだ。感心。イタチか狸か。顔が見てみたい。人知れずこっそりやって来て姿を消す様子はこれこそ忍者。お主、何者? (BGM ペンギン・カフェ・オーケストラ)
 

毬栗を剣山代わりに花仕立て。

栗拾いには毬栗から手を守るために手袋があった方が良いですね。軍手がおすすめです。毬をそっと持てるし痛くありません。素手ではかなり痛い目にあいます。本気モードの栗拾いは背中にオイショカゴをしょって、タオルでほっかむり、軍手必須。これに石炭挟みです。石炭挟みで毬栗をひょいひょいカゴに投げ入れます。間違うと頭に毬が……で、タオルのほっかむりが必須なのです。笑)写真では毬を剣山代わりにして花を挿しています。今回は一つですが、いくつか毬を盛ると花が留り活けやすいですね。器は三段重ねのおかず入れで焼き物の蓋付き。曾ババの代からの現役ですが惜しくも母が蓋を割ったようです。アチャ……。

花材 イガ栗、ルコウ草

落ちた蒼い毬も日に日に茶色になっていきます。それも楽しいですね。
小さな水溜でとっさのおもてなし。

母所有、お習字用の水入れをちょいと拝借。手のひらにのる大きさが無造作に活け込めておもしろいですね。小さければ小さいなりに難しさがあるのですがこの水入れは不思議と苦がありません。なんでもこいです。こういう器はできるだけ見つけておくといいでしょう。突然のお客様のとき、ベランダや庭先の雑草の一枝でいいのです。挿せば上等なおもてなし。普段の設えとして心に留めておくと活躍してくれます。

花材 ニラの花、ミント系ハーブ

鉄瓶のような水差しはどんな花も拒みません
渋めを心がけて活けると秋気分。

器はガラスの藍ぷの一部です。どうも田舎でハーブ油を焚くのが流行ったときの残骸。元の形ではありません。でも花器にすると床の間でも飾れる格調高い器になりました。すてたもんじゃありません。捨てるのを忘れていた母に感謝ですね。雑に放っときっぱなしの方が時間の流れとともに朽ちていき、味のある物になるように思います。捨てようと思うなら今までの感謝の気持ちを込めて一度は花を挿し、花が朽ちてから捨てることに決めました。なんとなく更に捨てられなくなったりして……うう、まずい。

花材 ヤマブドウ、名前わからずの花

道や空き地で生える植物は園芸種が交配したものもあり、名前がどうしてもわからないことが多くて困ります。
日本の秋の風景のひとつ、コスモス。

ゴッホの絵画 ひまわりを思いながらキバナコスモスを活けています。コスモスの原産地はメキシコ。はじめてキバナコスモスを見たときの衝撃は忘れられません。コスモスと言うにはあまりにもギャップの激しい鮮やかなオレンジ色だったのです。このキバナコスモスの改良は日本の園芸家によるものです。キバナコスモスを見た時、何かわからないモノが心に激しくノックしてきました。ドンドンドンって感じ。ゴッホのひまわりを見たときもそうでした。コラージュのようにいろいろな気持ちが自分の中で交錯します。キバナコスモスを見つけたらぜひ活けて見て下さい。

花材 キバナコスモス、クロモジの実

コスモスは日本原産ではないにもかかわらず風情が好みにあったのでしょう。誰しも日本の秋を浮かべます。