光隠居とミヤビちゃんのちょっと聞けない日本の雅 -日本の常識 - 〜その6 封筒の中身〜

(2010.02.02)

月桜町の正月2日の昼時、白川 光 翁の和室では、端正に座った「ご隠居」と床の間に積まれている お年賀 が気になるミヤビが、封筒の中身が大人の気持と心だと聞かされて、妙に納得していた。

ミヤビ(以下 ミ) 御隠居!

光隠居(以下 光) なんか、少しお腹がすいたわ……。甘いもの無いの? 

 おうおう、その床の間の右端に、四角い包み紙に包まれた箱があるじゃろ。それを持ってきてご覧。 
 ラッキー! 早く云ってよ~。何が入っているのかな~…… 

ニコニコのミヤビ。

 食い物の気配は隠せんの~……。相変わらず、食いしん坊じゃな。 

 ここにも印刷の水引が掛っている~。何んか書いてある……「お年賀」「鶴田恭子」これってどういう意味? 「鶴田恭子」って、町内会の役員をしているあの五月蝿いおばさんでしょ? 

 これ! 書道教室の生徒さんじゃ!滅多な事を云うものじゃない。表書きと言って、どんな理由で誰がこの贈り物を持ってきたのか分かる様、水引の上下で上が理由、下が名前という決まりで書いてあるんだよ。 

 へ~……。じゃあ、さっき貰った「お年玉」にも……。本当だ!上に「お年玉」って書いてあって、下に「光」って書いてある。んっ?「光」だけじゃん! 「白川」は? 

 あ~。苗字を名乗るのは、ご挨拶や改まった時で、お年玉や既に苗字も名前も分かっている間柄なら名前だけの方が、親しみがある。その包み紙の隣に、上に「内」下に「俊樹、ななこ」と連名で書かれた自棄に大きな包みがあるじゃろ。それは、先月結婚した儂の甥っ子が持ってきた物で、奥さんの名前は平仮名で書いてあるから、優しい感じがするな。 

 女性は平仮名の方が良いの? 

 イメージとして、厳めしく思われるより、優しく思われた方が良いだろ?平仮名で名前を書くと、優しくたおやかで親しみやすく、美しい感じが伝わるんだよ。
 
 今度テストの答案に、平仮名で名前書いてみよ! 

 テストの答案は、大変厳格なものだから、氏名を戸籍通りに書かなきゃダメだ~。
  妙な処で頭が働くな~……。 

目を横にして頭を振る。何か思い出した風情のミヤビ、手をついて上目使い。

 そういえば、「御隠居」! 

 おうおう、改まってなんですか? ミヤビさん? っと少し顎を上げて答える光隠居。

 母が、今度「御隠居」に会ったら聞いて欲しい、っと言っていた事があったわ! 

 ほう。何を聞きたいのかな? 

 「お歳暮」や「お中元」は、どうやって名前を書くの?宅配の伝票だけでいいの?
 
 成程! 得たりじゃ! 

 えなり? 

 それは、ラーメン屋の息子じゃろ!タイムリーじゃという意味です。 

 なんか、野球でもはじめるの?……。 

 

光隠居とミヤビの頓珍漢なおしゃべりは何時までも続く……。

第1章 終わり