土屋孝元のお洒落奇譚。ある日突然、お茶事に招かれたら。
こんな手紙を送ると亭主も一目……。

(2011.11.21)

ファックスもメールも相手に送ったまま。
電話一本で確認できるのに。

福島でのことが、また、ニュースになりました。原発よりある物質が測定されたとか、されないとか。その連絡が半日遅れた。というのです。

ファックスとメールにて報告されたとニュースにはありました。ファックスもメールも相手に送ったまま、確認を取らないで すませてしまうことが最近は多いように思います。電話にて一言、確認を取ればよいのですね、送ったつもり、着いているだろう、が、大変な事態を引き起こしてしまうのです。きちんと被災者の事を考えているのかなと思うこの頃です。

手紙なら書き留めで送り、着いたかどうかの確認を取れば、まあ、間違いはないでしょうか。

前にお話した茶事での手紙ですが、茶事を開こうと思う亭主は、基本的にお客様に何月何日、何処何処で、何時から、との内容の手紙を送ります。

普通に送るのでは、味気ないので茶事の趣向を連想させるように、僕が亭主ならば、茶事の趣向が「雪」と言うテーマであれば「雪うさぎ」の絵柄を案内状に入れ連想させるようにしたりします。

呼ばれた側は、マナーとして、なるべく早く返信を出すのが良いでしょうね。

亭主側は客の人選をしていますから、欠席の場合、次の人を探さなくてはいけないのです。送られた呼ばれる客側としても、ここは趣味の良さやセンスを見せる場面です。

手紙に絵を添えたり、
デジタルフォトを入れたり。

絵が上手い方ならば、季節の絵柄、春、秋の七草など絵にして手紙に添えると喜ばれると思います。僕はこの絵を入れる手紙を送るようにしています。手紙と同じサイズの用紙(鳩居堂特製かな用半紙)を使い毛筆にて絵を描き、水彩や墨にて着彩した絵を手紙の下に重ね絵が少し透けて見えるようにして送ります。この時忘れずに篆刻印などを入れると完成度が上がります。書が上手い方ならば禅語の言葉や歌の一首など書にして書いても良いですね。

私はどうも絵にも書にも自信が無いと言う方でしたら、パソコンに自分で撮影した写真やデータなど取り込んでプリントアウトして送っても良いでしょう。出来たら和紙などにプリントアウト出来ると良いでしょうか。最近はパソコンプリントアウト用の和紙がありますね。

パソコンは苦手ですという方は、返信する封筒を手作りするだけでセンス良く見せる方法が。例えば、気にいっている洋菓子店、パティスリーとかの包装紙をとって置いて、それを使い封筒に仕立てるのです、こうすると世界に一つだけのオリジナル封筒が出来上がります。封筒は伊東屋さんか東急ハンズにて形の気に入ったものを分解してみるとわかりますね。基本形がわかれば、展開図は、それほど難しいものではありません。

フロッタージュ、マーブリング……。
料紙を作ってみましょう。

パソコンも使わず封筒も作らずとも、気に入った包装紙で切り紙細工などはいかがでしょう。マチスのJAZZシリーズを気取ってハサミやカッターで作ると自分なりのモノが出来上がります。絵画の技法的にはフロッタージュとマーブリングという方法もあります、

これはどういうものかと言うと、まずフロッタージュは使いたい雑誌のグラビアページを切り抜き、それに溶剤(揮発性の高いベンジンかオイル)を振りかけます、2、3秒ぐらいおいてから水彩紙をのせて転写する方法です。移した絵柄はピントがボケていい感じになり版画のような味わいで絵とも違う質感です。

マーブリングとは、ヨーロッパにおいてルネサンス期のイタリアで盛んになり現在まで続いている技法です。まず広口のバットを用意して、そこにお水を張ります。次に自分が使いたい色を2、3色垂らし込み、これは墨だけでも可能ですね。次に水面を静かにかき混ぜ模様を作ります、濡らした水彩紙を静かに水面にかぶせるのです、そして注意深く紙を水面より剥がすと、水彩紙の表面には綺麗なマーブル模様が転写されて出来上がりです。

この水彩紙を乾燥させてから、封筒を作るも良し、手紙を書く料紙に使うも良しです。

この料紙というのは日本においては、歌集や写経の時に背景に色や模様を描き、そこに書や歌を書くために作られたモノです。一番素晴らしいと言われる一つは、俵屋宗達が料紙に絵を描き、本阿弥光悦が書を書いたモノなどが有名です。世界的に見ても料紙や手紙の究極の完成形の一つです、これほどの完成度ではなくとも自分なりに工夫して手紙を送れば、お茶事に招いた亭主も一目おくことは間違いないでしょう。

お茶事のあと、お礼状も忘れずに。