土屋孝元のお洒落奇譚。神楽月にかつ丼を思う……。

(2010.11.16)

暑かった夏が終わり、
空気にも晩秋の気配が感じられる銀座にて。
この秋という季節感は人により感じ方が違うのではと思いますが、四季の区分けでは11月は秋に入ります。
今年に限っては、そうではないという方もいらっしゃるでしょうか。

霜月、または神楽月とも呼ばれる、
この季節は木々の紅葉も進み黄色から茶色、赤、オレンジまでの
美しい色で街が化粧を施されます。

緑の残る公園の桜並木の下草に黄色やオレンジ、
赤色に紅葉した木々の葉が散るのを見ると、
本当に美しいコントラストだなと、
僕は写真を撮ることが多くなります。
この時期は、季節が良いからか、
外国人観光客の多さには驚かされますね。

最近の円高なので、
東京では食生活も厳しいようですが……。
見たところ、フランス人、アメリカ人、
ドイツ人、イタリア人、ロシア人などかなと思います。
以前よりは、ヨーロッパ系の人が多く見られる様になりました。

一時期のように、
ある国の人々だけを乗せた観光バスが6、7台着き、
6丁目から新橋近くまで 一杯という事はなくなりましたが……。
つい、さきほども、銀座梅林にて、
隣のカウンターにはアメリカ人? 
ビジネスマンらしき男女と、
アテンドするサラリーマンが
ランチメニューよりとてもリーズナブルな
カツライス(ケイランとお店の人は呼びます)
を頼んでいます。

©Takayoshi Tsuchiya

何とはなしに話を聞いていると、
どうも、ヌードルが気にいった様子で、
付け合せのナポリタンらしきケッチャップパスタに興味があるようです。それが付いたカツライスというわけです。
このナポリタン(ケチャップパスタ)は日本発祥で
イタリア、ナポリにはこのメニューはないようですが、
似たものは別の名前であります。

カツライス(トンカツ)というメニューは
れっきとした日本食で、
先日訪れたタイでも、
人気の日本食レストランの看板メニューになっていました。
元々は明治時代に銀座煉瓦亭が始めた、
ポークカツレツがルーツのようですが、
今はお店によりそれぞれ改良され、
現在のトンカツに進化したようです。

このトンカツに似たものは、
ビーフまたは、ポーク、チキンカツレツ、などありますが、
かつ丼となると日本独自の食文化です。
トンカツと玉ねぎ、半熟かげんの玉子、
出汁と甘辛い砂糖と醤油の味がたまりませんね。
たまに、無性に食べたくなるものです。

僕は東京では、
銀座『梅林』と目黒の『とんき』が好きで出かけます。
あとは普通の蕎麦屋さん、
茅場町『長寿庵』のかつ丼も好きですね。

以前、ハワイにてかつ丼を食べた時に、
日本のモノよりも少し甘いかなと思いました。
醤油の味にもよりますので、なんともいえませんが。
一般的に海外のかつ丼は
甘めです、関東の醤油は少し辛口ですから。

この醤油でも北海道では昆布の入った出汁醤油、
九州では少し甘め、関西では色の薄い白醤油、薄口醤油とか、
秋田はショッツルですね。それぞれ地方により違いがあります、
日本が世界に誇る食文化の一つです。

醤油と並ぶ味の食文化に鰹節があります、
鰹を燻製にして、微生物カツオブシ菌により熟成させる、
世界的に見ても日本独自の出汁の文化です、
鰹節と昆布のコラボレーションは
日本人なら誰でもが、好きになる味でDNAに組み込まれているのでは。

また、昆布にもいろいろとあり、
羅臼とか、利尻とか、真昆布とか、
僕もいろいろと試してみて、
最近は、利尻を出汁に使っています。

何かの本で読んだのですが、
昆布も5cmから、大きくても10cm四方で
充分に出汁が出るようで、それ以上は必要ないと。
これは好みの問題なので、
これが一番ですとは勧められません、が。

鰹節と昆布、醤油、これに味噌ですが、
これは日本人の食の基本ですね。

©Takayoshi Tsuchiya