『ビオトープ』、外苑前で新しいスタート。

(2010.12.13)
真っ白なメタルの棚に、ぎっしりと詰まった北欧ヴィンテージ。こちらはフィンランド・コーナー。イッタラやアラビアが中心。

学芸大学で静かな人気だった北欧ヴィンテージショップ『ビオトープ』が外苑前に移転して、11月29日に新しいスタートを切りました。

オーナーの築地雅人さんは、個人的に趣味でアンティークを中心に雑貨や家具などを買い集めているうちに、それが徐々に仕事になってきて2004年に学芸大学に『ビオトープ』をオープンしました。

「ビオトープという店名は、都市空間の中で失われたものを再現するというニュアンスからなんです。50〜60年代のライフスタイルを今の住空間の中にリモデルして取り入れる提案できたらいいなと思っていました」と築地さん。「最初のころはコアなお客さんが多く、1日来店2、3人という日が続きました。コーヒーを出したり、ビールを出したりして話し込んでました。冷蔵庫やコーヒーマシンも置いてあったんです。商品も最初は少なくて、ゆったりしていましたからね。その後どんどん増えていっちゃったんですけど(笑)」。

「北欧のインテリアで小物が好きなお客さんは日本に3000人くらいしかいないだろうから、こじんまりとやりたいな」と考えて、“知っている人しか来られない”ようなちょっと町外れの小さなお店を選んだのですが、まもなくお客さんがどんどん、特に女性客が増えてきて、商品の量もどんどん増えていきました。

同様に築地さんの興味の範囲も増え、新たな立地で新しいことを試みたいという思いが募り、今度は“知っている人が行きやすい”便利だけどちょっとわかりにくい立地を探して、移転することに決めたました。移転先は外苑前の駅近く。路地を1本入った静かな通りです。

「外苑前、青山界隈って探しているときに空き物件が目立ってたので、あまのじゃく的に今かなあ、と。都心なのにローカル感があって、遠くの人に来てもらいやすい。近所の人にも使ってもらえるといいなと思ってます。10年くらい前によく行ってたお店もあったりしてちょっと懐かしい場所でもあるんです」。

アラビア社のあざらしときつねのオブジェ。70年代ごろのもの。あざらし28,140円、きつね17,640円
アラビア社のカップ&ソーサー、ハックマン社をはじめ、さまざまなカトラリー類。
スウェーデンコーナーには、スティグ・リンドベリのアイテムが山積みに! 贅沢です。

この物件を決めたとき、2フロアあるなら1階は別のお店にしようとひと足先にオープンしたのが『ドワネル』。「ビオトープより広い範囲で、面白いと思えるものを扱おうと思いました」と築地さん。店内には、北欧ヴィンテージや作家さんの食器やオブジェ、掃除道具やいろいろなブラシ、ミラノのデザイナーのアクセサリー、ヴィンテージの布、ビンや缶に入ったフード、そしてワイン……。ジャンルでくくれないさまざまなアイテムが並んでいます。

セレクトのキーワードは“最小単位のプロダクト”。「モノづくり目線で“面白い”ものを集めています。作り手の思いが反映している小さな単位で作られているプロダクトを大切にしたいと思っています。ジャンルを超えた同じ空気感を感じるセレクトを実感できることができます」という築地さんの言葉は、生産国や年代、タイプやデザイン傾向などさまざまなカテゴリーの縛りを超えて、共通の感覚を持てる新しい物選びをしていると言えそうです。「小さい単位でつくるものは安くできないし、贅沢でもあるんでけど、“面白い”ってそういうことかなと考えました。想像力をかき立てるもの、ストーリーのあるものを選んでいきたいと思います」。

『ドワネル』の外観。ドイツや、ベルギーにあるギャラリーや雑貨屋さんをヒントにデザイン。
ワインと雑貨がすっきり仲良く陳列されています。手前はTEMBEAとのコラボで作ったワイントート7,875円。
『ドワネル』は、のんびり陳列(?)。ベルント・フリーベリなどコレクティブルなアイテムが。
『ドワネル』は現行品が中心。おうちの中のお掃除道具もいっぱい。
ラピエールの思想を受け継ぐジュラのフィリップ・ボールナール。
優しい色と薄くて少し変形した風合いが絶妙なオランダ、マッカム社のカップ。

できたばかりの『ビオトープ』は、事務所を兼ねたフロアにしつらえられた正方形のオリジナルの棚に、北欧でよく見かける圧縮陳列で、商品がぎゅぎゅっと詰め込まれています。フィンランドとスウェーデンのヴィンテージが中心。「前回のお店はストックホルムのアンティークショップをイメージしていました、今回はフィンランドのアンティークショップのイメージです。仕切られた圧縮陳列は、お客さんに商品のことを伝えやすくなるうえ、オープンストックで在庫を把握できます。そしてグリッドの中で商品構成やディスプレイを考えるのが、楽しいんです」。

年に6〜8回ヨーロッパに買い付けに出ているという築地さんの興味も、いまスウェーデンからフィンランドへ。「ぱきっとしている……。クリーンで、モダンで、シンプルなものが多い。最近、気分な感じ」とぽつり。2つの国の棚の境界線も、徐々にフィンランドが攻めていくことになりそうです。

では、こちらのお店のキーワードはなんでしょう?

「さて、どうしようかなと思っているところです。キッチンを展示スペースに入れこんで、お客さんに飲み物とか出せるスペースにするのもいいな、とか……。最初からばっちりとはルールや方向性を決めずに、徐々に変えていければいいなと思ってます」。コンセプトも将来も未知数のままスタートした『ビオトープ』。どこへ行くかは、これからのお楽しみです。
 

biotope(ビオトープ)
http://www.biotope.biz/
Tel:03-6447-0581
 
doinel(ドワネル)
http://doinel.net/
Tel:03-3470-5007
営業:13:00〜21:00 水曜定休

東京都港区北青山3-2-9小林ビル1,2F

*『ビオトープ』は2010年内は、アポイント制です。