サインで街が生まれ変わる?
「感じるサイン」ってなんでしょう。

(2013.11.01)

サインといっても、スターの署名を色紙に描いてもらうそれではなく、街角や施設のあちこちに設置してある案内板や矢印の誘導標識など、使う人の便利のために存在する空間の情報コンテンツのこと。緊急を要する体調の折、男女のシルエットを探しまくる時にお世話になる、そうアレです。目立ちすぎてもいけない、どこにあるかわからなくても手遅れになる……そんな存在感です。

なぜそんなサインをいま気にするのかと言えば……。経年変化で老朽化する建物が全国にたくさん増え、これから建て替えか取り壊しか……しかし予算削減の折、簡単に資金を用意できない。そんな状況が増えている中で、サイングラフィックのデザインを一新するだけで、施設が魔法のように甦る実例を教えてもらい、コレは全国の建て替えに悩む人たちの救世主かも、と感じたのです。

ピカピカの新築のニュープロジェクトにも見えたりする、古い建物を別の機能にコンバージョンするリニューアルもあちこちで目にするようになっています。そんな時もサインのチカラが大きく発揮されていることがあります。


『サインの真価……施設に酸素を吹きこみ活性化するデザイン Visual Orchestration Graphics』(六耀社刊、3,990円・税込み)*本書で紹介しているサイングラフィックスは、サインデザイン事務所テイ・グラバーの30年にわたるサインの実例で構成されています。

建物の看板や施設の案内は、そこに記載されている情報が大切であるのは言うまでもありません。しかも、表示されているサインそれ自体が、その空間のテイストを代表するような連動感のあるデザインになっていることで、訪れる人たちの空間体験のレベルがぐーんとアップする演出要素にもなります。機能を満たすだけのサインではもうモノ足りないのです。

映画のストーリーの演出効果にサウンドトラックが観客のエモーションを刺激する役割のような重要さがサインにもあります。サインが空間のサウンドトラックのように、ヴィジュアルなオーケストレーションのグラフィック要素として配置されていること。それが、建物の中を訪問者が歩き進んで行く時間軸上の体験を、より豊かな空間のストーリーに演出してくれます。

そんな観点から、サインの存在を音楽に喩えて、例えば、NHKのEテレで放映の『亀田音楽専門学校』のようにJ-POPをより楽しく編曲しプロデュースする亀田誠治センセにならって、サインのメロディ・リズム・ハーモニーが空間の中でどう生き生きと配置されているか、をまとめる本を編集しました。

次の東京オリンピックで首都の風景は変わっていくんでしょうか。そんなコトを考えながら読み進めていくのも悪くないかもしれません。


『サインの真価……施設に酸素を吹きこみ活性化するデザイン Visual Orchestration Graphics』より。

アクロス福岡の建物の変化とサインのリニューアル。

建て替えられた「日本平ホテル」は富嶽三十六景のたなびく雲もパターンでヴィジュアルイメージを。

公共施設の雰囲気も昔から比べると、ずいぶんとスマートになっています。