土屋孝元のお洒落奇譚。初釜にて……。

(2011.02.04)

お正月を過ぎ、師匠の茶室にて、初釜がありました。
例年恒例なのですが、今年の点心はお茶の稽古の同僚でもある、
銀座古十のBさんが担当するということです。

待合に見立てたギャラリーには、
良寛の書(上手すぎて読めませんでした。「雪裏梅花惟一枝」 )と
熊谷守一のうさぎの絵が掛けてあります。

以前、稽古の時に、彼の作った水羊羹をいただいた事がありました。
なんでも、砂糖には氷砂糖を使い甘さのキレをよくしたのだとか、
本当にスッキリとした後味の水羊羹でした。

お料理はまず 先付け、
イタリアン風なカルパッチョサラダ仕立てのサヨリ、
鯛の昆布締めのお造り、
ルッコラや水菜が効いています。

初釜茶会席 ©Takayoshi Tsuchiya

食べやすく食材が小口切りにされた蕎麦の実入り椀に始まり、
大徳寺と印のある、使いこまれ生地が透けた紅色うるし塗りのお重に詰めた、
吹き寄の煮物や鴨の燻製、甘栗の白餡寄せ、
はんぺんのようなテリーヌ、
柚子釜に入ったイクラ漬け、
鰆西京焼き、
マンリョウの枝も綺麗です、
などなど、食べるのがもったいないくらいの飾り付けです。

箸休めか強肴として豆腐の糟漬け?
これは豆腐蓉に近いモノです。
クリームチーズのような食感で
程よい塩加減、お酒が進みます。

お酒は師匠が毎年頂くという、
あきる野にある造り酒屋さんの濁り酒の発泡酒です。
和製シャンパンの様な感じで、飲み口も爽やかです。
朱うるしの杯(さかずき)が5枚重ねられていて、
全ての杯(さかずき)を一度、自分の膳に取り、
そして一番下のモノを取る これが お茶での作法です。
上から取りそうなのですが、一番下からです。

だいたい、茶席は一組4人で約2時間ぐらいというのが暗黙の決まりですから、
あまりゆっくりとは食べてもいられません。
客同士、目配りしつつ、同時に食べ終え、
お箸を同時に膳に落とします。
この音を聞き、亭主は茶室へと案内して、
客は正客より順に茶室へとにじって入ります。

最初に、床の間の掛け軸を拝見、
この時 床の間の前まで進み、正式にはにじって進むのですが、
能の様にすり足で進み両脚同時に正座します。
茶扇を前に置き、結界を作り 礼をしてから拝見です。
この時、両手は軽く畳に指先をつけながら、
今日の軸は、「白牛眠雪山 」大徳寺の大亀作。
軸を見終わったら、次は水差し前まで移動、
茶扇にて また結界を作り、
水差し、釜の拝見です。
水差しは小川待子作、鋭角的な雪山断崖絶壁の姿の様にも見える、
現代彫刻の様な塊。
釜は天明か芦屋釜か。肌には飾りが無く、質
実剛健なスッキリとしたカタチです。
拝見を終え 各自、席に着きます。

黒楽茶碗。 ©Takayoshi Tsuchiya

亭主より 挨拶があり、薄茶を頂きます。
薄茶器は 故夏目有彦さんの雪輪と杵の文様の棗。
お茶碗は黒楽、道入作とか。ドッシリとした質感。
茶杓は佐村憲一さんの、桂離宮より拝領の灯台躑躅(ドウダンツツジ)か、
桂離宮の何か庭の木を削った珍しい茶杓です。
この桂離宮の件は、共通の友人でもある三好和義氏の撮影で桂離宮と御所へ行った時に宮内庁にお願いして頂いたとか。
これと同じ揃いの茶杓が、以前、大寄せの茶会にて折れたと聞いた事があります。
師匠にも言われますが、茶杓は卵を扱うように清めると、
拭くのではなく清める。
袱紗が茶杓に触れるか触れないかのような扱い方という事ですね。

お茶は知れば知るほど奥深いもので、面白い。
今日の初釜は軸、棗の雪輪文様、雪ずくしの趣向でした。