光隠居とミヤビちゃんのちょっと聞けない日本の雅 -日本の常識 - ~その20 腐草生蛍(においくさほたるをしょうず)~

(2010.07.13)

月桜町は梅雨に向い、普段より輪をかけて落ち着いた風情を醸し出している。
光翁は翁の書斎『隠れ処』で、月桜町の始まりについて話し始めていた。

ミヤビ 月桜町が出来る前、ここは畑や田圃だったの?

 そうだよ。北東と北西を小高いに丘に囲まれて、とても穏やかな田園だったんだ。

ミヤビ ふーん。

 月桜川が真ん中に流れているだろ。あの左右は田圃と畑だった。そこに、この町を創る話が持ち上がったんだ。私が初めてここを訪ねた時は、日本昔話に出てくる田舎のような場所だったんだよ。

ミヤビ 福田さんたちは悲しんだのかな~…。田圃や畑が無くなって…。

 最初は反対されていたようだ。しかし、この土地に沢山の人が来てくれたなら、きっと喜んでくださると思い直し、積極的に街づくりに参加くださった。町が出来たなら、農地が農薬で汚染され子ども達に悪い影響が出てはならないと考えられて、農薬を使わない農法に切り替えられて、農業を続けていらっしゃる。

ミヤビ へ~。農薬を使わないで農業をするっていうのは、大変なの?

 農薬を使えば、作物を食べられてしまったり枯らしてしまう悪い虫は付かないし、雑草が生えないから草引きをしないで済む。農家にとっては大変ありがたいものだが、その分とても危険なものでもある。

ミヤビ そうなんだ~…。じゃあ、私たちの為に福田さんは大変御苦労されているんだね。

 そうだよ。ミヤビ達が月桜川で魚や蛙をとったり、蛍を追いかけられるのは、福田さんが農薬を使わず、悪い虫を一匹一匹駆除し、毎日毎日想像を絶する労働で草引きをして農薬を使わず、この町を守ってくれているからなんだよ。

ミヤビ あの小父さん、そんなに豪い人だったんだ~。そういえば、小さなひよこ達も連れてきてくれたんだよ。

 合鴨のヒナだな。

ミヤビ アイガモノヒナ?

 アヒルと鴨の合いの子さ。

ミヤビ その合いの子を毎日連れてきてくださってるの。福田さんの後を、ヨチヨチついてきて、とても可愛いんだ。

 それは『合鴨農法』と云って、富山県のお百姓さんが三十年位前から始められたもので、合鴨の習性を使って育て、ヒナが田圃の雑草や害虫を食べてくれるんだよ。合鴨達は、卵から生れた時に一番最初に動くものを親鳥だと思う習性があるんだ。だから、孵化するときに福田さんがその子達の前にいれば、福田さんの後をズットついて行くんだよ。

ミヤビ へぇ~…。だから行列を組んでるみたいにかわいい子たちが並んで歩いてきたんだ~。ところで、あの子たちは大きくなったらどうするの?

 食べちゃうのさ。

ミヤビ 食べちゃう!! そんな酷い事しちゃうの?

 それには理由があるんだよ。

とんだ話を聞き、ミヤビはびっくり仰天。 

 

つづく