神戸のトリトンから、シンプルモダンな木工家具「OVERALL」が誕生。

(2010.09.13)

神戸の『トリトンカフェ』は、心地いい空間のカフェ&ショップ。カフェでのさまざまなイベントやワークショップを開催したり、ヨーロッパで買い付けるブロカントや国内外の作家さんによるアクセや小物などをそろえ、神戸っこだけでなく、全国のファンから愛されて、今年10年を迎えました。

オーナーのひとり松岡賢太郎さんの本業はグラフィックデザイナー(トリトン・グラフィックス)。とはいえ、マルチな才能を持っている松岡さん、『Peep paper』という書籍を企画・編集したり、カフェ・オープン以来発行し続けているフリーペーパー『Billet』(後にリトルプレス)をウェブショップへと転換して数々のオリジナルプロダクトを作ったりしています。

そんな松岡さんが、この秋新たに始めたのが、「OVERALL:オーバーオール」。

家具とインテリアを作る、”住”をデザインするデザインユニットです。

「家具を作りたいなと漠然と思い始めたのは昨年の秋、時間があるときにノートにデッサンを書き始めました」という松岡さん。ノートを見せてもらうと、思いつきとは思えないほど緻密なデッサンが描かれています。
 

松岡さんの手描きデッサン。ほぼこのラフデッサンの通りの家具ができあがった。

 
でも松岡さんはグラフィックデザイナー。さてこのデッサンをどうしたものかと思いながら温めているところに、曵原航(ひきはら・わたる)さんが入社希望者として面接に訪れました。大学院まで行き建築を学んだ曵原さんは、3Dだけでなくグラフィック的な見識も深めたいとトリトンへやってきたのです。松岡さんが彼の自作のワークブックを見た瞬間感じたのは、白場の使い方、レイアウトの仕方など、何も習っていないのに天性のセンスを持っているということ。かくしてトリトンのメンバーとなった曵原さんによって、松岡さんのデッサンは、きちっとした設計図へと生まれ変わりました。

次の問題は、どうやって作るのか? そんなことを考えているときに偶然、『トリトンカフェ』で木工作家・婦木佑太さんの個展が始まりました。学生時代にA4というデザイン集団に属し、独立して神戸・和田岬に工房を構える婦木さんに、新しい家具のプロジェクトの相談を持ちかけると二つ返事で、やろうということになりました。

ふと思いついた家具作りのアイデア、同じ感覚を持つ建築設計者との出会い、賛同してくれる木工作家さんとの出会い……。偶然なのか、こうなると決まっていたのか、松岡さんの構想はわずか10カ月で実際のカタチになったのです。
 

クラスカで開催された展示会。オーバーオールの家具がハコにぴったりとマッチ。
植木を置いている部分には熱い鍋をそのままポンと置けます。
ブナ合板のテーブルトップは使うほどに味が出る、はず。
手前のテーブルのフチに注目。斜めにカットして使い心地もよく。

「普遍的なデザインで飽きがこない。日本の暮らしにも、海外の暮らしにもすっと溶け込む、主張しないプロダクト。これがOVERALLのテーマです」と、松岡さん。

選んだ素材はプライウッド。

「プライウッドといっても、シナ合板じゃなくてブナ合板なんです。グラフィックデザイナーが考える家具ですから、やっぱりデザイン先行の家具になる。思い描いたカタチをきちっと実現するには無垢板よりプライウッドの方が向いているんです。けれど無垢板の風合いは好き……。そこで薄くてやわらかいシナ合板でなく、どっしりと重いけれど表面はまるで無垢板のような風合いのあるブナ合板を使うことにしたんです」。

ふとイスを取って目を輝かせながら説明してくれたことは……。
「このイス、金属(釘)を使わない仕口(しぐち)で作られているんです。古くから日本家屋を建てるときに使われてきた技法で、きれいで強度も高くて、長く使う家具にはぴったりの工法なんです。でも、作るのがたいへん。婦木くんのこだわりも入っています。プライなのにブナ材とか、仕口を使うとか、家具関係の友人からはちょっとおかしいと思われるかも知れないけど、そういうとこまでこだわって作りたかったんです」。

家具以外のインテリア雑貨のラインも同時にスタートしているOVERALL。注目は丹波焼きの窯元「大雅窯(TAIGA-GAMA)」とのコラボレーションでできたランプシェード。日本六古窯の一つである伝統工芸・丹波焼きが、現代の暮らしに見事に調和。松岡さんと窯元さんの作り出す新しい世界のひとつです。

ほかに、丹波焼とトリトン・Billetとのコラボで作られている食器のラインもあります。こちらもオーバーオールと同じく、どんな暮らしにも、どんな食生活にもすっとなじむデザインです。

デザイナーと手仕事の達人の共感と共同作業が、これからのものづくりの新しい世界を作っていくのかもしれません。

Billet×大雅窯のTABLE WARE。大皿の表は釉薬、裏は焼き締め。
Billet×大雅窯のTABLE WARE。コーヒーカップの外側は窯焚きの偶然で金色の輝きが。
大雅窯のオリジナル作品たち。

 

OVERALL:http://www.overall-product.com/
Billet:http://www.billet.jp/
TRITON GRAPHICS:http://www.triton-corp.co.jp/
 

TRITON CAFÉ
Tel. 078 251 1886
神戸市中央区中山手通1-23-16 2F
MAP
営業時間:12:00〜20:00 水曜定休