光隠居とミヤビちゃんのちょっと聞けない日本の雅 -日本の常識 - 〜その4 封筒に付いている紅白の糸「水引」〜

(2010.01.19)

月桜町の正月2日の昼時、白川 光 翁の和室では、端正に座った『ご隠居』とそのご隠居の話に耳を澄ます隣家のミヤビちゃんがいた。

光隠居(以下 光) ミヤビは優しい子供だから、私はいつも驚かされる時があるが、その通りで、水引の色で気持ちを伝えるという発想は、恥ずかしがり屋の日本人ならではの心配りじゃな。  

ミヤビ(以下 ミ) だからその場で見ては『慎み』が無いって事ね。

 頂いた封筒の水引の色で、相手の気持ちを受け取り、中身はそのあとユックリ感謝しながら見るのに限る。ちゃんと頂いて、お礼を言って、そのまま納めたなら、『慎み』深い人なんだなと、相手から好感を持たれる。反対に、その場で開けて中身を斟酌するような事をしたなら、現金な奴だと蔑まれる事になる。

 斟酌?

 相手の心や事情を汲み取るって言う事じゃ。

 ふーん、まあいいや!でも、パパやママがプレゼントとかくれると、直ぐ開けて見よ直ぐ開けて見ろって言うし、テレビとかで誕生日のプレゼントとか、包み紙をビリビリに開けて中身を見て喜んでるじゃない。 
 相手が見て欲しいと言っているなら、構わないだろうよ。後、誕生日のプレゼントで包み紙をビリビリ破いて中身を見るって云う行為は、あれは日本式では無く、アメリカから入ってきた風習だが、その子の為に用意した贈り物が、どの程度喜ばれる物か上げた側も気にはなる。 

 そうなの! この間のクリスマス、サンタさんがくれたプレゼント、プレステ3じゃなくて手袋だったの……。あれ程プレステ3を事前にお願いしてたのに、ガッカリしちゃって、『え~! プレステじゃないの~』って言ったら、ママに叱られた! 折角率直な意見を言ったのにな~。

 ん……そういう時は、ありがとう! って言って、ニッコリ微笑むんだよ! サンタさんが可哀そうだろ~。  

と、チョット呆れ顔の『ご隠居』。
そして相変わらず、我関せずの態なミヤビちゃん。

 印刷の水引で包んでくれたらよかったのに~。さっき『ご隠居』は水引の結び方もあるとか言ってなかった?  

 お~お~。聡い子じゃ! 水引には大きく分けて2つの結び方があるんだ。  

 それ聞かせて! 

 今ミヤビが持っている封筒の水引は『蝶結び』だろ。それは何回も解く事が出来る。幸せが何回も解いては結び解いては結べる様にと云う意味がある。

 ふーん。じゃあ、お年玉は何回も貰えるんだね!

 また現金な事を云いおって! もうひとつは『結び切り』といって、解けない様に結んである物がある。これは、しっかり結んで解けず、二度無いように祈る意味があるんじゃ。例えば結婚式に持ってゆく封筒には、この『結び切り』を持って行って、解けず最後まで縁を結んで下さいと云う祈りを込める。御葬式には、この様な悲しい事が二度と起きないよう『結び切り』を持ってゆく。

 結び方にも心や祈りが入ってるって、日本人かっこよくない?

何やら自慢顔のミヤビちゃんだった。  

つづく