Brooks Brothers × magazineworld.jp ボタンダウンシャツの元祖、ポロカラーシャツ。

(2011.02.21)

 

「ポロ」が起源のボタンダウン、ポロカラーシャツ。

マリリン・モンローやキャンベルスープ缶の版画で知られる、ポップアートの巨匠、アンディ・ウォーホル(Andy Warhol、1928〜87年)。彼が本格的にポップアート作品を生み出し始めてから今年で50年を迎えます。おしゃれにもうるさかったウォーホルがご指名買いし続けたシャツが、『Brooks Brothers(『ブルックス ブラザーズ』)』のポロカラー(ボタンダウン)シャツでした。

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襟先をボタンで留めるスタイルは『ブルックス ブラザーズ』が米国に持ち込み、その後、ボタンダウンシャツとして世界中に広まりました。ボタンダウンシャツの元祖は『ブルックス ブラザーズ』のポロカラーシャツだったのです。

「ポロカラー」という名前が示す通り、英国の上流階級がたしなむスポーツ「ポロ」が起源。プレーヤーが馬に乗り、スティックで球をゴールに入れ合うポロでは、馬上で風を受けて、襟がはためいて邪魔になるのを防ぐために、襟をボタン留めしてあります。

1900年頃、当時の社長だったジョン・E・ブルックスが英国でポロ競技を観戦していた折、選手たちが着ていたシャツの襟を見て、製品化を思いついたそうです。ジョンは創業者ヘンリー・ブルックスの孫に当たります。進取の気性に富んだ創業者のDNAがこの米国服飾史に残る着想を生んだと言えるかも知れません。

このアイデアは単に襟をボタンで留めたというだけではありません。当時のドレスシャツは糊がしっかりきいた堅苦しい仕立てが主流でした。しかし、糊をきかせず、襟が弧を描いてエレガントにロールするポロカラーは、それまでのフォーマル顔のシャツとは全く別テイストの「発明」でした。当初は保守的な男性に眉をひそめられたものの、やがてその真価を認める顧客が増え、ポロカラーシャツは新時代のアメリカンスタンダードとして受け入れられていきました。

作家・村上春樹が翻訳に取り組んでいることでも有名な米国作家スコット・フィッツジェラルド(1896〜1940年)も早くから『ブルックス ブラザーズ』のポロカラーシャツを好んでまとった顧客の1人。「ジャズ・エイジ」といわれた、米国の1920年代を描いた作家で、代表作の小説『華麗なるギャツビー』は74年にロバート・レッドフォード主演で映画化され、リメーク版がレオナルド・ディカプリオ主演で製作準備が始まっています。

ヒッピー文化の聖典的扱いを受けた小説『路上』。その著者であり、ビートニク(ビート・ジェネレーション)を代表する米国作家・詩人のジャック・ケルアック(1922〜69年)もポロカラーシャツを愛用していたそうです。アメリカンクラシックのお手本的イメージを持つ『ブルックス ブラザーズ』と、「ヒッピーの教祖」の組み合わせは意外に感じられるかもしれませんが、伝統的スタイルに安住せず、変化を恐れない姿勢は両者に共通しています。

 

首周りと袖のサイズバリエーション、シルエットの選択肢が充実。

シャツの着心地はシルエットとサイズで決まります。どんなにデザインの優れたシャツでも、身体にしっくり来ないシャツはやがて着なくなってしまいますし、無理に着てもどこか奇妙に見えてしまい、かえってイメージダウンになりかねません。つまり、日本人に合ったフォルムの品揃えが十分にある上、見立てやアドバイスで助けてくれるショップスタッフがいるところで買わないと、最良のシャツは選べないという事になります。

首周りと袖のサイズバリエーション、シルエットの選択肢が充実していて、体型にフィットするシャツが選びやすい『ブルックス ブラザーズ』では、まるであつらえたような着心地のシャツにめぐり会えます。シャツのフィット感にどうも納得できないと感じている人にこそ、足を運んでほしいショップです。もちろん、オーダーメイドも用意されています。

ドレスシャツは身体とスーツの間でスムーズに動いて、動作を妨げないことが求められます。『ブルックス ブラザーズ』のシャツはゆったりめのトラディショナルフィットや細身のスリムフィットなどのシルエットが用意されているので、着る人を選びません。自分の首・肩周りの寸法を正確に知らない人も少なくありませんが、着崩れにくいシャツを選ぶには、ショップできちんとサイズを測ってもらって、ジャストフィットのシャツをスタッフと一緒に選ぶようにしたいものです。

ただ、首周りを測ってもらうだけでは実は十分ではありません。なぜなら、実寸通りのシャツを選ぶと、窮屈に感じてしまいがちだからです。シャツのサイズは本人のネックサイズに指1本半ぐらいのゆとりがあるのが望ましいといわれます。『ブルックス ブラザーズ』ではシャツの知識に富むスタッフから、こういった助言を受けて、本当に合うシャツが選べます。試着時の着心地だけに頼って、自分1人で選ぶと、衿元がぶかぶかしたり、逆にきつすぎるシャツを買ってしまうことがあるので、スタッフに見栄えをチェックしてもらうのは大事です。

 
細部まで作り込まれている『ブルックス ブラザーズ』のシャツには、知らないと見逃してしまいそうな気配りも秘められています。例えば、腕時計に当たらないように、袖のカフス部分をゆったり仕立ててあるのは、その1つと言えます。「理由は分からないが、何だか着心地がいい」と感じるのは、実はちゃんと理由があるのです。

 

オプラ・ウィンフリーが「ミラクルシャツ」と絶賛。

手洗いして干しておくだけで済み、アイロンがけの要らない「ノンアイロンドレスシャツ」も『ブルックス ブラザーズ』らしい「発明」の1つと言えるでしょう。米国で最も人気の高いテレビトークショーが「オプラ・ウィンフリー・ショー」。この番組中で、司会のオプラ・ウィンフリーは『ブルックス ブラザーズ』のノンアイロン シャツを「ミラクルシャツ」と絶賛。その翌日、ノンアイロンシャツが爆発的な売り上げを記録したというエピソードもあります。

 
日本でも最近は定着してきた商品ジャンルですが、『ブルックス ブラザーズ』は今から50年以上も昔の1953年から、しわになりにくいシャツを販売していました。当時はポリエステルとコットンの混紡素材で仕立てたシャツ「ウォッシュ・アンド・ウェア」として販売されていましたが、その後、アイロンがけ不要のコットン100%シャツへとさらに進化。オリジナルの加工が施してあるので、着ている間も型崩れやしわを防いでくれて、快適な着心地が長く続くのも、ノンアイロンドレスシャツのうれしい長所です。

 

2010年ごろから世界的にアイビーやプレッピーが復活して、『ブルックス ブラザーズ』のアイテムにもあらためて関心が高まっています。最新トレンドにもなじむ着こなしや、知られざるシャツエピソードを、『ブルックス ブラザーズ』 ジャパン社の商品部で企画MDメンズを長年ご担当されていらっしゃる大平洋一さんにうかがいました。
 

大平洋一 (おおひら・よういち)

『ブルックス ブラザーズ』 ジャパン 商品本部 企画MDメンズ担当

桑沢デザイン研究所でデザインを学び、『原宿キャシディ』でのアルバイトを経て1990年に『『ブルックス ブラザーズ』 ジャパン』に入社。ファッションポリシーはトラディショナルな中に奇をてらわない斬新さ。休日はもっぱら3人の息子と釣りをして過ごす。釣りのほかゴルフも大好き。

 

−米国でボタンダウン・カラーが好まれる理由は何でしょう?

アメリカ人のスピリットに合っているのでしょう。アメリカ人はイギリスとは異なる着こなしを好む傾向があるようで、正統派シャツを好むイギリスとは逆のボタンダウンに、アメリカンスピリットを感じるのではないでしょうか。

「アメリカンカジュアル」という言葉がある通り、アメリカではカジュアルな装いが好まれるところもあります。ボタンダウンはカジュアルルックにもなじむシャツです。そのボタンダウンに一番合うのがサックスーツ。オフスタイルでもベストコーデに仕上がります。

ボタンダウンはカジュアルルックにもなじむシャツ。オンでもオフでも使える点もボタンダウンの使い勝手のよさがアメリカで受けた。

アメリカには実用性や機能性を重んじる気質が強いのです。その点、もともと風にあおられないようにボタンがつけられたボタンダウンは見るからに実用性があり、アメリカ人気質になじみます。オンでもオフでも使える点もボタンダウンの使い勝手のよさ。そういうところもアメリカで広く受け入れられた下地になったのかも知れません。
 

−日本ではボタンダウンを着ない人も結構います。どうして食わず嫌いの人が多いのでしょうか?

ボタンダウンにカジュアルのイメージが強いのでしょう。休日スタイルのアイテムだと思い込んでいる人が多いかも知れません。でも、実はそうではありません。オンでもオフでも着方次第でいろいろな風に着こなしを楽しめるシャツです。

 

−ボタンダウンはオフィスではふさわしくないという誤解が日本ではあるようですが、実際はいかがでしょうか? オフィスでの上手な着方を教えてください。

カッチリとはしていなくても、小ざっぱりした格好はオフィスにもアリだと思います。例えば、『ブルックス ブラザーズ』でもノンアイロンシャツが主力になってきています。きちんとしたスーツスタイルじゃないといけないという発想は最近では薄れてきつつあり、時代遅れの感じすらします。

ボタンダウンのシャツにもカーディガンやベストで合わせると、小綺麗でおしゃれな雰囲気に仕上がるから、オフィスにも向きそうです。決して砕けたカジュアルな雰囲気にはならないと思います。

オフィスルックはきれいめに着こなすことを心がけてほしいと思います。逆に、正統派のカッチリしたスタイルだと、退屈な感じがするので、多少遊びがあってもいいかも知れません。

年配の方は「ボタンダウン=若々しい」というイメージを持っておいでのようですが、ちょっと控えめながら気の利いたおしゃれな人に見える効果もあるので、幅広い年齢層が取り入れやすいアイテムです。実際、『ブルックス ブラザーズ』の顧客にはそういったコーデを好む方がたくさんおいでです。

ポロカラー・シャツにはスポーティーな雰囲気のネクタイが好相性。ニットタイも合わせやすい。

ジャケットは3つボタンのサックスーツで合わせるのが一番間違いのない着こなしです。ナチュラルショルダーの2つボタンジャケットで合わせるのもアリですが、一番はずさないのは3つボタンジャケットです。シャツの素材は白いオックスフォードが一番合い、着こなしの応用範囲も広がります。逆に、ボタンダウンをオフっぽく着こなすなら、カーキのチノやジーンズなどと合わせるとよいでしょう。

 

−ボタンダウンに合わせやすいネクタイはどのようなものでしょうか?

スポーティーな印象の物が合わせやすいと思います。一番はストライプタイです。プリントタイでも合いますが、スポーティーな雰囲気のものが好相性です。ニットタイも合わせやすいですね。
 

−アイビースタイルをリバイバルする動きが出ていますが、これは、今までのアイビーとどのように違うのでしょうか?

最近のアイビーは決まり切った着こなしだけでなく、自己流に着崩す人が多くなってきたようです。本を参考に、意識的にずらすスタイリングが好まれている感じです。昔は情報が少なかったので、少ない情報の中から真似していましたけど、今は情報社会。いろいろなところから情報を仕入れた上で、型にはまらず、自己流で着崩す人が多くなってきました。むしろ、上手にはずすことがおしゃれと考える時代になってきているようです。
 

−アイビー、プレッピーの着こなしのコツ、注目のアイテムはどのようなものでしょうか?

コンパクトな着こなしを意識すると良いでしょう。例えば、パンツの裾をロールアップしたり、全体をタイトめに着たりという感じです。シャツも幅をコンパクトに、着丈を少し短めで着たり。大きめでダボッと着るのは、今は野暮ったいイメージがあります。

アイビー、プレッピーも自己流にアレンジを加えたり、テイストをミックスしている人が増えてきました。軍用 ジャケットや軍パンで合わせ、アイビー、プレッピーにミリタリーを取り入れるスタイリングも見掛けるようになりました。マウンテンパーカーやダウンベストで合わせ、アウトドア感覚を取り入れるような、昔とは違った着こなしが面白いですね。
 

アメリカンクラシックの本道を歩みつつ、装いのルールを書き換えるような冒険を恐れない『ブルックス ブラザーズ』。ビジネスでもプライベートでも、これまでの常識が日々、変わるような動きのめまぐるしい現代にあって、軸がぶれず、それでいて保守一辺倒ではないそのスタンスは一段と頼もしく映ります。

 

 

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