籾山由美の東京-島根 小さな暮らしゆっくり動く時間を贅沢に使って
和紙の花器作り。

(2011.07.13)

手すき和紙。素材の特徴をいかして工作してみましょう。

今、島根に帰省中。とても静かでゆっくり時間が過ぎます。そこで、作り方は簡単だけれどゆっくりとした時間をたっぷり使う工作をしてみました。

材料は地元で作る手すきの和紙、出雲民藝紙を使いました。紙ならなんでも良かったのですがこの和紙を使ったのは、家業を継いで和紙を作っている高校時代の同級生がいるからです。軽く声をかけ、和紙を工房まで買いに行きました。軽い話のはずが、よくよく聞くと爺様(ジサマ:出雲弁です。ちなみにおばあさんは、婆様、バサマと呼びます。)が重要無形文化財、つまり人間国宝だった! そんな家業をお兄さんと継いでいるなんてまったく知らず。両親が共に働くサラリーマンの家庭に育った私にはかなりの驚きでした。家を継ぐと言う事をあらためて考える訪問ともなりました。

和紙は洋紙より簡単に水を吸い、柔らかくなってくれます。貼り付けたとき、無理なく角を丸くできるところが気に入っています。手で千切ると繊維がはっきりと見えます。違う色を重ねて貼ると下の色が出て、深みのある色になります。一律ではない千切れ具合といい重ねると違う色になる和紙は、工作家として興味がつきない素材です。

出雲民藝紙

食器を型枠に。フラワーベース作り。

今回は無地の出雲民藝紙を使ってフラワーベースを作りました。身近かにある食器をそのまま型枠にして作っています。この作品は水を入れると水漏れし、型崩れしますので水を溜める落しが必要です。それぞれの作品に合わせてガラス瓶やナイロン袋などで落し(水溜め)を見繕って下さい。これでりっぱなフラワーベースになります。決してスマートとは言えない仕上がりですが、そこがおもしろいと思っています。変わった形の型枠を集めて作るととても楽しいですね。

お茶ポットを型枠に。

無地の和紙2色を使い作りました。フタはアクセントとして濃い色の紙を使いました。ポットは取手のところから型枠が抜けるように2㎜幅に上から下まで和紙を貼らずに残します。そうしておくと型枠から外す時、ポットの注ぎ口もすっぽり抜けてくれます。乾かすときにも工夫が必要です。余分な水が下がるようにポットを逆さまにし、長い棒に挿して乾かします。昭和で言えば、洗ったズックを乾かす要領。こうすればポットの底が形を崩さず綺麗に仕上がります。作り方参照。

マグカップを型枠に。

カップもポットと同じ要領で、逆さまにして型枠ごと棒に挿して干します。乾燥の途中で棒が倒れないようにして下さい。途中で倒れると想像以上に壊れてがっかりすることに。私は泣きました。。和紙を3回以上重ねると小さなものでも乾燥に一晩はかかります。急がないことが重要ですね。型枠の数ほど同時進行出来る工作ですが、乾かす棒と場所が作る数だけ必要です。あらかじめ用意して下さい。これも綺麗に仕上げるコツです。取手側から型枠が抜けるようにします。一カ所、和紙を2mm幅で上から下まで貼らずに作っています。この場所を間違えると型枠を抜く事ができなくなります、気をつけて。作り方参照。

カトラリーも型枠に。

お皿もカトラリーも最初に上側のみ和紙を貼付けて乾燥させます。乾燥したら和紙を型枠から外し、型枠のお皿やカトラリーを裏返しにして裏側を作ります。表裏の両方が乾いたら二つを合わせ、切れ目に和紙を貼付けて形を完成させます。切れ目がなくて膨んでいるところは新聞紙、ラップなどを詰めておくと何かに当たっても凹みません。ぬいぐるみ感覚でパンヤを詰めてもいいですね。お皿は水が溜められないのでナイロン袋を水溜めにしています。作り方参照。

=和紙花器の作り方=

和紙を全体に貼る作業を繰り返して重ねます。

1、型枠になるグラスをラップで包みます。ラップがあると型枠から外すときに無理なく剥がれます。

2、液状の糊に5倍くらいの水を混ぜて薄めたものを最初に用意しておきます。

3、和紙を手でちぎり、水で薄めた糊に浸けます。

4、液に浸した和紙を隙間なくラップで巻いた型枠にどんどん貼って行きます。型枠から和紙を外すためにどこか和紙を貼らずに残しておきます。



 
 
 

和紙を貼っていないところをから型枠を外します。

5、型枠に和紙を貼り終えたら一晩かけてゆっくり乾かします。

6、しっかり乾いているのを確認し、和紙を貼らずにおいたところからゆっくり型枠を離して抜きます。ここでラップも取り除きます。

7、外した後、糊に浸した和紙を貼って継ぎ目をなくします。いびつな所は水で濡らして調整。濡れるとすぐに柔らかくなります。水を付け過ぎると折れたり曲がったりしますから注意して下さい。

乾燥するとき、ドライヤーを使いたくなるかもしれませんがここはゆっくり乾燥させましょう。和紙の重ねた枚数も場所も違いますので、急ぐと歪みの原因に。乾燥を急がないで下さいね。
写真は無地の一色使いで作りました。アクセントに数字の判子を押して柄を付けています。これで出来上がりです。


カクテルグラスを型枠に。

ポテポテした感じが和紙の良さのひとつだと思っています。それを残す、またはバージョンアップさせるために糊には、ヤマト糊を使うと決めています。理由は、子供のときから茶色のザラバン紙や折り紙を接着をするのにヤマト糊を使っていて慣れていると言うのが大きな理由です。慣れているからこそ自分の考える仕上がり通りになるのがいいですね。

とはいえ、チューブ入りの糊を水に混ぜて好みの糊にするのが面倒なので今回は同じ会社のアラビックの液状糊を薄めて使ってしまいました。たっぷり時間をかけるはずなのにやっぱりせっかちですね。笑)アラビックの方が液状でムラがないのでヤマト糊よりすっきり仕上がります。好みで使い分けて下さい。型枠にしたグラスは高さ約10㎝。2個作るのにアラビック50mlをほぼ1本使っています。途中で足りなくなり、糊と水の配分が変わると乾いた後の紙の色に差が出来ることがあります。糊は少し余るくらい作っておく方が良いと思います。出雲民藝紙は、グラス1つで62㎝ x100㎝の半分を使いました。1枚940円〜1050円。

出雲民藝紙

ヤマト株式会社 ヤマト糊

ヤマト株式会社 アラビック