TOTO×マガジンハウス グリーンジャーナル vol.10 パート2  環境とデザインの将来。

(2010.11.01)

環境×デザインを強く意識させた今年のTDWを象徴するのは、産業廃棄物処理業者の株式会社ナカダイと、川崎健二さんが理事長を務めるDESIGN ASSOCIATION NPOが共同で企画した「ナカダイ・プロジェクト」でしょう。

「産業廃棄物の多くは、粉砕するなどして原料へリサイクルしますが、粉砕するには忍びない廃棄物とは思えないようなものも持ち込まれます。これを何か活用できないかと、川崎さんにアプローチしたんです」と、ナカダイの中台澄之さん。処理場を見た川崎さんは「廃棄物の中に、素材になりうる可能性がある」と直感したとか。

プロジェクトに参画したのは、建築家やデザイナー、ロボット作家などジャンルが異なる5名のクリエーター。廃棄物は、それぞれの視点で、リサイクルするものと素材としてリユースできるものに分けられ、各々が得意の分野でプロダクトへと再生されます。TDWのJ-WAVEカフェで使われたテーブルとイスも、ここから生まれた実例のひとつ。「将来的には、マテリアル・ショップのような事業として成り立たせることも視野に入れています」(川崎さん)。実現すれば、デザインの力が産業構造までも変革できることを実証する、ビッグ・プロジェクトです。(続きを読む)

谷山示(たにやま・さとる)さんの作品。「既にカットが施され、扉、シリンダと共に価値を失った鍵、原材料としてもめっきが施されていて処理に適切でなかったり、質量としてはほぼ無価値な これらに対しペーパーナイフとしての用途をリプロダクトします。鍵が本来持っていた扉を開ける機能を封筒を開けるといった行為に変換し、往々にし て必要なときに何処にあるかわからないペーパーナイフを玄関、手紙、鍵といった同一のエリア内に存在させることで新たな価値とします」。

 

『TOTO×マガジンハウス グリーンジャーナル』は、環境問題に真剣に取り組むTOTOとマガジンハウスのコラボレーションでできた、最新のエコ問題を取り上げるコンテンツです。環境をテーマに最前線で活躍するジャーナリストが、いま注目すべきエコなニュースやアクションをレポートしています。

筆者プロフィール

高木 教雄(たかぎ・のりお)

ライター。理工学部機械工学科卒業というバリバリの理科系。建築や時計、家電など幅広いジャンルのプロダクトのテクノロジーとデザインの両方向からのアプローチで、『CasaBRUTUS』をはじめ、さまざまな雑誌で執筆。環境問題への関心も高い。