籾山由美の東京-島根 小さな暮らし初春に希望を託して、お正月の花を活けましょう。

(2010.12.28)

今年1年間を無事に過ごせた今に感謝し、新たな気持ちでこれからの年を迎える大事な行事、それがお正月です。そのお正月を伝統的な活け花でお祝いしてみましょう。年の瀬に活けるも良し、書き初めのように元旦に初活け(はついけ)するのも気持ちが引き締まっていいですね。花も和花で活けます。明確な線引きはありませんが和花(わばな)とは、日本古来の原種や園芸種、山野草などの植物を指します。対語に洋花があります。薔薇、マーガレット、パンジー、ハーブなどはわかりやすい洋花の例えです。最近は洋風の生活スタイルが多く、床の間のないお家がほとんどですから和花で花を活けるをという機会は少ないと思います。だからこそ特別の日、お正月には活け花をおすすめします。

初春に希望を託して、お正月の花を活けましょう。

まずは花材選びから。枝ものを一種ほど取り入れると活け花らしい花組みになります。花道では枝ものと言えば、花がなくても葉がなくても茎が木である植物すべてを指します。松、梅などの枝ものを入れるとお正月らしくなりますね。花ものも冬の時期に咲き残る椿や山茶花(サザンカ)、水仙などが手に入りやすいと思います。万両や南天などの華やかな色の実ものが入るとさらに花組みがお正月仕立てになります。

次に花器などの道具仕立てから。花器、剣山の用意がない場合、道具を街で探すのも大変だと思います。そこで、お家にある和食器を花器に使って見てはどうでしょう。普段使いの和食器で十分です。食器一つならそんなに広い場所を必要ともしません。頂き物でずっとしまってある和食器もこの際出して見定めるのもいい考えですね。来年への希望を込めて凛々しい空間をしつらえましょう。

さて、剣山ですが割合大きいサイズを持っているのではないかと思います。これから購入予定なら、できるだけ小さいサイズにしてください。サイズが大きいとそれなりに花器も大きい物が必要になって扱いが大変です。剣山を購入するのに躊躇する場合は、ステンレスやアルミのワイヤーで剣山を作りましょう。曲げやすい太めのワイヤーが便利です。グニャグニャに曲げ、曲がって交差しているワイヤーの間に花を挿すということです。準備は万端。さあ、活けて見ましょう!

花材は、白い山茶花(サザンカ)、黄色の実のピラカンサ、松。
花器が決まったら活ける前に花の組み合わせの配分を考えます。花の種類は5種までにとどめましょう。種類が多くなれば活け込みが難しくなります。初めての方には3種がちょうど良いと思います。後は活ける場所と花器の大きさで花の分量を決めます。今回は3種で、それぞれ最小限の分量を摘んでいます。

山茶花には紅と白があります。八重咲き、一重咲き両方があり、花の咲き具合も手のひらくらいの大きいものから直径4センチくらいの小さいものもあります。写真は小さい花です。実もののピラカンサは赤い実をよくみかけます。黄色は珍しいですね。このピラカンサはお友達の庭からやってきました。松は種から育った3年目くらいのものです。根付きのままを引き抜いて、島根の実家から東京に持ってきました。

緋色の敷物を広げ、白の山茶花を主役にお正月の花を活けました。

お正月を意識して、花器の下の敷物もいつもとは違うクロスを用意しましょう。緋色以外に金糸や銀糸の使ってある布や着物だった生地なども組み合わせの中に入れてみてください。その中で活ける場所を考えながら花材、花器とぴったり合うものを選びます。お正月の雰囲気を出すためのひと工夫として、千利休の教えが書いてある小さな扇子を加えました。他に紅白の水引などもお正月の特別な日を表してくれます。

今回は、主役の山茶花の中で八分咲きの花でやや長めの枝を最初に挿します。空間の配分を考えて松の枝を入れます。そして次に山茶花を短く入れ、最後にアクセントのピラカンサの実を入れます。これで出来上がり! どこにでも置けますから好きなところでお正月を楽しんでください。花器は、酢のものやお酒の肴などを入れている食器です。縦12㎝x横12cm、花の高さ 約19cm

剣山替わりのワイヤー。ぎゅっと曲げて重ねて使います。

剣山のないとき便利なのが、家の修理や庭木をくくったりする太めのワイヤーです。写真ではアルミを使いました。切るのにも力があまり必要ありませんし、水で錆びることもありません。鉄のワイヤーに比べて、割高ですがステンレスも重宝します。ワイヤーの欠点は、ワイヤーが軽いので花の重さの配分が悪いとワイヤーごと花が倒れること!

倒さないために庭の敷き石や野辺の小石で留めて下さい。コツは倒れる側と対極にある位置に重しを置くこと。花が前に倒れるようなら重しを後ろに、後ろに倒れるなら重しを前側のワイヤーにのせるか挟んでください。それも難しいときはグニャグニャにワイヤーを曲げるときに、重りの石を曲げながら中に入れてしまうのも方法です。しかしながら石は、露骨に重しという道具に見えないように心がけてくださいね。あくまでも優雅に見えるように。川のせせらぎや海の波打ち際をイメージしてのせて欲しいものです。

大ぶりな塗り物。傷をつけないように活けるのが大切です。

煮物などをほっくり入れて普段に使っています。花を活ける場合、支えの小石も丸く磨いてある玉石を使う方が傷がつにくいです。ワイヤーも切断部分を使う前に丸く曲げておくことも大事ですね。塗り物は、洗った後すぐに乾拭きをしてください。傷がなくてもひび割れの原因になります。塗りは普段でも扱いが少し面倒ですが、気分が変わって同じ料理もおいしく感じます。

ぐい飲みの焼き物。深いので支えの小石は必要ありません。

20年前に九州、久留米の焼き物市で購入した器です。冷や酒もワインも私の飲みペースにぴったりのぐい飲みです。深くて縦長の形の器はワイヤーだけで花が簡単に活けられます。底の浅い器で活けて何度も倒れるようでしたら縦長の器に変更して下さい。4個セットで絵柄が少しづつ違うこの器をながめながら、いつも勝手にお話を想像してグイとひと飲みしています。

蓋なしの木の汁椀。具沢山のお味噌汁に大活躍のお椀です。

木のお椀は、なんといっても軽くて柔らかな感触がとても暖かく感じます。ただ他の器に比べ、長く入れっぱなしにすると入れた物の臭いが付きやすいのが欠点です。花を活ける場合、水を腐らせないように水を変えてくださいね。活けっぱなしは禁! 漬け置きしてもなかなか臭いはとれません、一度失敗しています……普段使いの器ならなおさら注意して下さい。