岡部朋子のくつろぎマタニティヨガ産休に入る前に。出産前のマタニティ・ブルーを予防する方法。

(2011.01.21)

働く妊婦さんは、産休に入ると生活のリズムががらりと変わり、まるで部活動を引退した時のようなぽっかりした気分に襲われる方もいます。

以前「妊娠期間の不安な時期を乗り切る方法」
でもお話ししたように、妊娠している間、女性は人生で最も”アンビバレント”(二律背反)な精神状態がついてまわります。とても幸せなはずなのにとても孤独。期待が一杯だけど反面とても不安、など。

今まで職場の方々に囲まれていた環境から遠ざかると、一人の時間がとても長く感じられるようになります。本当はお腹に赤ちゃんがいるから、いつも一人ではないと感じられるはずなのに、その期待が裏切られてしまうわけです。

 

「つながる」の誤解

意外です。産休に入ったら出産までずっと赤ちゃんと一緒にいられると思っていたのに……(WEBスタッフ・田代さん/現在妊娠8か月)
つながる順番を間違えないでほしいのです。
 

実はこの時期、ちゃんと自分とつながっていないと、出産後もマタニティブルーや産後うつの悪化リスクを高めてしまいます。

「つながっている」という言葉はとても響きがいいものですが、自分の赤ちゃんとのつながりは、まず自分としっかりつながり、そしてパートナーの方としっかりつながってこそのものだということをご理解いただきたいのです。
それが、赤ちゃんとのことばかりが頭にあり、自分やパートナーの方とのつながりにちゃんと安心できていないまま出産を迎えてしまう女性が多いのです。お腹の中で動き回る赤ちゃんを意識することはこの時期一見簡単にできそうです。ですが、だからこそ自分自身がしっかり休めているか、自分自身がちゃんとパートナーの方の愛を感じられているか、というところをないがしろにしたまま、時間だけが過ぎていくことが多いのです。

 

つながる秘訣は、“いったん切り離して休むこと”。

自分とつながるというのはなんだか難しそうです。
つながる秘訣は、“いったん切り離すこと”です。
 

リストラティブヨガで「ディスコネクト」というこのテクニック。Warm (寒くない部屋で、ブランケットなどで身体を温めながら)、Dark ( 暗いところで )、Silent(音をなくして)、Stillness ( じっとしている)というのがリストラティブヨガの4要素なのですが、これによって身体は次第に落ち着きを取り戻していきます。具体的には血圧と心拍数の低下が15分ほどかけてみられます。そして、そのあとの5分間に何が起こるかと言うと、いわばもうろうとした状態に入ります。眠っているわけではないのですが、外の声は聞こえるにもかかわらず、自分がなんだかとても遠くにいるような感覚です。(15分で眠り始めてしまった人は、慢性的な睡眠不足のサインです。でもヨガによって睡眠不足を補えることになりますので、それはそれで良しなのです。)

このもうろうとした状態の間に、心と身体が回復すると言われています。
ですから、一日20分、意識がもうろうとしてくるまで何かに身を委ねて静かにじっとしている時間をつくってみましょう。産休中、時間は余るほどあります。写真のように、イスや壁にボルスターを立てかけ、お尻の下にブランケットや枕を挟み、お腹がつぶれないようにスペースをあけて上半身を預けてみましょう。自分が気持ち良くもたれかかれるようにボルスターの上にブランケットなどを重ねたり工夫してみましょう。
 

番外編ですが、パートナーの方にボルスター代わりになっていただくというもの一つです。20分ほど背中をお借りしましょう。自分自身を見つめながら、お腹にいる子供のお父さんであるパートナーの方の存在に感謝する時間もとりましょう。

 
産休中は漫然と過ごすのではなく積極的に自分とつながる時間を作っていくことが大切なのですね。
そうです。赤ちゃんが産まれると忙しくてゆっくり自分とつながる時間を持てなくなります(経験談)。そうすると、いつの間にか自分を見失ってしまうことになり、それが産後うつの原因になったりもします。お母さんの幸せな人生あってこその赤ちゃんです。妊婦さんの最重要任務はしっかり休み、安心していることですよ。
 

耳をふさいでハミングするだけ:「ハチの呼吸」

ヨガでよく「呼吸に意識を向けて」とか「自分の内面の声を聴いて」とかいうのですが、どうもピンとこないんです。
それでは、妊娠期間にもとても役立つ「ハチの呼吸」をご紹介します。
 

楽な姿勢で座り、軽くあごをひいて両手の人差し指で耳を塞ぎます。自然に息を吸って、吐きながら、鼻歌を歌うように「フーン」とハミングをして、その声を頭の中に響かせます。これを繰り返します。実はこれは、とてもいいヨガの呼吸の練習なのです。ヨガで上手にリラックスするコツは、吸う息よりも吐く息を少し長めにしていくことなのですが、これがなかなか難しいのです。でも「フーン」と息を吐くことで、息を吐いているということに意識を向けやすくなり、結果細く長く息を吐くことができるのです。ぜひ、比べてみて下さい。そしてまた、この呼吸法は、気持ちを落ち着けると共に自分の内面に静かに集中しやすい環境を作ります。私たちはいつも人の声を聴いて反応し、何かしらの声を発していますが、自分の出す声に耳を傾けるという機会はほとんどありません。自分の声を頭蓋骨の中で響かせることで、自分の命と同じ波長の音に心をゆだねることができます。まさに外の世界と自分を断絶し、自分自身とつながる瞬間です。「ハチの呼吸」はハミングの音が蜂の羽音に聞こえるからこういう名前がついています。「Bee’s Breath」とも言います。

以前ご紹介した、「イスを使った子供のポーズ」のように、おでこをイスや机、手枕などに預けお休みするポーズはこの「ハチの呼吸」と非常に相乗効果が高いものです。耳を手で塞ぐ必要はありませんので、おでこを何かに預けたら、吐く息をハミングに変えてみて下さい。あっという間に自分だけの世界にワープできますよ。これは20分間やる必要はありません。気が向いたとき、ちょっと時間があるとき、やってみて下さい。

 
 

こんなに簡単なのにすぐに気持ちが落ち着く、即効性のあるテクニック、これは覚えておきたいと思います!

次回は「寒い季節に身体を動かしやすくする工夫」をお送りします。

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