『ツェツェ アソシエ』
なすがままに、自然体なもの作り。

(2012.08.15)

和紙で作ったキューブが植物の木の実のように繋がる「キューブランプ」、試験官が蛇腹状に動いて形を変えられる花瓶「四月の花器」、日本のかんざしをモチーフに作った「ゲイシャのランプ」。柔軟なアイデアとユニークなルックス、一度聞いたら忘れられないネーミングのプロダクトを生み出すデザインユニット『ツェツェ アソシエ(Tsé&Tsé associées)』。この夏来日した『ツェツェ アソシエ』のカトリーヌさんとシゴレーヌさんに、お話をおうかがいしました。

ふたつの音で意味を成す。
だから『ツェツェ アソシエ』。

ー今日は『ツェツェ アソシエ』のクリエーションの原点、おふたりの『ツェツェ アソシエ』での役回りなどについてお話をきかせてください。プロダクトのほか、本も出版されています。『ツェツェの旅行絵本―Tsé & Tsé carnets de voyage 』『ツェツェのA to Z』(ともにGAP出版)はいずれもイラストやコラージュが素晴らしいです。

シゴレーヌ:『ツェツェの旅行絵本―Tsé & Tsé carnets de voyage 』のコラージュはカトリーヌ、イラストは私(シゴレーヌ)が描いたものです。

ー『ツェツェ アソシエ』の代表的なプロダクト「キューブライト」ですが、この製品の誕生のきっかけは? こういうのがあったらいいね、とおふたりで話し合って作ることになったのでしょうか? 

シゴレーヌ:ふたりとも絵を描くので、まず話し合って、絵を描き合ったりしているうちに、だんだんプロダクトが完成していきます。ふたりでピンポンみたいにアイディアをやりとりして、モノを作っていきます。

ー食器類も「お腹がペコペコのお皿」、「喉カラカラのコップ」と作品タイトルがとてもユニークですが、タイトルが最初に生まれるということでしょうか?

カトリーヌ:私たちにとってデザインというのは言葉と絵のアンサンブルです。言葉があってデザインが生まれます。

シゴレーヌ:モノを作っている途中は、まだ正式に名が決まっていなくて一時的に他の名前で呼んでいます。きれいな名前じゃなくて、「◯◯なもの」とか。だんだんものが完成してくると自分たちも、そのモノを知るようになる、完成したらどんなものかわかるから、そのときに名付けます。キリスト教では洗礼名がありますけど、そんな感じ。誕生したモノに名前をあげるのです。

ー「お腹がペコペコのお皿」っていうタイトルはどちらが考えたのですか?

シゴレーヌ:だいたい名付け親はカトリーヌね。だけど、それももちろん会話で意見交換する。「まなけもの」の花瓶もね。

***

ー『ツェツェ アソシエ』という名前はアフリカに生息する蝿、「ツェツェ バエ」からとったとききました、それはなぜでしょう?

カトリーヌ:音がふたつ重なり合ってできている言葉を探していました。「ツェツェ」は「ツェ」と「ツェ」でできてます。「ツェ」ひとつだけじゃ意味を成さない。「ツェツェ」にならないと意味が無い。2つ合わせて意味がある、そういう言葉。

シゴレーヌ:私が「マダム・ツェ」で、彼女も「マダム・ツェ」(笑)。

ー音が重なっている言葉ということは「カシュカシュ」(Cache Cache)の可能性もあったわけ?

カトリーヌ:かもね(笑)。

出会いはパリの国立工芸学院。
人が微笑むようなものを作る。

ーいつも作品にユーモアがあります、形がいびつだったり。『ツェツェ アソシエ』をはじめる時のきっかけは? どのようなプロダクトを作りたくてはじめたのですか?

カトリーヌ:デザインの学校に通っていた時、授業でいろんなプロダクトを作らないといけなかったのです。私たちの作ったものを見てみんな笑ってました。それで結局、人が微笑むようなものを作りたくなったんです。人を泣かせるより、笑わせる方が好きなので、面白いものを作りたくなりました。

シゴレーヌ:日常生活で使いやすい、楽しい面白いものを作りたかった。

ーおふたりが出会ったのはデザイン学校で、パリの国立のクリエイティブ産業高等大学ですね?

カトリーヌ:ソウデス。(日本語で)

シゴレーヌ:『エコール ナショナル シュペリエール デ クレアシオン アンドゥストゥリアル(Ecole Nationale Superieure de Creation Industrielle / ENSCI)』ね。

カトリーヌ:その前から知り合いだったよね。

ー『ツェツェ アソシエ』のプロダクトは、花器や食器の作品が多いという印象ですが、学校ではおふたりはガラスや陶芸のデザインを勉強していたのでしょうか?

シゴレーヌ:ノン。ちがいます。

カトリーヌ:トースターとか

シゴレーヌ:ドライヤーとか

カトリーヌ:補聴器とか

シゴレーヌ:電気自動車とか

シゴレーヌ:電話とかを作るプロダクト・デザインを勉強していました。


「4月の花器」 27,300円(税込) / 「なまけもの」 27,300円(税込)


「キューブランプ 白」 1.5m 16,800円(税込) / 「キューブランプ マルチカラー」 1.5m 16,800円(税込)


「トランプ」 1,260円(税込) / 「アイラッシュのミラー」12,600円(税込)


「お腹ペコペコのお皿たち、グラタン皿、魚皿」/ 「ツェツェの扇子」 1,890円(税込)

ー「キューブランプ」はいちばん最初の作品ですか?

カトリーヌ:ノン。ちがいます。最初は「4月の花器」。

ーどうして作ろうと?

シゴレーヌ:学生のころ、花が大好きでした。毎日でも花を買いたたかったけど、お金がなくて買えませんでした。たとえ安い花でも、綺麗にアレンジメントできる花瓶作りたかった。それが「4月の花器」です。たぶん、日本の方が見てわからないかも知れないけど、これは「生け花」の影響もあるのです。当時のフランスでは、フラワーアレンジメントというと大きなブーケを意味していました。本当に大きいもので、花をちょっとだけ差す、飾るという文化がなかった。「生け花」みたいに花2、3本だけ花瓶に差して完成、というのはね。少ないお花でも綺麗なものを作れるという考え方は日本流です。

もちろん今のフランスのフラワーアレンジメントは変わりました。もしかしたら、それは私たちの「4月の花器」の影響もあるかもしれません。

ー試験官がつながっているみたいな形状はユニークですね。この作品のスタイルの発案者はどちらなのでしょう?

シゴレーヌ:だれが考えたとか、だれが作るとかっていう発想はありません。ただふたりで作っている。話ながら、絵を描きながらモノができる。ひとりじゃできないし、どちらが作ったかも言えない。ふたりで作ってます。

カトリーヌ:そういう時に、ふたりで描くクロッキーのノートが残ってるんですけど、あとで見てもどちらが描いたかかわからないぐらい。

同じようにものごとを見て、
感じているふたり。

ーそっくりなふたりだから「ツェ」×2、同じ名前のコンビネーション『ツェツェ アソシエ』なんですね。おふたりの役割分担を聞きたかったのですが……ないようですね?

カトリーヌ:ノン。ありません。

シゴレーヌ:あまり経済的な会社ではありませんね、ふたりとも同じことをやっていて役割分担がない(笑)。でも、他のひとりでやっているデザイナーに比べて、ふたりでやっているので倍物事を深く考えられるし、自分が作りたいものをからもっと遠くに行ける、もっと豊かになれる。

カトリーヌ:ひとりがクリエイティブで、ひとりビジネスという役割でモノを作っても、どちらかがこれは売れるとか売れないとか批評するんだったらそれで終わりですよね。相手がビジネスしかやらなかったらうまくいかないけど、ふたりともクリエイティブで、会話するからものがうまくできるんだと思う。

カトリーヌ:話していくうちにふたりで沸騰していくみたいに、ね。

シゴレーヌ:ふたりの間でとても似ているところがある。見た目からはそう見えないかもしれないけど。ファッションでも、相談してないのに同じようなスタイルして来るとか。脳みその中が繋がっているみたいに似ている。(写真を指差して)この写真の撮影の時も、お互い好きなファッションでスタジオに行ったら、偶然、テイストが合っていて、自然にこういう風になった。もしからしたら、太陽の光を同じように感じてたり、同じように自然環境に反応しているのかもしれません。

カトリーヌ:(写真を見ながら)ふたりでどんなスタイルで行くかなんてあまり話さないのに、それぞれ好きなものを着て来たらぴったりだった。日本の着物風でね。


写真の撮影の時、特に話したわけではないのに同じようなスタイルの服を偶然着てきたふたり。

機会があればサビアン。
その時の状況に適応するだけ。


インタビューの時のふたりの足元。シゴレーヌさんは青、カトリーヌさんは赤のペディキュア。

ー今日のおふたりのペディキュア、シゴレーヌさんが青で、カトリーヌさんが赤。同じトーンの対色になっていて、マッチングがかわいいですね。

カトリーヌ:同じじゃないけど色や、テイストが合っちゃう。最近のパリは天気が悪いので、あまり自分の足というものを観ていなかった。久しぶりに自分の足を見た感じ(笑)。ネイルを塗る時に、今考えてるランプのプロジェクトもこの色で行きたいと思った色を塗ってきたの。

シゴレーヌ:私も。それぞれ今、作りたいものの色になってるところが面白い。

ーふだんからカトリーヌさんが赤系がお好きで、シゴレーヌさんが青系、というわけではないんですよね? 

シゴレーヌ:もちろんちがいます。

***

ーいうなれば、おふたりは融合しているんですね。ふたりでひとつですね。ふたりの個性の違いを究明したく本日はうかがったのですが、ふたりの役割分担はなく……困りました。

シゴレーヌ:ちがいはもちろんたくさんあります。

ーたとえば、趣味は? 休日の過ごし方は?

シゴレーヌ:モノを作るのが基本的に好きなので家に帰っても料理を作ったり、服をつくったり、デザインを考えたりしています。休日でも。

ーカトリーヌさんは?

シゴレーヌ:カトリーヌも同じよ(笑)。

ーおふたりでいっしょに住んでいるんですか?

シゴレーヌ:ノン。ちがいます。

ーそれぞれ家庭がある?

シゴレーヌ:そう。

ーそうですね、おふたりの好きな食べ物は?

カトリーヌ:私はパスタが好き。それからあとは寿司、刺身も好きだし。

ーフランスでも寿司や刺身を食べてるんですか?

シゴレーヌ:ウィ。そうです。魚は怖くない。食べます。たまに魚釣りに行って自分でも作ります。

カトリーヌ:私は牡蠣が大好き。

シゴレーヌ:私はさくらんぼ。というよりベリー類。

ーやっと違いがわかりました(笑)。今後の活動は?

カトリーヌ:機会があれば、何かはじめるし、なければないで。サ・ヴァ・サ・ビアン(ca va,ca vient )。自然の流れに任せます。

シゴレーヌ:遠い未来のことはあまり考えないです。小さい会社だから未来のこと考えてもどうなるかわからない。だからプランは作らない。その時の状況に適応するだけです。

ツェツェ アソシエ プロフィール

Tsé & Tsé associées パリの国立クリエイティブ産業高等大学(ENSCI)で出会ったふたりのパリジェンヌ、カトリーヌ・レヴィ(Catherine Lévi 写真右)とシゴレーヌ・プレボア(Sigolène Prébois)。’92年、デザインユニット『ツェツェ アソシエ(Tsé&Tsé associées)』を結成、活動スタート。世界を旅したふたりが、旅先で出会った人やモノをコラージュやスケッチでまとめた可愛い旅の本『ツェツェの旅行絵本―Tsé&Tsé carnets de voyage 』(GAP出版)、毎日のライフスタイルをイラストや写真で綴った『ツェツェのA to Z』(GAP出版)を出版。自由な発想とカラフルで遊び心いっぱいの数々のプロダクトを送り出し、ポンピドゥーセンター「Paris Delhi Bombay」エキシビジョンのスペースプロデュース、パリ『サンジェルマンシネマ(St.German Cinema)』内装など、近年は空間デザインも手がける。今や世界中で人気のクリエイターに。2011年、パリの1区にオンリーショップ『ツェツェ アソシエ(Tsé & Tsé associées)』をオープンさせた。

Tsé & Tsé associéesのパリのアドレス

『ツェツェ アソシエ(Tsé & Tsé associées)』
7, Rua Saint Roch 75001 Paris,11:15-19:00, 01-42-61-90-26
昨年オープンした『ツェツェ・アソシエ』のオンリーショップ。

『国立クリエイティブ産業高等大学(Ecole Nationale Superieure de Creation Industrielle / ENSCI)』
48, Rue Saint Sabin, 75011 Paris
カトリーヌさんとシゴレーヌさんが学んだデザイン学校。

『Colette(コレット)』
213, rue Saint-Honoré, 75001 Paris
レストランでは『ツェツェ アソシエ』デザインの食器で食事ができる。

『サンジェルマンシネマ(St.German Cinema)』
22, Rue Guillaume Apollinaire, 75006 Paris
『ツェツェ アソシエ』が内装を手がけたシネマ。

『マルシェ・アリーグル(Marche Aligre)』
Place d’ Aligre, 75012 Paris
『ツェツェ アソシエ』のアトリエの近く、カトリーヌさんとシゴレーヌさんが愛するマルシェ。蚤の市と市場がいっしょに楽しめる。


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