土屋孝元のお洒落奇譚。1983年の秋、偶然の出会いでした。
赤いマフラー、赤い眼鏡。

(2012.02.03)

1983年の秋、僕はパリに
3週間 暮らしました。

今からもうだいぶ前になりますが、1983年の秋、10月。
秋なのに夏の様な天気が続くパリ、大陸性気候のためか日本ほど湿度はなくカラッとした気持ち良い空気の日々でした。
何でこんなに正確に覚えているかといえば、この年、伊豆諸島三宅島で火山噴火があり島民が一時避難したとのニュースをこちらで見聞きしたからです。
大変おおきなニュースなのに、東京で体験していないのであまり実感がありません。当時 仕事でパリ16区に三週間滞在していた時のこと。(この地区は東京で言えばどこでしょうか。昔の代官山、自由ヶ丘のようなイメージですか?瀟洒な住宅街で商業地区ではなく学校も隣接していて住みやすそうな街でした)
一緒に同行したパリコレなどでも仕事をされているヘアメイクアーティストのTさんのお勧めでホテルを予約したのです。

ビクトルユーゴー通りの近所、トロカデロ広場にも近いホテルでした。
閑静な住宅街にある落ち着ける小さなホテルで、朝食も豪華ではないのですが美味しいクロワッサンとジュドランジュ、フレンチトースト…。
話を戻して、その日の予定が早めに終わり、夕食までの空きの間に近所を一人散歩しに出かけ、リセの向かいにそのお店を見つけて入りました。一見何処にでもある街の洋品店の様で何気ない店構えです。
もう今では、東京のどこでも手に入るのですが、色とりどりのワイドスプレッドストライプ柄フレンチカフスシャツが沢山あるではないですか。

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そのシャツのブルーがとても洒落ていて、ライトブルーのストライプで幅もほどよい。、主張過ぎるでもなく、地味すぎるでもなく、ほど良いバランスでお洒落なのです。少しグレーが入った薄いライトブルー、ヘリオトロープとライトブルーの中間、正確には赤を少し入れたブルーですか、いかにもフランス人好みという感じです。

その柄でワイドスプレッド、中でもいちばんワイドな襟。本当にワイドで襟の長さがなく開いたようなデザインです。この形のシャツは僕が知るかぎり、30年ぐらいの経験ですがフランス人が多く着ているように思います。アメリカ人やイギリス人、イタリア人などは好んで着ないでしょう。見たところ襟が無いように見えるタイプです。
そのシャツを2,3枚選んでレジに向かう時に、マフラーを偶然見つけたのです。

あれから、冬は赤いマフラーです。
メガネも……。

赤いマフラーで、色見本帖で言えばY100%+M80%ぐらいの赤。日本では「緋色」とでも言いますか。
メイドインスコットランド、カシミヤ製、肉厚で触るとしっとり感があり長さも長すぎず短かすぎず、使いやすそうなマフラーでした。一目で気に入り購入しました。以来、冬の基本はこの赤いマフラーを中心にコーディネートしています。
(今のマフラーは二代目でスコットランド製の同じく赤いマフラー、色味もほぼ同じ、正確には「緋色」よりもMが少し強いですね、銀座サンモトヤマで偶然見つけたものです。他にもクロンビー社の黒のカシミヤ、アランフィガレのキャメルカラー、その他いろいろありますが、マフラーはカシミヤ、基本は赤です。)

あまり、長いのもどうかと思いますが、いかがでしょうか。
この年の冬にはこのマフラーに合わせて その頃流行っていた白山眼鏡店にてボストンタイプのセルフレームメガネも同じ赤を選び、たまに仕事でかけて出かけたものです。その時の上司から、「お得意へ行く時にはそのメガネはやめてくれ」と注意されたのを覚えています。もう時効だからイイですね、お得意へも出かけておりました。

あれからファッションも変わり、時代も変わったのにあのメガネの様な色のメガネは街で見たことがありません。同じく赤い「緋色」のマフラーもですね。
最近特に冬黒ずくめファッションが目立ちます、冬だから明るい色もたまにはいいかな〜とも思いますが、いかがでしょう。

こんな時代だから、眼からも元気良さが伝わるように思うのですが、変わってる? と思われたくないのか、目立たないようにでしょうか? 
昔、気になったあるコピーに「デザインも性能の一部です。」なんてのがありました。見た目と外見で人は大まかなその人の中身内容を理解するとも言われます。職業にはその職業らしい外見が必要とも。らしくない外見は信用されにくいかもしれませんが、マフラーぐらいなら許されるかな、と思うのですが、いかがでしょう。マフラーから脱線してしまいました。

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クロンビー 200年の伝統あるスコットランドの生地メーカーでカシミヤには特に定評があります。世界中の有名テイラーにカシミヤ生地を卸していて、僕はコートとマフラーを使っていますがとても暖かいです。

アラン・フィガレ 綺麗なストライプのシャツやネクタイ、ストール、マフラーなどお洒落な色味の商品があり、お気に入りのブランドの一つです。日本ではあまり見ない色味があるので、ストール、ネクタイ、マフラー、など重宝しています。