ヨーロッパのデザイン・芸術運動にも大きな影響を与えた日本の琳派。俵屋宗達ー尾形光琳ー酒井抱一と受け継がれてきたシャープな感性と豊かなデザイン性に特徴づけられるその精神をもの作りの根幹としているのが京都の和装品メーカー『加藤萬』。『華市松』は光琳模様や、市松模様、先人たちが培ってきた意匠を、新たに現代的なセンスで解釈し、和の文化の中心地・京都から世界へ発信していこうと立ち上げられたブランドです。ここで紹介する「祝い文」は『華市松』の新プロジェクトのひとつです。「祝い文」扇子は3,024円（税込）～、手拭い　1,296円（税込）～です。

ブランドテーマは「祝い文」、京都弁で云うと普段使いの縁起のよい贈りもの「おいわいもん（もの）」です。一昨年の秋に社内プロジェクトとして発足しました。発案者は吉田です。『加藤萬』としては初めて、外部の作家さんにデザインを依頼しようと、小雪の舞う初冬、画家でありイラストレーターである谷口広樹氏と有楽町のガード下のビニールテントの際の席で、酒で暖を取りながら、ブランド設立の決意を熱く語ったのがそのはじまり。

20年来の付き合いの谷口氏の次は、同じくらい親交の長い家具デザイナー小泉誠氏にブランド発足の決意表明。ともに、快諾していただきました。色々な業界、多岐に渡る方が楽しいブランド展開になると考え、以前からファンであったひびのこづえ氏を谷口さんの大学の後輩というご縁もあって紹介していただきました。

また、アートディレクター中井康史氏とは、竹工芸の老舗『公長斎小菅』の専務のご紹介で知り合いました。『華市松』のロゴやグラフィックもお願いしています。独自の作風が魅力的なイラストレーター国分チエミ氏も谷口氏からご紹介いただきました。画家でありデザイナーの井口通太郎氏は、プロジェクト発足当初からの相談役でもあります。

販売の品は、華市松のもの作りの拠点である京都らしいものから手掛けようということで、私の大好きな手拭いと扇子に即決しました。会社に実績はあっても、新ブランドには何の実績もない。作家の皆さんは「気持ち」で引き受けて下さいました。届けられた図案のすべて、一本の線、一つの色に心が込められていました。あたたかいメッセージも込めて頂きました。その思いを「祝い文」として託すことにしました。

そんな経緯をたどって、昨年4月にブランドデビュー。これからも作家さんと現場の職人さんたちとの交わりから生まれる、温もりを大切にしたもの作りを通して、新たに創作する「華市松文様」をお楽しみくだされば、最上の幸せです。