籾山由美の東京-島根 小さな暮らし旧暦の桃の節句、すべての人の無病息災を祈って手作りお雛。

(2011.04.04)

島根の実家では、雛祭りは4月3日と決まっています。東京では3月3日ですが何年経っても3月はどうもお雛の感じがしません。島根では旧暦なのです。厳密に暦通りに言うと今年は4月5日が桃の節句に当たります。そこで4月3日、5日に向けて雛人形を手作りをしようと計画していました。そのときは普段の生活を送っていた頃でした。突然大地震が起こり、津波が起こり、原子力発電所の危機を抱えている今、小さな日々がどんなに大切だったか、何も起こらない毎日がどれほどかけがえのない事だったかを思い知らされました。

最初の計画では軽い気持ちのお雛作りでしたが、ひと針、ひと針、全ての人の無病息災を祈って一生懸命作りました。そんな手作りお雛を眺めて頂けると嬉しいです。ところで鳥取県では流し雛が有名で、島根の出雲地方に住んでいる方ならたいてい知っていると思います。(参照、鳥取県鳥取市用瀬町の流し雛)舟や篭に雛人形を入れて川に流します。旧暦通りの暦で行事をするところがありますから、今年を逃した人は来年の日取りを確認して下さいね。

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小さかった頃は大人も加わって一族総出でお雛を飾りました。毎年問題になるのが女雛と男雛の位置。関東と関西を境に西と東では左右の位置がかわります。伝統を守ろうと、どっちだったけ~とロダン作、<考える人>ポーズをとる大人女子たち。前年を思い出そうと努力する女子ですが、そのうちお雛にまつわるスットコドッコイな事件のおしゃべりと笑いで盛り上がります。その輪に入れない私たち子供女子はドタバタとはたきを持って走り回り……。毎年恒例でありました。

材料は手作りの場合、和生地でなくて良いと思います。今回は。たまたま着物生地の端切れを頂いたのでそれで作ってみました。顔の芯にするスポンジ、これは食器洗いのスポンジで十分ですが、濃い色の物は表に色が出やすいのでやめましょう。他には綿がお勧めです。布地を芯にするのは柔らかくても避けた方が良いですね。思いの他、布の厚みが出てツルリとした顔が作りにくくなります。爪楊枝は、頭(かしら)の首の芯や烏帽(えぼし)の一部に使います。ボディは白っぽいスエットやTシャツなどを使うと作りやすいですね。

 

作り方

1、頭(かしら)を作ります。この大きさで人形全体のサイズが決まります。あまり大きく作らないようにして下さい。写真の雛人形の顔部分が約7~8㎜ほどです。少し大人っぽい顔にするコツは顎を作る事。小さいので難しいのですが何度か試して、布のシワの少ない形になったとき針で布がゆるまない用に縫い合わせて行きます。どうしてもシワができますから、顎にシワが行くように調整すると真正面から見る顔部分はすっきり見えます。また頭をボディに合わせる時、頭をやや下向きにすると影でシワがわかりにくくなります。

2、頭に髪の毛を付けます。今回は腰のある固めの布を使っていますが、毛糸、刺繍糸などもいいですね。ただし今回のように割合い伝統を意識したデザインでは縮れた糸はアウト。ドレッドへアにはしないで下さいね。昔の女性はカラスの濡れ羽色の黒髪でストレートがお約束です。このお雛は髪の毛になる布を針で縫い付けていますが、接着剤で付ける方法も良いと思います。人形は顔の目鼻立ちで印象がまるっきり変わります。笑えない失敗もずいぶんしていますので敢えて目鼻を付けませんでした。

3、頭ができたら首を中心にボディの布を巻いつけて安定した形にします。肩を付けても良かったのですが長着(ながき=一般的に言う着物の事)を作る時に面倒なのでなで肩にしました。サイズはコンビニで販売している大きいおむすびくらいと思って下さい。倒れない立ち姿が決まったら針で布を縫い留めます。

 

4、ボディに重ねの着物に見せるため、半襟だけを一枚ずつ左前にして縫い留めます。イメージする着物の枚数分の半襟を少しづつずらして付けてください。

5、ここでは半襟を2枚縫い付け、一番上になる長着(ながき=一般に言う着物の事)になる布をボディに直接縫い付けています。シワができないように引っ張り気味に縫って下さい。着せ付ける前にボディのデコボコをならしておく事が大事です。

6、女雛、男雛それぞれに袴を直接縫い留めて着せます。最後に平安時代の装束(しょうぞく)を模した上掛けを着せます。両袖口もあらかじめ3枚分を見えるところだけ作って付けておきます。装束のデザインは見た目が似ていれば十分だと思います。それを作るのが面倒な方は長着で終わりにしてもいいと思います。

7、お雛様に烏帽子や、冠、扇子など着せて完成です。小物は書類などを入れるファイルを紙鋏で切って作っています。長着で完成の場合は手に持つ扇子などは直接縫い留めるか、接着剤で留めてください。これも止めてもいいと思いますが、冠と烏帽子だけは着けて下さいね。これがあればお雛様と誰もが認めてくれますから。内裏雛各々の高さ 床から約18㎝。

*すべての人の安息と幸せ、そして一日も早い復興を願います。