土屋孝元のお洒落奇譚。コートにまつわる、ストーリー。
いろいろなこだわりが…。

(2011.11.30)

コートを着るべきか、着ないで出かけるべきか? 

一の酉が終わり、二の酉、余談ですが、三の酉まである年は火事が多いので気をつけるようにと、昔、聞いた事がありました。
季節も晩秋から冬へと移る時期なのですが、
最近の東京はまだまだ暖かく、過ごしやすい日々が続いています。
こんな時には、コートはどうしようかなと考えてしまいます。

今まで色々なコートを着てきました。
それぞれに それを手に入れた時のこだわりや自分の気持ちなどがあるものです。今、手元に残しているそれぞれについて記憶をたどりました。
このくらいの気候気温では、コートを着るべきか、着ないで出かけるべきか? 考えてしまいます。
いま、出番の多いのは薄手の折りたたみが出来るイタリア製ネイビーのコートです。
重さはあっても200gぐらいでしょうか。数年前、都内のセレクトショップで手に入れました。
これは旅行中などには便利で、カバンに入れて出かけ、いまも一番重宝しています。

次に、最近 あまり出番がありませんが、映画『タワーリング・インフェルノ』見てから手に入れた、映画の中でスティーブ・マックイーンがタキシードの上に着込んでいたファイアーマンコートです。アメリカの消防士さんの着るコート、これは鮮やかなパーマネントイエローで二重の作りになっていて中は完全防水加工です。外の部分は耐火仕様で、非常に重たく、しかも着にくく、頑丈なアルミ製の鋲で留めるようになっています。軽く10kgは超えるか、越えないか、というものです。昔はこのコートを着てスーツにて出掛けたものですが、最近は流石に、この重さに出番があまりありません。

カシミヤのコートは、馬毛のブラシで着用には手入れを。

もう一着、バブル時代にイギリスはスコットランド、クロンビー社のコート用カシミヤ生地を使い、銀座2丁目の英國屋さんで仕立たダブルピークラペルのチェスターフィールドコートです。(このクロンビー社の顧客にはケーリー・グラント、J.Fケネディ、アイゼンハワー、ゴルバチョフ、などと早々たる名前が並んでいたようです。)

真冬の冠婚葬祭には大変重宝するのですが、なにせ普段着ではないのです。襟にはフラワーポケットを付け、お台場仕上げ、釦は黒水牛の角釦、万年筆入れ、名刺入れも特注して三つ葉閂にて仕上げてもらいました。裏地は鮮やかなグリーンです。

Y100%+C100%のグリーン、キュプラで光沢感があり、カシミヤの黒とグリーンの組み合わせはハッとするほど美しく、風が吹いて裾がなびいた時には少し見えるのですが、発注した自分でも美しいと思うほどです。

カシミヤはドライクリーニングには度々出せないので、(出し過ぎるとカシミヤの風合いがだんだんと無くなってしまいます。)馬毛のブラシで着用後には手入れをしています。この馬毛が驚くほど生地のホコリを取ってくれて便利です。冬場には湯気の立つ浴室に掛けておくと一晩でカシミヤの光沢感が蘇ります。この方法は、ロロ・ピアーナのカシミヤスーツも流用出来るので高い素材の洋服には便利ですね。普段のスーツにも勿論使える方法です。

余談ですが、このロロ・ピアーナ社はスイス国境に近いイタリア・ピエモンテ州に本社工場を持ち、世界のカシミヤ生産の30%を生産するという1924年創業の歴史ある生地メーカーで、世界中の有名メーカーに生地を提供しています。特徴的な紋章付きのロゴタイプでも有名です。このタグ入りのスーツが欲しくて手に入れました。銀座並木道にお店がありますね。

モンクレーとロロ・ピアーナのコラボダウン、
これはあったかい!

もう一着、バーバリーのトレンチコートです。このトレンチコートは一番古い型で、元はイギリス陸軍が第一次世界大戦時に着ていた塹壕戦用のコートが始まりで、その型に近いトレンチコートです。わざわざ、香港がまだ、英国領だった頃に購入しに出かけたコートで思い出深いものです。このコートを着て出演した雑誌『レタスクラブ』ページの写真(下)をご覧ください。

冬になるとよく着ているのは、今冬まだ出番はありませんが、モンクレー社とロロ・ピアーナ社のコラボレーションによるダウンコートで表面はロロ・ピアーナ社の撥水加工カシミア製で、中身はモンクレーのダウンです。これはさすがに暖かく、車内やビル内では暑いくらいで、うまく調整しないといけないほどですね。

弱点は、クリーニングにあまり出せないことと袖口がカシミヤ製なので傷みやすいということです。袖口はモンクレーにて修理してもらい、今は快適です。長いものでは、もう30年も着ていますが、それぞれに思い入れがあり飽きのこないコート達です。


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